ワンダと巨像


対応機種プレイステーション2
発売日2005/10/27
価格6800円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)2005 Sony Computer Entertainment
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凝った作り込みで一躍全世界から脚光を浴びたICOのスタッフが手がける待望の新作。それが「ワンダと巨像」だ。
巨大で凶暴なモンスター相手に生身の人間ワンダが立ち向かうダイナミックさ際立つアクションゲーム。

グラフィックのクオリティが非常に高く、「これは本当にプレイステーション2で動かしているのか?」と首を傾げるほどの処理を軽々とこなしている。
フィールドもかなり広いのだが、画面の切り替えがなく、シームレスに展開する。勿論、マップパーツの使い回しなんて安っぽい小細工はなく、それでいて、映像美とノーアクセス(正確には裏読み)を両立させている。単純に凄い。
SCEから出しているからだろう。ハードウェアを底から叩いて直接マシンを動作させるといったサードパーティにはまずやらせてもらえない方法を使ったりして、驚異的な処理を実現しているのだろうが、それにしたって凄すぎだ。

「ICO」の時と同様に、どこか素朴で牧歌的な密度のある世界観を構築していたり、技術的には頭一つ飛び出した素晴らしさを見せるが、ゲーム内容は一転してシビアでストイックな人を選ぶゲームへと変貌している。

ゲームの流れは、馬にまたがりターゲットの巨像を広大なフィールドの中、剣から放たれる光を頼りに探し出し、見つけると戦闘が始まる。
戦闘シーンの基本的な流れは、巨像にしがみつき、相手の弱点を探しながらその場所を目指し、剣を突き刺しダメージを与える。
当然こんな簡単に倒せるわけもなく、相手によって千差万別な立ち回りを求められる。地形をうまく使ったり、敵の一瞬の隙を突いてころばして、よじ登るなどだ。
この辺は「ゼルダの伝説」の謎解きに近い面白さがある。というか、このチームは「ゼルダ」が大好きなのだと思う。馬に乗って平原を駆けまわる所なんか、まんま「ゼルダ」である。

ヒントが少なく詰まってしまうことも多い難しさなのだが、その分倒し方をあっさり見つけることが出来ると、「これは自分にしか解けなかったのではないか!?」という優越感に浸れる。実に「ゼルダ」的と言える。

アクションとしての難易度も比較的高い。この開発チームは、「ゲーム的」にしてしまうのが好きではないらしく、リアリティを常に優先してゲームを製作する。
そのため、巨像との戦いは、まるで映画のスペクタクルシーンを操っているかのような錯覚に陥るほどの存在感を見せる。
反面、どこでどのようにキャラクターが動くのか?という決まりごとが分かりづらく、イマイチ思ったようにキャラクターが動かないのだ。
中でも、「ICO」でも同様の問題を抱えていたのだが、壁に張り付いた状態で、反対側の壁に飛び移りたいのに、意図した方向に反応してくれないといった、操縦性に関する不満が多々見られる。

カメラ操作は右スティックで自分で動かす形式を採用しているが、時々動かしやすい位置に勝手にカメラが動く場合がある。
多くの場合は、いい位置に動いてくれるのだが、変な動きをして見づらくなってしまうことがあるし、一部の場面で、主に馬に乗っているときに起きやすいが、画面上の動作とコントローラの操作が破綻してしまうことがある。
このゲームは、スティックを動かした方にキャラクターが動くが、視点が勝手に動いたときに、この決まりごとが破られてしまうのだ。
これに関しては、このゲームに限らず、多くの3D空間を扱ったゲームで、突然視点が切り替わったときの挙動をどう処理するか?という問題を抱えている。
今作では、とにかくめまぐるしく視点が動くので、当然この挙動をどう決めるか悩んだと思う。割といい動きをするのだが、それでも「おや?」と思ってしまう場面が多かった。

クセの強い操作性に加え、馬に乗ったまま矢を射るというような、高度な操作を要求される箇所が多い。他にも積み重ねてきた過程を失敗すると問答無用で最初からやり直しとなるなど、楽しむにはかなり根気の必要なゲームである。
「ICO」のスタッフが送る!!という謳い文句に惹かれて買った人の多くが途中で脱落したと予想。なぜなら「ICO」は、ゲーム慣れしてない人でも楽しめる間口の広い作品だったからだ。

巨大なモンスターをステージの一つに見立てて遊ばせるというのは、なかなか刺激的で目新しく実際おもしろい。
しかし、どうにも“楽しませ下手”な節があり、ついてこれる人だけ、わかる人だけ楽しめれば良いという独りよがりさがそれ以上に目立ってしまっていて、取っ付きを悪くしている。
巨像を討ち倒す爽快感よりも、時間的には悩んで四苦八苦している方が長く、操作性やテンポの悪さのほうが目立ってしまう残念なゲームだ。

些細な不満だが、オープニングとエンディングに流れるムービーがやたら長いのも気になった。

企画力と技術力の高さは素晴らしい。が、ユーザーフレンドリーさに欠ける部分が多く、面白いんだけど素直に楽しめなかったゲームだ。そこで結論。

高水準なゲームだが、今一つ味付けが足りない。





[2011/04/27]
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