ワイルドアームズ クロスファイア


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2007/08/09
価格4980円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)2007 Sony Computer Entertainment / MEDIA VISION ENTERTAINMENT
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人気シリーズ「ワイルドアームズ」がプレイステーションポータブルに進出。
初めてとなる携帯ゲーム機での供給。ジャンルもRPGからS.RPGへ変え、様々な部分で新しい挑戦をおこなっている意欲作。遂に登場。

携帯ゲーム機で作ると言うことで、S.RPGへの変更は必然だったのだろう。この英断は評価したい。

システムは、近年氾濫しているライト向けS.RPGを踏襲した物で、高低差のある3Dフィールド(但しキャラクタはスプライト)、アクティブターン制、FFシリーズで言うジョブチェンジ&アビリティカスタマイズシステムを搭載した、まさにいいとこ取りの内容になった。
ちゅーか、まんまスクウェアのファイナルファンタジータクティクスなんですが。

唯一、ほかでは採用していない点としては、HEX制(六角形のマス目で構成されたフィールドで、80年代の戦略SLGで使われていた形式)なところだろう。
多くのS.RPGでは、キャラの向きによって、命中率及び回避率に影響を及ぼすことが定石となっているが、本作ではその要素は無く、HEX制で使われている「囲むことで得られる支援効果」に重点を置いている。

しかし、HEX制を採用した割に、それに関わるシステムで得られる利点が弱く、イマイチ生かし切れていない。
バランスも、この手のS.RPGのなかからしても大味な方で、とりあえずごり押しで勝ち抜けるマップが多い。

独特な固有名詞が多く、きつく言えば余計な要素が多く、取っつきが良くない。
クセの強いシステムとバランスのダブルパンチで、なかなかコツをつかむまでに時間が掛かる。

それに輪をかけて、序盤は様々な要素を教えたかったのだろう、クリア条件が厳しめなマップが多く、難易度が高い。
逆にゲーム後半になると、クリア条件が敵全滅のステージばかりで、キャラが育ってきてカスタマイズも色々試せるようになり、面白くなってくる。

マップが無駄に広く、敵と味方の配置も距離があり、移動させるのに時間が掛かる。
敵のルーチンも基本的に近寄らないと動かないタイプが多い。
なんというかこの辺りの作りが古典的で、やっていて非常にかったるい。

特定のクラス(職業)にしていなければクリア出来ないマップが少なくなく、このシリーズの連綿と続く欠点の一つとしてあげられる独りよがりさが思いっきり裏目に出ている。
戦闘前に、ヒントを与えてくれるDERというシステムもあるが、そもそも一度マップに入ってしまうと、抜けることが出来ないので、戻って対策を立てるということが出来ない。
そのため、親切設計とはとてもじゃないが言い難い。独りよがりさを緩和するための苦肉の措置としか思えなかった。

全体的に、クラスチェンジを促すバランス調整なのだが、クラスごとに装備品が違うし、決してその装備品も安くない。
特にこのクラスチェンジを要求するのが、お金もアビリティも乏しい序盤に目立つ。方向性の似通ったクラスなら装備品を流用出来るぐらいの柔軟性も欲しかった。
また、クラスチェンジするたびに装備品がすべて解除されてしまい、装備しなおししなければならないのも面倒である。
一応、お気に入り設定などで瞬時に装備させることも出来るが、そもそもその設定がおっくうなのである。

ストーリーに絡んでくるメインパーティもいるが、ほかに渡り鳥というユニットを雇って使うことも出来る。
メインパーティのユニットはそれぞれ一つそのユニットだけのクラスが用意されている。
特定のイベントバトルをのぞけば、雇い入れたユニットだけを使って戦うことも出来るのだが、どうにもこの辺りのシステムが余計モンって気がする。

このフリーユニットを使って、探索というコマンドを使って、ユニットを好きな場所に派遣して武具強化用の素材を探させることも出来るが、ゲーム後半になると、ある程度の強さの装備品が普通に買えるので、あまり意味が無い。
とはいえ、終盤の武具が「○○+2」とか言う名称になっているのには愕然としたが…。もー少し作り込んでくれー!

ゲームバランスとしては、後半から終盤にかけては、そこそこS.RPGらしい戦略性のあるマップが遊べるが、「ワイルドアームズ」であることを意識してか、
敵が一切出現しない、もしくは、敵との戦闘が目的ではない、謎解きマップや、索敵マップのような、一風変わったものもある。
特に前半に顕著だが、S.RPGというよりは、制作者の用意した解法を探し当ててクリアするというマップが多い印象がある。
そのため、負けて当たり前というような局面が多く見受けられた。

シナリオは相変わらずクオリティが高い。
無駄に饒舌な部分と、普段使わない単語を漢字で多用している点をのぞけば、ドラゴンクエストシリーズに迫る水準だと思う(個人的には初代1作目ぐらい王道な感じが好きだが)。

見せ方がかなり貧弱で、ギャルゲー的である。背景に立ち絵にテキストと、まれに一枚絵の形式だ。
重要なシーンでは、キャラクタの台詞がフルボイスとなっている。だが、ボイスを当てるシーンとそうじゃないシーンの基準がイマイチわかりにくい。
スケジュールがかみ合わなかったのか事情はわからないが、シナリオの加筆修正と、アフレコの時期が合わなかったのかと思う。
また予算が降りなかったのか、声優が弱い。つまりは演技がイマイチである。

この辺は、批判を受けそうな部分だが、まず中身ありきの作り込みは個人的には嫌いではない。むしろ好感が持てる。
ゲームボリュームがなかなか長大でクリアまでのプレイ時間はかなり長い。
最近の世間の流れとして、あまりにも見た目を重視しすぎるきらいがある。
体裁を意識しすぎて、中身がないがしろになってしまっては、元も子もない。
PSPの容量やスペックなんかを考えると、中身を充実させたゲーム内容を目指すとしたら、この程度のバランスで良かったのではないかと思う。

インターフェイス周りは褒められた代物ではないし、4以降、淡泊としたゲーム内容は相変わらずである。
なんとか続編以降では、この辺をもっと充実してくれれば文句はない。

あれこれと書いてしまったが、このゲームの結論としてはそれ以前のものとなる。
つまりはこういう結論。

この手のS.RPGはもう食傷気味かも。残念。





[2007/08/26]
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