ウィッシュルーム 天使の記憶


対応機種ニンテンドーDS
発売日2007/01/25
価格4800円
発売元任天堂

(c)2007 Nintendo / CING
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「アナザーコード 2つの記憶」の制作陣が送る、タッチペンを駆使した体感型アドベンチャーゲーム第2弾。
その部屋に泊まると願いが叶うと言う噂が立つ寂れたホテルで過ごす一夜、奇妙な宿泊客が織りなすとても不思議なヒューマンストーリー。

DSでは珍しい縦持ちスタイルを採用しているため、タッチペンを使った操作性となり、独特のインターフェイスになっている。

まず、ゲームの雰囲気がすごくいい。キャラクターデザインは鉛筆画で敢えて着色していない。登場人物の年齢も高めで、渋めのハードボイルドな空気を醸し出している。
こういった儚げでどこか幻想的といった作風がゲームのオリジナリティを高め、魅力を引き立てている。

キャラクターのバストアップは縦持ちの画面によって、大きく目立つように表示される。単なる止め絵ではなく、細かな仕草まで自然にアニメーションする(ウゴウゴルーガのような感じっていう例えはちと古すぎるか)。他にもカット絵の演出など芸が細かい。感心する。

シナリオはそれなりに綺麗にまとまっているが薄味で、ゲーム展開が冗長だし、会話だけでは複雑な人間関係を把握しづらかったり、問題点が目立つ。
フラグ立てが今時のゲームにしては厳しいところがある。ヒントが少なく、重要な事柄も1度しか聞けなかったりする(聞き返せない)。脈絡のないところで話が進むことがあり少々理不尽である。この、突き放したような作りによって、しばしばゲーム進行を妨げられ、テンポを落としている。
人間関係に関しては、人物相関図といった解説の項目を充実させるようにしてくれるとよかった。一応「人物」というメニューで登場人物の解説が見られるが、あまりに説明が少なすぎてあってなきレベルなのもどうにかして欲しかった。

縦持ちスタイルを採用することにそうとう悩んだと思われるが、やはり失敗していると感じた。
これによって事実上、タッチペンのみで操作することになるが、画面構成や操作性に難が多くあり、特に利便性を犠牲にしてしまっているため、遊んでいて苦痛に感じることが多かった。
画面構成が悪く、とにかく見づらい。左右の画面に2人対話しているシーンでは、左と右に会話ウィンドウが出る。これが意外と見づらい。致命的なほどではないが、慣れるまでは見づらい印象があった。

マップ移動が最悪で、右のタッチスクリーンに表示される部屋の見取り図の上をタッチパネルか十字キーで操作させて部屋の中を移動し、調べられるところでは「調べる」アイコンをタッチすることが出来る。
いっぽう、左側の画面には主人公の一人称視点がフルポリゴンで表示される。これが結構綺麗。しかし、この画面構成では、両方見ながら遊ぶことが難しい。しょうがないので、操作盤とも言える右側の味気ない見取り図を見ながら移動することが大半を占める。
それほど巨大な建物が舞台ではないが、移動速度が遅く、なんだかやっていてストレスが溜まる。先へ進めなくなってコマンド総当りを試している時ほどこの移動方式は煩わしく感じてしまう。
縦持ちを採用した時点で、バッサリこの移動システムを捨ててしまって、完全なコマンド選択型アドベンチャーに割り切って作り替えてしまったほうが良かったのではないだろうか。完全なコマンド式と言っても、部屋を調べるときのカーソル方式はそのまま残してよい。

部屋を調べるときのグラフィックも一枚絵ではなくポリゴンで描いているので、視点を動かして調べることが出来る仕組みは他では中々やってなくて新鮮で面白い。調べるときに、選んでいる対象物(オブジェクト)を色を付けて教えてくれるのも親切で良いと感じた。
しかし、調べられる場所が多い割に、ゲームに関係する部分があまりに少なすぎて、反応も画一的でつまらないのがアドベンチャーゲームの探索の面白さがそがれてしまっている感じで残念でもったいなかった。

DSの機能を生かしたギミックは、相変わらず面白いが、「アナザーコード 2つの記憶」の時点でやれることをやりきった感があり、また、DSが出てから結構経ってしまっていることと合わせて、タッチパネルを使った仕掛けにインパクトを受ける人は少ないだろう。
しかし開発としてはタッチ操作による体感的な部分を重視したいのか、イベント中にも、間の悪いタイミングでタッチパネルで操作させるシーンを挿入したりして、テンポを悪くしている。
ハード初期の頃なら、こういう技法は効果的に作用したかもしれないが、皮肉なことだが、もうタッチパネルを使っただけのギミックだけではユーザーは驚かない。

雰囲気はかなり良いのだが、相変わらずストーリーやテキストはイマイチで展開もダラダラとしててだるい。間違った選択肢を選ぶことでゲームオーバーになる要素を入れてることで緊張感は出そうとしているが、あまり効果的に作用していない。
フラグ立てのバランス調整も良いと言えず古臭い。凝った演出は見事なのに、インターフェイスやゲームシステムが台無しにしてしまっている感じだ。そこで結論。

実にもったいないゲーム。





[2011/08/25]
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