ワイルドアームズ


対応機種プレイステーション
発売日1996/12/20
価格5800円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)1996 Sony Computer Entertainment / MEDIA.VISION
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「クライムクラッカーズ」「ガンナーズヘヴン」のメディアビジョンが送る
渾身の大作ロールプレイングゲーム。

PCエンジン「天使の詩」「天使の詩2 堕天使の選択」の金子影史、
同作のサウンドコンポーサーを担当したなるけみちこなど、何気なくいぶし銀の面子で作られている。

技術が成熟してきて、ポリゴンのゲームでも良い物が多数出てきている中で
戦闘画面を除いて全て2Dのドット絵で描かれている。
1ヶ月前に出た「アークザラッド2」の派手さもなく、画面全体からにじみ出る雰囲気は
ひたすら地味の一言。
唯一、戦闘シーンがフルポリゴンなのだが、これも決して綺麗とは言えないし、
攻撃エフェクトの貧相さは致命的な物がある(かえってポリゴン化は逆効果だったんじゃないか?)

しかしこのゲーム、荒削りな部分は多いが、なかなか良く出来ている。

一言で例えてしまうと、ゼルダを無理矢理RPGにしたような感じ。
木箱を持ち上げ、投げつけて壊して中に入っているアイテムを取ったり、
各パーティキャラにグッズというアイテムがあって、これを駆使して
ダンジョンの仕掛けを解いたり、最初の村ではにわとりをかついだりも出来る。
ゼルダで言うペガサスの靴と全く同じアクションもあったりして、
フィールドでやれることはまるっきりゼルダと一緒である。

ゲームを攻略するに当たって、ダンジョンには必ず頭を悩まされる仕掛けが置いてあって、
前述のグッズを駆使して先に進めていく。
このダンジョンがなかなか手応えがあって面白い。
構造や造形もセンスが結構良くてなかなか凝っている。
このように、全体的にRPGというよりアクションアドベンチャーの比重が強いが
本作はRPGとして作られているために当然ながらエンカウント戦闘がある。

RPGで外せない要素としてこの戦闘があるが、これがかえってうざったい。
輪をかけるように戦闘自体も練り込みが足りず、つまらない。

ドラゴンクエストとファイナルファンタジーの戦闘システムを中途半端に混ぜ込んだような作りで
両方の悪い面ばかりが浮き出たような内容。
数値調整が大味で、FFのようなシビアな属性効果なんかもあるのだが、非常に作業的。
フォースポイントという独自の要素も入れていて努力の跡は見られるのだが、
戦闘に幅を出すことは出来ておらず、劇的な面白さにまでは発展していない。
ゲームバランスの取り方もいい加減で、基本的に簡単なのだが
異様に強いボスや敵がいたり、テンポを悪くするだけの煩わしい状態異常の数の多さなど
がさつな部分も残っている。
実はエンカウントはかなり低めに抑えられているのだが、それでもうっとうしいぐらい
戦闘が面白くない。

戦闘シーンだけフルポリゴンで、それだけでなく光源処理もしっかりなされてて、
魔法の光でキャラの影が伸びたり、場所によってテクスチャの色合いが変わったり
モデリングの質自体はかなり低いのだが、この処理によって妙な存在感がある。
それでもやはり、やる順序が逆というか、絵的な貧弱さはあまりに酷く、
攻撃エフェクトの雑さや、安っぽい効果音を先に何とかして欲しい。
せっかくフィールド時のグラフィックが良い味を出しているのに台無し。
がっかり。心底がっかり。

とはいえ、シナリオがなかなか良く出来ている。
技術力の向上によって、映像で魅せる風潮が強くテキストの弱いRPGが増えつつある昨今、
本筋のイベントは勿論、町の住民一人一人の台詞まで、高いレベルで描かれている。
このゲームは、あまり映像の演出が無く、台詞を軸に描写しているのだが、
これがなかなかに押しつけがましさが無く、素直に楽しむことが出来る。
簡単なキャラの動作だけで、あとはプレイヤーの想像力にまかせるというのも
(技術力不足の後天的な物だとしても)割り切りが出来ていて良い。

個人的には、もう少しストーリーの自己主張が強い方が良かった気がする。
どうもゲーム中盤以降までこれといった盛り上がりが無く、控えめな展開で
下手するとそこに到達する前に飽きられてしまう可能性すらある。

音楽の出来も良く、そこはかとなく素朴で切なさを感じるメロディーは
ゲームとの統一感も高く、プレイヤーの没入感をより一層高め、
グッと心を動かされる。

見た目の地味さに反比例するように、アクセススピードが速く
けっこう快適に遊ぶことが出来る。
ストーリー重視のゲームだが、意外にもゲーム的な面も多くその面での出来も良い。
それだけに、戦闘パートの出来の悪さだけが惜しい。

ストーリー、ギミック、音楽に助けられた良作。





[2005/02/20]
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