ゼノサーガ エピソード1 力への意志


対応機種プレイステーション2(HDD対応)
発売日2002/02/28
価格7800円
発売元ナムコ

(c)2001 NAMCO / MONOLITHSOFT
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スクウェアに在籍し、数々の話題作を生み出した高橋哲哉による初の独立作品。
独立前、最後に制作した「ゼノギアス」でその一端を見せた壮大な構想であるが、
それを具現化したSF超大作RPGが老舗ソフトメーカーナムコから発売されることとなった。

「ゼノギアス」は賛否両論ありつつも、根強いファンを獲得するほどの人気を生み出したのも事実、
設定資料集や本編にもふんだんにまぶされたロマン溢れるギミックの数々に
続編を熱望する声が後を絶たなかった。

一応、新シリーズという仕切り直しをしているが、
監督、キャラクターデザイン、サウンドコンポーサーと主だったスタッフはそのままであり、
微妙ながらも関連性をほのめかすシーンも見受けられる。

ゲーム全般は大雑把に言ってしまうと半年前発売された「ファイナルファンタジー10」を
お手本にしたような内容である。
但し、グラフィック、ローディングの長さ、等々取ってみても、どれもが一回り品質が落ちている感じで
FF10をやってしまっていると、どうしても見栄えが悪く映ってしまう。

まずローディングに関してなのだが、あらゆる面で引っ掛かる程度の待ち時間があり、
そのためかハードディスクドライブにも対応しているが、それでも劇的なテンポの改善が見込めない酷さである。
これはロード時間云々でなく、戦闘での冗長な演出やエフェクトにも原因があると見られる。
FF10でハードウェアの性能を快適性にまで傾けた能力を発揮したのである。
なんとか工夫して見た目だけでなく、テンポにも目を向けて欲しかった。

ゲームの流れとしては、ゲーム→ムービーの繰り返しが顕著で、
特にムービー映像を見ている時間が長い。
「ゼノギアス」でも、強制イベントが多く、ストーリー重視な内容ではあったが、
台詞は喋らず文字を追うスタイルであったため、そこまでひどい疎外感は感じなかった。
しかし本作では、とうとうイベントフルボイス化が実現してしまったため、
台詞を送る程度のボタン操作も無く、完全に見ているだけとなってしまっている。
このために、物語に魅力を感じない人にとっては全く遊べたもの(見れたもの)ではないし
かといって、ストーリーを追いたい人にとってゲームパートはどうなのかというと、
そもそもが、ゲームとストーリーの摺り合わせが全く取れていない(取ろうという形跡すら無い)ために
ゲームパートにうつると、ふっと進展が寸断され先のムービーを見るためのノルマ的なプレイになってしまう。
ゲームそのものも自由度に乏しく、がっつり一本道なのもその印象を強めている。
これは、両方のパートの距離感を埋めることをしなかった怠慢が生み出した悲劇であろう。

フィールドマップはフルポリゴンで視点はカメラ固定とFF10と全く一緒だが、
エンカウントがシンボル式で、ダンジョンでは敵が徘徊している。
配置してあるトラップや忍び歩きを駆使することで戦闘を回避することが出来るようになっているが、
この敵シンボルの動きが、非常に機械的であり単純であり、避ける手段を考えているぐらいなら
潔く戦う方が煩わしさがないような作りで、結局場所の決まり切ったエンカウントになってしまっている。
そうかというと、経験値配分が上手く取れておらず、ボスが妙に強かったり、
やたら強いザコグループが出てきたりする。
ボスが強いのは演出の一つと捉えることも出来るが、問題なのは
少し戦うとすぐにレベルが上がり、戦術も何も無くごり押しで勝ててしまう点にある。
分かり辛いバトルシステムと合わせて、結局レベル上げした方が楽なので、そっちに傾いてしまう。

戦闘システムに関しては、独特な言い回しや単語があるせいで、直感的で無い。
また、属性にも火/氷/雷の他に、突/斬といういまいち概念の違いを理解しにくいものを
一緒にくっつけているせいで、複雑化に拍車をかけている。
ひどいのはゲーム中盤以降、全体攻撃の必殺技を覚えるのだが、
これが偉く強力で、戦闘が全体技の連発になってしまい、戦略性の欠片もなくなってしまう。
結局、単調な戦闘をさらに作業的にしてしまっているのだ。
技名やアイテム名も独自の世界観を出したいのは分かるが、ゲームとしては
覚えづらいだけで、もうちょっと馴染みやすい名称にするなど改善が必要。

ストーリーパートについてもう少し書くと、
このゲームは物語上の全てのプロットを省略せずにムービーに起こしているわけで、
それ単体で見た場合、実はたまらん豪華さである。
だが、RPGとして見ると、なんだか余計なところまで描いているようにしか見えず、
非常に冗長でだるい。
通常、見せたいこと描きたいことを絞り込んでまとめるのが当たり前であるが、
この辺り本作では丹念に描ききっているわけで、弊害として何を言いたかったのかわかりにくいし
テンポが悪いせいであらすじそのものも印象が薄く
意識的に視聴しないと、あとに残らない内容である。
なにはともあれ、やはり本作はゲームである。RPGである。
その媒体で描く以上は、それに即したやり方で作るのが筋であり適切だろう。
また、察しのいい人は未プレイの段階で気付くと思うが、当然のように未完結で
強引にきりのいいところで終了というのも、なんだか今時のゲームにしては
ありえない配慮の無さである。

かといって、DVDなどの映像作品として見た場合、演出やカット割り、カメラワークなど
光る物が感じられず、あげくスピード感が無くもったりしていて、
グラフィックのモデリング自体もゲーム向きであり
決して高い水準とは言い難い。

マップ造形も、特にダンジョンの仕掛けなどがどうにも旧世代的で、古くさい。
センスもあまり良く無く、無駄に広いだけのところや、
特に厳しいのが、SFの世界観の表現が非常に安っぽく描かれていて、
そういう面での魅力が薄いどころか冷めてしまう点にある。
この程度のものしかできないなら、せめて良質なSF映画の物真似をするぐらいのことはやってきて欲しい。
SFという設定を持ってきているのだから、細かなディテールには拘って欲しいものである。

ゲーム中に流れる音楽は極端に少なく、フィールド上はほぼ全て無音、
実質ゲーム上のBGMは通常戦闘、ラスボス戦、ラストダンジョン、戦闘ファンファーレの4曲。
どうやら相当イベントムービーの音楽制作に力を注いだようで、しかしこれではあべこべのようにも思う。
せめてフィールドの環境音に拘るとかして欲しい。今時ボス戦の音楽すらザコ戦の使い回しとは
ちょっと手抜きにもほどがあると思う。

手厳しい苦言がかなり多くなってしまったが、
あらゆる面で作り込みの甘さ、中途半端さが目に付くゲームである。
もしも続編を望んだファンが待っていたのは重厚な物語なのだとしたら
そもそもゲームとして発売すべきだったのかどうかすら疑問を感じてしまう。
というのも、ここまで好き放題ストーリーを描いていても「物語」が「ゲーム」に
引っ張られている部分が見受けられたからだ。
一度ここまで大っぴらに出した以上、続編を出さずに終わらせるわけにはいかないわけだが、
続編は、もっとロールプレイングゲームに合った作り込みを期待したい。

ゲームパートとストーリーパートの乖離が激しい駄作。





[2004/04/19-2005/03/23]
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