ワールドオブファイナルファンタジー


対応機種プレイステーション4
発売日2016/10/27
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2016 SQUARE ENIX / TOSE
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モンスターを仲間に従え、共にパーティを組んで戦う、いわば「ファイナルファンタジー」の「ポケットモンスター」「ドラゴンクエストモンスターズ」版。

歴代FFシリーズのキャラクターが登場したり、シリーズ作品のネタを拝借したオールスターゲームとなっており、良くある安直な外伝作品に見えるが、その実しっかり作られたかなり気合の入った大作となっている。

ロゴイラストはきちんとシリーズおなじみである天野喜孝に依頼し、音楽に「ファイナルファンタジー13」で高い評価を集めた浜渦正志。メインキャラデザインは勿論野村哲也。
その他、メインスタッフはFFシリーズを長年支えてきた(通称野村組といったところか)中核メンバーでがっしり固めている。

開発は「ドラゴンクエストモンスターズ」で実績のあるトーセであるが、企画立案、画像、サウンドと言った素材はスクエニ側が制作しているようだ。
また特筆すべき点として、シリコンスタジオのゲームエンジンOROCHIを採用している(以前に同社ではガンスリンガーストラトスでの採用実績がある)。

まず、当たり前のようにグラフィックが綺麗。クレイアニメのような質感で、フィールドには空気感がある。ピントで遠近感を表現したり、小技も効いている。
フィールドマップは固定視点で、場所によって指定された位置にカメラが滑らかに移動する。
周辺のレーダーマップや地図機能によってフォローされているものの、歩ける場所と歩けない場所がわかりづらい。
また、カメラの向いている方角によってレーダーマップは動いてしまうので、微妙にプレイヤーの位置を見失ったり、どの方角を向いているのかがわからなくなる。
オプションで、表示を固定できるかどうかを選択できるようにするか、素直に固定してしまうのかのどちらかが欲しかった。

このゲームは、モンスターに焦点を当てた作品だが、過去作品に出ていたキャラクタだけでなく、それらの作品をモチーフにしたマップ、シナリオがあてがわれている。
過去に同じようなオールスターゲームとして「ディシディア ファイナルファンタジー」が既に存在している。
その時、これまでキャスティングの無かったキャラクターにも、豪華声優が起用されたが、今作でも同じキャラクターには、当然のように同じ声優陣を集めている。
それだけでなく、今回初めて声がついたキャラクタ、そしてオリジナルキャラ、更には端役に至るまで、それに合わせるかのごとく、今をときめく超豪華人気声優で揃えている。
もうこれだけでお腹いっぱいと言いたくなるほどメンツが凄い。さすがにこれは二役だろうとか代役立ててるだろうと思ってゲーム内のキャラクター図鑑を確認しに行くほど(担当声優が載っている)、そこだけでの見所が多い。

一方で、主役とも言えるモンスターについては、デザインがいい感じに可愛らしくデフォルメされて作られているものの、シリーズおなじみといえるようなモンスターが少ない。
これは、FFシリーズ自体、ドラクエシリーズとは異なり、毎回世界観や作風が大きく変化していって統一感がなかったため、仕方のないことだろう。
サンライズのガンダムもそうだが、会社の看板というか稼ぎ頭のようなIPは、どうしても会社を支えるための存在となってしまい、一々作風を揃えているほどの余裕がない。

また、ムービーシーンは、敢えてセルアニメにしている。これは実に面白い。
ファイナルファンタジーは、過去にアニメ化されたことはあるが、本職のゲームでは美麗CGムービーをウリとしていて、セルアニメを使ったことはなかったはずだった(携帯アプリの外伝作品まで手を広げるとアニメ推しのゲームはあったかもしれない)。
もちろん、プレイアブルのリアルタイムレンダと比べると違和感バリバリなのではあるが、それでも見せ場のムービーシーンは、セルアニメとして見せている。
これまで、特にFFシリーズでは、ムービーとゲームの融合を目指して、コンピュータグラフィックスの進化とともに歩んできた側面がある。
今ではもう、その技術革新がある意味、行き着くところまで行き着いたことで、もう無理にそこにこだわる必要がない、寧ろ多種多様な見せ方を模索するという新しい段階に入ったと言えないだろうか。

具体的なゲーム内容についてだが、この手のモンスターを集めて育成するゲームは、もうやり尽くされてしまった感があり、正直言って、今更感がある。
冷めた言い方になって申し訳ないが、可もなく不可もなくといった感じで、特に大きく驚くところもないし、無難に手堅く仕上がっているという程度の印象だ。

ゲームシステムを軽く説明すると、固定視点のフィールドに、ランダムエンカウントのバトル、それからFFお馴染みのアクティブタイムバトル。
お決まりの要素については要所要所は多少ひねってあり、例えばモンスターの捕まえ方は、単に倒したとき、あるいは、HPを削って瀕死にするなどではなく、敵の種類ごとに条件が設定してある。
また、モンスターだけを戦わせるのではなく、メインのパーティキャラ(人間)に、モンスター2匹をくっつける(頭に乗せる、あるいは乗る)ことで、その時の組み合わせでステータスやアビリティが変化するといったようにしてある。
敵側も、合体した状態で出現することもあり、合体状態を解除させて弱体化させることも出来る。HPとは別に安定度という内部パラメータがあり、これが減っていくと合体状態を解除されてピヨるという仕組みだ。
防御してこれを防いだり、安定度を回復させるアイテムもある。また、自分から先に「バラバラ」にして、再度「ノセノセ」するという対応方法もある。

モンスターの育成は敢えてシンプルに作られており、育成の自由度は無いに等しい。
強いて言えば、ミラージュボード(スキルツリー)のスキルの取得順を自分で選べることだが、これもゲーム終盤になってくるとサクサクレベルが上がるようになって、スキルコンプリートが当たり前になる。
スキルコンプリート時のボーナススキルを選ぶ所とか、ボードにいくつかある空きバコの枠に、好きなスキルを組み込めるぐらいで、それ以外の自由度はない。
例えば、仲間にしたモンスターが、敵として出たときのレベルで入ってくるとかはなく、仲間になるときは絶対にLV1からで、他にも配合とか合体とかありそうなものだが、そういう要素は一切排除されている。
ヘンシンカという要素があり、別のモンスターに変化できるものだが、上位の種族に変化してレベルを上げて高い成長率を得るみたいなものもなく、パラメータも種族ごとに固定となっている。

バランスも極端に楽で、急激に敵が強くなる終盤を除けば、ほとんど力押しで勝ち進めてしまう。
控えのモンスターを連れていけるが、戦闘中にモンスターを入れ替えたり出来ないので、状況に応じて戦略を変えるといったことが出来ない。
せめて、戦闘に参加している2人にくっついている2匹ずつの合計4匹のモンスターの組み合わせを変えるぐらいは出来ればよかったかと思うが、敢えて入れなかったか。

育成の自由度がほとんどないことも手伝って、手強い敵もレベルさえ上げれば楽になって解決することが多く、勢い力任せになってしまう。
そんなこともあって、ゲーム全体としては、緊張感がなく、単調になりがちでどうにも作業的である。

終盤になると、急激に敵が強くなる。これは、やり残したサブイベント関連を攻略する機会を与えるために、ハードルをわざと高くしているのだと思われる。
だが、早送り機能なしでプレイした場合、クリアまでにかかる時間は大体50時間近くになる。ちょっとどころかはっきり言って間延びしている印象だ。
これが全体で30時間ぐらいで終われる程度のボリュームであれば、いいワンクッションになっているのだが、体よく遊ばされてる感が強くて、あまり好きになれなかった。

他に、いくつか気になった細かい不満点を述べる。

後半のダンジョンが長い。なので、それに合わせてセーブポイントを増やして欲しかった。後半はセーブできずに1時間以上拘束されることが珍しくなく、辛かった。

メニュー画面のインターフェイスが微妙に悪い。
FFシリーズなのだから、L1,R1ボタンでウィンドウをページ切り替えできそうなものだが、アイテム画面など出来て欲しいところで今作では出来ない。
ミラージュボードを開くときの画面切り替えが重いのが辛い。また、レベルアップ時にもらえるミラージュボードでスキルを覚える際に必要なSPも、溜まったのを確認するのが面倒だった。
一番不便だったのは、モンスターのステータスを見たいのに、それ自体をまとまって見られる項目がないことだ。
ジェムケースのモンスター入れ替え時とか、ミラージュボード上で確認して欲しいということなのだろうが、ミラージュボードは一々画面切り替えで重くてしんどいし、見たい情報を中々見られないというのは良い構造とはいえない。
ヘンシンカもジェムケースの中だけでしか出来ないのは面倒。

ゲームシステムが、特に固有名詞が多く、微妙に複雑で慣れるのに時間がかかる。
凝った会話形式のチュートリアルが雄弁に挿入されるのだが、これがまた悪い意味でまわりくどいせいか、なかなか頭に入ってこない。
理解してくると、やっていることは、実にオーソドックスであるのだが、前述のメニュー画面の煩雑さもあって、わかりづらくなってしまっている。

戦闘シーンでは、シンプルとクラシックの2種類のコマンド入力方法があり、初期設定ではシンプルになっているのだが、実用的でない。
クラシックは、一般的なRPGと同じコマンド形式。おそらくコマンド数が多すぎることからシンプルモードを入れたのだろうと思う。戦闘中でも好きな時にシンプルと切り替えることが出来る。
確かにアビリティの数が増えてくると、かなりのコマンド数になり選ぶ煩雑さが出てくる。そこでシンプルに切り替えて使って欲しいということだろうが、こっちはこっちでどうにも使いづらい。
何かうまいやり方はなかったものかと思ってしまう。

全般的に音楽がすごくいい。シリーズおなじみの楽曲を独自のアレンジで流しているのだが、どれも独創的なアレンジで斬新で素晴らしい。
しかし、デフォルトのザコ戦のBGMがどうにもイマイチなのが残念だった。コンフィグで戦闘BGMを切り替えられるようにしているのはわかっている配慮だと感じた。

4種類のミニゲームがあり、本編で遊ぶことになるのだが、困ったことにどれも出来が悪い。
普通はこういうミニゲームがあったら、そのうちの1つぐらいは「くだらないが...面白い!!」と琴線に触れるのが出てくるものだが。複数種作っておいて全滅というのはあまりにも珍しい。
これならば、無理して入れる必要はなかったろう。

全体的に、子供向けという体で作られた深夜アニメと言ったノリに近い。そのためか、込み入ったマニアックな要素は撤廃されている。
ゲーム的には低難易度でシンプルで退屈かもしれないが、豪華で綺麗なビジュアルとサウンドで気持ち良く遊ぶというのがこのシリーズの持ち味の一つであるから、これぐらい気軽に遊べる作りでもちょうどよいのかもしれない。

最後に余談になるが、FF14に続き「アインハンダー」がネタにされ過ぎな気が!!これは続編フラグか!?そこで結論。

シリーズファン向けに作られた豪華な力作。





[2016/11/05]
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