ワイルドアームズ the 5th Vanguard


対応機種プレイステーション2
発売日2006/12/14
価格6980円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)2006 Sony Computer Entertainment / MEDIA.VISION
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プレイステーション黎明期を支えたワイルドアームズも、10周年をむかえ、それにあわせ、記念作品として本作が制作、リリースされた。
最近は、10周年を謳うRPGが妙に多いが、これは逆に異常事態に見えてならない。
それはさておき、これまでずっとトータルゲームデザインとして携わっていた金子彰史は、今回プロデュースに徹している。
その影響か、サウンドコンポーサーのなるけみちこも、メインからはずれているし、そのほかにも、キャラデザや脚本家の変更と、色々とチャレンジしているようだ。

麻生かほ里がずっと、主題歌を担当していたが、今回は有名声優であり人気の高い水樹奈々にバトンタッチ。なお、彼女はヒロイン役もこなしている。
さては、キングレコードのタイアップか、開発者によっぽどの水樹奈々ファンがいたか、真相は闇の中である。
とりあえずは、起用した声優陣のなかで、彼女だけが極端にメジャーで、主題歌に関しても、タイアップの扱いなため、違和感がぬぐえない。水樹奈々ゲーかこれは。

ゲーム内容は、前作をベースに不満点を順当に解消した上で、目新しさを重視した作りである。
フィールドマップの復活や、ダンジョンの謎かけの本格派、アクション要素を極力排除など(もっと無くしてもいいと思うが)、手堅すぎて語るのもおっくうになる。

フィールドマップは、スクウェアエニックス「ドラゴンクエスト8」の影響を多大に受けている。というか、そのまんまである。
現場では、「ドラクエっぽく!」という声が飛び交ってそうなほどそっくりだ。
とってつけたような雪原や砂漠があったり、無駄に迷わせないよう道を敷いていたり、良いところを真似る姿勢はいいと思うが、本家と比べると劣化していると言わざるを得ない。
無駄に高低差が多く、地形に引っかかることがある。また、一部では、道がとぎれていることも多く、迷うことも多い。
地図をひろげて、位置を確認することも出来るが、この地図が一癖ある描き方で、有り体に言うと見づらい。慣れるまでは何を示しているかわからずじまいだろう。

全てのマップで、カメラの視点操作しながら動いていくのだが、段差が多かったり、視点を動かさなければならないところが多く、忙しい感じがする。
それに、カメラがプレイヤーに近いせいか、酔いやすい体質の人は、酔ってしまうかもしれない。

前作では、スケジュール不足のせいか、手抜きっぽさが目立ち、不満の対象となったリベンジなのか、今回のゲームボリュームは、申し分ないクオリティで、一本のRPGとしてとりあえず納得の出来る水準だろうと思う。
しかし、正直なところ不満点も少なくない。

クリアまでのプレイ時間が長すぎる。50時間を超えたRPGは久しぶりな気がする。それも、テンポ良く楽しければまだ救いだが、
中盤以降、なんだかだらだらしているし、どーも極端にしんどいなぁと思っていたら、横道に逸れてマップをぞうきんがけして欲しいようだ。
スクウェアエニックス「ファイナルファンタジー12」でも指摘したが、自分は、この用意されたサブイベントを押しつけがましくこなさせられるという行為が大嫌いである。
そういうのは、やりたい人間が自発的にやるから面白くなるのであって、クリアまでに必須事項のようなバランスの取り方をされると、ただただ作業になってしまうのである。

せっかく、中盤まではテンポも良く、ほどよい緊張感で楽しめるのに…。

このゲームの場合、さいわい、敵と無駄に戦わされることはないので、それほどストレスにはならないのだが、なにか別ゲーでも遊ばされてるような感覚が煩わしく感じられた。

フィールドマップ上では、サーチシステムというものがあり、サーチボタンを押すことでプレイヤーの周りをサーチして、隠れた宝箱やオブジェクトを発見出来るという要素がある。
これがまた、無駄に本格的なうえに、ここで見つけた宝箱には重要アイテムが置いてあることが多く、これを根気よく探し続けるというのは、はっきりいって苦痛。
見方を変えて「お宝探しゲーム」としてならば、面白いと思えるのだが、これはRPGである。せめて、負担を軽減するためにも、レーダーに隠された宝箱があることを示す機能が追加させても罰は当たらないと思う。
この強制的なぞうきんがけのせいで、無駄にプレイ時間を食ってしまった。
そもそも、このサーチ自体、どこまでサーチしているのか?ということが曖昧でわかりづらく、この等身大スタイルのマップ形式では、相性が悪いことこの上ない。

もう一つ、宝箱のほかにパズルボックスというミニゲームエリアに入れるクリスタルが隠されており、これをクリアすることで、また更なる重要アイテムが手に入る。
これも、好きでやりたい人がやるならいいことと思うが、RPGなのにパズルゲームをやらされるというのもいくらなんでも苦行だろう。

戦闘は、ヘックスバトルがまたも採用されている。はっきりいって、このシステムは、バランス調整が難しいので廃止すると思っていたのだが、無謀な挑戦を相変わらずやってしまったようだ。
テンポをさらに引き上げるために、移動と攻撃を1ターンで出来るように改良された。これは敵にも適応されるので、わざと距離を取って時間を稼ぐというような戦略が使えなくなった。
一応、理不尽にやられてしまうことを防ぐための処置をいくつか施しているようだが、完全に機能しているわけでもなく、運悪く壊滅状態に追い込まれてしまったということもまれにある。
敵は、今回一定のアルゴリズムを設定しているようで、こちらが不利な場合、手加減したり、優位すぎると、痛い攻撃を必ず使ってくるような小細工を打っている。

ただ、戦闘参加人数が3名に減ったことで、戦略性の幅が狭められてしまった点は否定出来ない。
ミーディアム(FFで言うジョブチェンジの概念に近い)によるカスタマイズも、無いに等しいと言っていい。
結局、回復係による回復と、敵の弱点をついた攻撃でごり押しする戦い方が極端に有効で、だるい戦闘展開になりやすい。
ミーディアムをコピー出来るアイテムがあり、おそらくは、一人二つまでミーディアムを付けられるようなことを想定していたのではないかと思う。
ていうか、そうしなかったことがこの単調さにつながっているし、後半の敵、ボスの異様なヒットポイントの高さも問題。
パーティメンバーが6人で、戦闘中にメンバーチェンジも出来るが、ターン消費するぐらいなら、一軍メンバーで攻め上げる方が有効なので、使われることはまずない。

このシリーズは、ザコ敵から得られる経験値、お金は極端に少ないのが相場だったが、今回はいずれも潤沢に手にはいるために、苦労することがない。
いきおい、この親切設計な流れのせいで緊張感もなく、レベルもガンガン上がっていくので、やりがいがない。

ただ、パラメータバランス、ダメージ計算式の独特さのせいで、キャラが死にやすい割に、蘇生させるアイテムが異常に稀少なのはいただけない部分だ。
ようは、ここまで簡単にしたのだから、いかに死なせないように戦えという意図だろうが、どーもいびつな足かせにしか思えない。

どんどんキャラクターの存在感が強まっており、キャラクタが引っ張ってストーリーを見せる傾向が今作では特に如実に見られる。
戦闘でもキャラ同士の協力攻撃であるコンビネーションアーツが強力になっており、変わりに召喚魔法が無くなり、とにかくメインキャラクタが前に前にと出てきている。
ちなみに、ファンサービスとして、過去作のメインキャラがサブイベントの登場人物に出てくるほどのサービスも見せる。

こういった今風のRPGのトレンドを注入していく姿勢は、悪い傾向とは思わない。しかし、Advanced 3rd、Alter code:Fのように、ターン制のコマンド選択式のバランス設計や、ギミックの構成が絶妙だっただけに、
今のRPGの悪い面すらも取り入れてしまうのは好きになれない。なんとかこの、中間的な作りには出来なかったのかと思う。

マップ構成が「ドラゴンクエスト8」式と書いたが、町なんかは、最低限の建物以外は入れないように(そもそも作ってない)なっているから狭いし、ダンジョンもフロア切り替え形式で、使い回しが非常に多い。
使い回しが多いのはシリーズ伝統で、造形に矛盾がない、かつ、迷わせにくい構造にしていることもあって、悪い印象は持たない。ただ、今作ではあまりにも目に付くので、敢えて指摘した。

今回は、ダンジョンの謎解きがなかなか面白い。
主人公の装備する二丁拳銃が謎解きのキーアイテムになっていて、拳銃アクションをONにすると、銃をかまえ、特定のポイントをロックオンして、撃つと何かしらの反応が得られる。
置いてあるツボや宝箱を撃つと、ツボだったら壊れたり宝箱だとわざわざ開きに近づかなくても、遠くにいるだけで開いてアイテムを手にすることが出来る。
この要素は、ゲームコンセプトと合致しており、かつ、オリジナリティも感じられ、面白い仕掛けと言える。アクション数も最終的にはなかなかの数になり物足りなさもない。ただ、この種類がそろうまでが長すぎると思う。

ただし、拳銃アクションはずっとONのままで良かったと思う。ジャンプアタックやスライディングは、ARMアクションが新たに入ったのだから、はずすべき。
いずれのアクションだって、使うところなんかほとんどなかったわけで、アクションが無駄に多いだけで、操作が混乱するだけである。

それと、今回の謎かけは、シリーズ最高難易度かと思えるほど、意地悪と思う。
基本的に、仕掛けを解いている時(多くはその部屋内だけで解決する)は、敵とのエンカウントはない。
ただ、一部で、ヒントが別の部屋にあって、そことギミックの部屋とを行き来する場面があって、大抵そういう手の込んだ仕掛けは難しく、詰まってしまった場合、途中でエンカウントが起こるのが、非常にストレスになる。
対応策も用意されているのだが、そもそもノーリスクで逃げられるのなら、最初からエンカウントしなければいいのである。この辺の配慮が今ひとつ漏れてしまっているのが惜しい。
さんざん、謎解きの最中に敵と遭遇するのは不満という声が上がっていたのだから、もう6作目にもなる今作で、こういった手落ちは見苦しい。

相変わらず、テキストのクオリティが高く、「ドラゴンクエスト」と並んで、テキストで楽しませるRPGは、これぐらいかと思う。
特に今回は、記憶をなくしたアヴリルというキャラクタが無感情なしゃべり方を演出するために、台詞をひらがなで記述するなど、普通のRPGでは素通りするようなところまで手を入れて頑張っている。
しかし、これに肝心の声優の演技がついてこれてない気がするのが難点(そもそも無理難題なんだろう)。というか、やはりこのシリーズは喋らせない方がいいと思う。だいぶ、台詞の雰囲気と近い演技がなされてきているのも一方であるが、やはり難しい面も残る。

フェイシャルモーション、キャラクタモーションのクオリティも相変わらず高く、リアル系を追求したゲームよりも、粗が少なく、時折ハッとさせられることがある。アニメ調ではあるが、こういう表現方法もアリと思う。
今回は、イベントもポリゴンで演技してくれるので、これらの技術がより一層引き立って映る。

残念なのは、全体的にロード時間が長めになっている点。メニュー画面でも、装備変更のとき、カーソルを動かしただけでいちいちキャラモデルを読み込む(特定の装備品で外見が変わるため)など、無駄が多い。
それから、メニューインターフェイスでも、前作の弾倉型から変形させたようなデザインは、操作を間違いやすいだけで、見栄えもたいして良くない。もうちょっと考えてデザインして欲しかった。

ちょっとネタばらしになるが、PSPで発売予定の「ワイルドアームズ クロスファイア」と、こっそり連動しているのは、いかがなものか。

総合的に、ストーリーの面白いRPGで安定さはあるが、どーもだるいところも多く、素直に面白いとは思えなかった。そこで結論。

10年のあいだにRPGはこんなにも変わった。これを受け入れられるかどうかで貴方の好みがわかる。





[2006/12/23]
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