ゼノブレイド


対応機種Wii
発売日2010/06/10
価格6800円
発売元任天堂

(c)2010 Nintendo / MONOLITHSOFT
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タイトルに「ゼノ」シリーズの冠が付いているが、スクウェアエニックス「ゼノギアス」バンダイナムコゲームス「ゼノサーガ」との関連性はない。主要スタッフが同じというアピールをするために付いている。
しかし、世界観は、ロボットが出てきたり、テイストは似た部分がある。

ゲームシステムは、数年前に手法が確立した、シームレスバトルをウリにしたロールプレイング。「ファイナルファンタジー12」や「ローグギャラクシー」で一気に広まった。
フィールド上には敵が配置され、画面が切り替わらずにそのままバトルへ移行する。
後発ということもあり、練りこまれたマップ構成や臨場感、凝ったバトルシステム、沢山の敵がリンクして一斉に襲いかかってくるなど、クオリティは非常に高い。

ゲーム・ボリュームもかなりのもので、本編をクリアするだけでも70時間近くかかる壮大なものである。クエストやアイテムコレクションといったやり込み要素もこれでもかというほど用意され、かなり遊べる代物となっている。
馬鹿でかいフィールドマップに、それに見合った収集要素。これは実に理に叶った作りと言えるが、枝葉の部分が少々多すぎやしないだろうか。わがままかもしれないが、あまりのバリエーションの豊富さにゲーム内容にくどさを感じてしまうのだ。
ここは思い切って作った枝葉を何度も見直して、核となる部分のみを取り出し、あとはバッサバッサと切り上げる作業も必要だったんじゃないかと思う。
これだけ沢山のゲームの楽しみ方をいっぺんに提示されても、それを理解してありがたがって遊ぶプレイヤーはゲームおたくぐらいなものだ。要素を削って、個々の存在感を上げていく方向性も考えるべきだった。

バトルシステムは、リアルタイムバトルということもあり、アクション性がやや強い。3人パーティで、操作キャラ以外はコンピューターが動かしてくれる。攻撃は敵に近寄るとオートで戦ってくれるが、8つのコマンド枠にアーツ(いわゆる特殊能力)をセットし、タイミングを見てアーツ技を発動し効率よく戦っていく。アーツには攻撃技や回復技などが存在する。
MPなどの概念はなく、一度選んだアーツは、設定されたリキャスト時間を待たないと再使用出来ない。個人的には、DS「ブルードラゴン 異界の巨獣」に非常に似たシステムだと感じた。
「ファイナルファンタジー12」では一般向けを考慮して断念した(裏では使っているようだが)敵対心の要素がはっきりと明示されている。壁役となるキャラクタにしっかり敵のターゲットを惹きつけ、他のキャラが敵対心を取りすぎないように戦っていく。
連携ゲージも存在し、ゲージが溜まると使えるようになり、一気に大ダメージを与えることができる。

戦闘は、息付く暇もないぐらい忙しい。楽しいが、疲れる。水が飲みたくなる。
また、普通のRPGでは、ザコモンスターは、2、3発殴れば倒せてしまうが、このゲームでは、20〜30回以上叩かないと倒せない。そのぶんゲーム展開が単調にならず起伏に飛んでいるのではあるが、やはりだるい。テンポもよろしくない。
一体だけで戦うことも多いが、たいがい敵も徒党を組んでいたりするので、2、3発で倒せる本当の意味でのザコモンスター、パーティの中でも親玉クラスと言えるような相手が多少タフなぐらいがバランスが取れていて良い。しかしあまり楽に倒せすぎても淡々としすぎてしまってつまらなくなるジレンマ。難しい。

経験値稼ぎも要求されるゲームなので、オートバトルの機能なんかも贅沢を言えば欲しかった。AIの動きを見る限り難しそうだが。

マップが広すぎる上に、配置されている敵の数もタフな割にやたら多い。広ければよいというわけではない。
この辺のバランスは「ファイナルファンタジー12」の方が、断然取れていると感じた。マップは広すぎず狭すぎず、全部回ってやろうと思えるほどの大きさで、敵の強さや配置もきっちり考えて設計されているので、全部倒しながら進めてもテンポよく進めることができた。
また、「FF12」にあったガンビットがこれだけ恋しくなったのも、ガンビットの存在がゲームを煩雑にしすぎない要素として必要であることが確認できた。

この会社のスタッフは、前々から感じていたが「ファイナルファンタジー11」が好きなんだなと感じていたが、本作をプレイしてそれは確信に変わった。ゲームシステムは細かいところが特に「FF11」にかなり似ている。
ネットワークゲームのような巨大さを誇るマップや、タイトなゲームバランスなど、プレイ感覚が非常に近い。

ゲームバランスは非常に良く出来ている。敵と戦いすぎてもレベルが上がりすぎず、適正レベルでボスモンスターとの戦闘が出来る。
しかし、レベルの高すぎる相手には、攻撃が一切当たらないという仕様が好きになれなかった。逆を言えば、適正レベルになっていないと先へ進めないということを意味するからだ。
良いゲームは低いレベルでも工夫をすれば先へ進めるおおらかさがある。絶対進めないと、はっきり体感できるのは逆に良いバランスではあるが、出来れば露骨な足止めを感じさせない作りをして欲しかったと思う。

パーティキャラは、性能差がはっきりしていて、操作キャラを切り替えてプレイしてみると新鮮味を感じれて楽しい。
主人公は前衛の戦士系のキャラだが、魔法使いのキャラに変えると、威力の高い攻撃魔法をガンガン放てるが、貧弱なので、壁役からターゲットを取りすぎない程度に調整する必要があるなど、キャラごとに全く異なった立ち回りを求められる。
遊び手の普段のプレイスタイルによって、主人公よりも扱いやすいキャラが分かれるんじゃないかと思う。奥の深いゲームシステムになっていると思う。

ただ残念なのは一緒に戦えるパーティメンバーが最大3人と、少なさが否めない。壁役、回復役で埋まって、残りがあと一人になってしまう。これが4人だと、自由度が格段に上がったと思うのだが。一人用のゲームだから逆にこのぐらいな方が良かったかもしれないが、なんだか物足りない。

グラフィックは、HDが広まってきた2010年としては、古臭さを感じさせるものの、フィールドマップの造形なんかはかなり綺麗で、そのままバトルシーンに移行することも考えると、驚異的なクオリティと言える。
逆に、キャラクタのモデリングが煽りを食った感じで、見栄えが良くないのが残念。これは、後述するが、装備品が見た目にきっちり反映されることも原因になっている。
マップは馬鹿でかいが、使い回しがほとんどなく、見て回る楽しさは健在である。ただ広さを売りにしただけでその実、同じマップを焼きまわしただけというゲームが珍しくない中、これには感心できる。

ストーリーは、テレビアニメの脚本家を採用しているだけあって、30分のテレビアニメをつなげたような構成になっていて、見せ場ときりのいい部分の緩急や、メリハリがしっかりついていて、ゲームというメディアの中で括ると高いレベルでまとまっている。
特にプレイ時間の長い、ボリュームのあるRPGのなかでは、伏線の出すタイミングが絶妙である。大半のゲーム作品は、素人が手掛けるので、長々と引っ張ってきた伏線の真相が明かされるのが10時間後など、プレイヤーのことをあまり考えていないものが平気で存在している。
そういう面では、ストーリーラインの構成や意外性といった見せ方を、プロにやってもらっているので、非常に良く出来ており、長いゲームでもだれずに楽しむことが出来たのである。

パーティーキャラクターの装備品で見た目が変わるので、イベントムービーは全てリアルタイム処理されている。数年前のプレイステーション2全盛期では、プログラム処理が出来ないからと、すぐにムービーに逃げるゲームがあったりしたものだ。本作では全てリアルタイム処理である。
それ以外だと、フルボイスでテキストを送る形式のイベントシーンだが、この見せ方が旧世代的で、かなり古臭い。カメラワークを駆使するなどして、チープさを払拭できなかったものだろうか。

メニュー周りのインターフェイスは、アイコンを使って表現しているが、これがいまいちわかりづらく、特にアイテム画面や装備品の変更など、見づらく煩雑極まりないものになっている。
アイコン式は、見栄えがよく海外で売りやすいのだろうが、安易にそっちに流れず、利便性を追求して欲しかった。

ただ、装備品の各部位がきちんとモデリングキャラに反映されるのは素晴らしいと感じた。特殊技能によって、ほぼ全ての装備品を全てのキャラクターが装備できる。容姿が変わっても、そのキャラが誰かきちんと判別出来るようになっているのも良い。
「ファイナルファンタジー12」では、剣や盾には反映されたが、それ以外は断念していた。そういった点では、後発という点もあり、手が回らなかった部分までしっかり実現しているところは高く評価できる。

ハードウェアの底まで叩いて限界点を引き出しているのか、ディスクの裏読みが凄い。ロード時間はあまり感じさせない快適さなのだが、プレイ中はほとんど絶えず読み込みしているので、ドライブが壊れるのではないかと心配になるほどだ。
ゲーム的には処理が破綻してバグるということはないので、問題なく遊べる。

このゲームの最大の不満点を強いて挙げるとすれば、ゲームが長いということだ。先にも述べたがクリアするだけでも70時間前後はかかるのである。
昨今は、適当なところで手を抜いたゲームも多いなか、細部まで手の込んだ作り込みをしてきた本作は評価に値するところかもしれないが、いくらなんでもクリアーまでの時間が長過ぎる。
せめて、長いといっても40時間程度で終わりが見れるゲームが理想的である。それ以上超えてしまうと、飽きてやめてしまうプレイヤーも出るかもしれない。個人的には、40時間を超えたあたりでシステム自体にマンネリを感じてしまった。

マップが広いと、移動が不便になるものだが、いつでも好きなときに、特定の場所へワープできる機能が付いていたり、昼夜の概念があるが、時間を自由に設定できたりする。この辺は、有名な任天堂チェックが入ったのではないかと思う(特に時間操作のあたりは露骨である)。
久しぶりに気合の入った作りのRPGで好感が持てた。しっかりとした製作期間や開発費を与えられれば、きめ細やかな部分まで作りこまれたRPGが今でも作れるのである。

ただ、ゲームシステムが無駄に複雑な部分があり、チュートリアルが充実しているものの、覚えることが多すぎる点や、クセの強いゲームシステムが、間口を狭めている印象を受けた。そこで結論。

こってりとしたRPG好きプレイヤーなら楽しい。徹底した作り込みに驚愕せよ。





[2010/06/26]
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