ダブルキャスト


アニメを見るのと変わらないプレイ感覚がウリのやるドラシリーズ第1弾。
以前にサターンで出ていたエヴァの完成系。

エヴァは全編ムービーで要所要所に選択肢を用意して、
それに伴う好感度の変化でシナリオが分岐していた。

しかし如何せん全部ムービーなだけあって、内容的に満足の行く物には到底ならなかった。

このゲームは素人目にはよく分からないのだが、
動きの激しいカットではムービーで、
それ以外の細かい動きはプログラムで動かしているようだ。
後者は要するに、PCエンジン時代の紙芝居アニメーションをより滑らかに鮮明にした感じ。
両方のカットに殆ど違いが無いことから、ちょっとやそっとのゲーマーでも、仕組みが分かる人は
なかなかいないと思う。

アニメムービーの画質はPSとは思えないほど綺麗。
フルサイズでは無いが、結構サイズは大きめ。

全体的に派手な動きは無い。その代わり、作画レベルは下手なOVAよりも全然高い。
1998年当時は、丁度デジタル彩色がアニメ業界に導入されだした頃で、
予算も時間も無いテレビアニメでは、まだ新しい作業方法に慣れていないのか
著しい作画の乱れや、色合いの酷さが目立っていた。
が、本作では、デジタル彩色でありながら、色合いに違和感も無く、作画も非常に安定している。
ゲームとデジタル彩色との相性も良く(これの前に有名になったのはTODのOPムービー)、
かなり鮮明で綺麗な映像を吐き出してくる。
従来の彩色方法(というより撮影方法)では、どうもゲームに落とし込む時に工夫しないと全体的にぼやけた感じになっていたが、
デジタル彩色の場合は、吐き出すマシンも機械だからか、違和感が無くそれでいて非常に綺麗に映るようだ。
勿論、ここまでクオリティの高い画像を出すには、高い機材に十分な制作期間、質の高いスタッフと
好条件が必須でもあるが。

物語は無個性で声優が当てられていない主人公(下段にメッセージが入る)と、ヒロインとの絡みがメインとなる
所謂ラブコメディで、
ストーリーの描き方はギャルゲー的な路線を踏襲している。
立ち絵と一枚絵で構成されるギャルゲーとは違い、このゲームはとにかく動く。
画面が止まっている時は殆ど無い。
カット切り替えも通常のアニメ並に頻繁に切り替わり、
その際にロードでの硬直時間も無い。違和感なく繋がっていく。

ストーリー性が非常に強いギャルゲーという感じで、
主人公と各キャラとの好感度によってシナリオが変化していくようになっている。
選択肢の数が物語の長さの割に多く、しかし、サウンドノベルとは違いシナリオ分岐は無く基本的に一本道。
そんなこともあって、選択肢の構造を理解すれば全てのエンディングが見られるかというとそうでも無い。
各キャラとの好感度を上手く調節してシナリオを見ていく必要があるのだが、
ひとまずのグッドエンディングを見るのであれば、さほど苦労はしないが、
全部のエンディングを見るとなると、これがとんでもなく大変になってくる。
というのも、ゲーム側で好感度の上下を一切教えてくれないので、感覚的にやっていくしか無い。
勿論、キャラの好感度がどれぐらいなのかというのもゲームでは一切分からない。
そのため、大半のエンディングで密接に絡んでくる好感度によるシナリオ分岐が非常に分かり辛い。

シナリオ達成率というものがあり、大体どれぐらいシナリオを見たかという指標があるのだが、
80%ぐらいまでは、選択肢を潰していくプレイをしていれば簡単に行く。
しかし、そこからはかなり意識的にプレイしていかないと達成率を上げるのは困難。
また、本作は構成上、達成率が上がり易い割に見たエンディング数が増えていない。
これは、先に述べた通り、大半のエンディングが複雑な好感度などの条件が設定されているため
辿り着くのがかなり大変である。
シナリオ達成率自体も、かなり細かな計測を行っていて、
全く同じシーンで微妙な選択肢の違いによる本当に細かな台詞の変化だけでも、別計測されているほどで
100%を達成するのは、超人的なプレイを要求される。
仕組みを分かっていて、効率的なプレイしたとしても4〜5時間はかかる作業量である。

見たエンディング数は表示されるのに、どのエンディングを見たのかが表示されないのは不親切である。

因みに、一度見たシーンは飛ばすことが出来るため、結構スピーディに進めることが出来る。
恐らく、何度もプレイして達成率を上げることがゲームの目的としてかなりの割合を占めているのだと思われる。
やるドラは結構ゲーム性の低いものだと思われがちだが、実は全く逆で、
恐ろしいほどに、シビアでゲーム性の高い内容になっている。

未見のシーンでもスキップボタンを押すと台詞を飛ばせてしまうのには参った。
このゲームでは、同じシーンでも台詞が変わることがあるため、
一度見たのか見ていないのか紛らわしいことも多々あり、いたずらにスキップボタンを押してしまうと
肝心のボイスが飛んでしまうことが頻繁にあった。

実はこのゲームの企画自体は好きなのであるが、ゲームシステムが非常に突き放していて
どう遊んで欲しいのかがよく分からない。
ストーリーを堪能して欲しい割に、シナリオ分岐が分かり辛く、意図的に隠している節もある。
しかしそこまで苦労して辿り着いた割に、労力に見合うほどの内容が待っているわけでも無いことが多い。
敢えてシナリオを読み込んで欲しい意図で作っているのだろうが、
そんなわけで、とにかく達成率80%を超えた辺りからのマンネリ感はかなり苦痛だった。
そこら辺から、途端にマンネリになるのだから、もっと情報をプレイヤーに与えてもいいように思う。
試行錯誤して何度も同じシーンを繰り返しやらすのは理不尽極まり無い。

また、2枚組なのだが、この手のゲームは何度も繰り返し遊ぶこともあって、
ディスク交換の頻度が半端じゃ無く多い。
ここまでディスクの入れ替えをさせられたゲームは初めてだ。
そのたびにテンポが阻害される。
ある程度遊び込むと序盤を飛ばして遊ぶことが出来るようにしてるぐらいなのだから
構成をもっと練り込んでディスク2から遊べるようにする等、入れ替え頻度を減らす工夫が欲しかった。

シナリオ自体は結構まとまっていて面白い。
特にヒロインの美月を始めとしたキャラクターが非常に魅力的で頭に残る。
前半はオタク心をがっちり掴むラブラブな路線を維持しつつ、後半に押し寄せる怒濤の展開といい
実に緩急のきいた内容になっている。
因みにエロシーンは無い。
細かな仕草や台詞、背景や小物設計など、流石第一線で活躍するアニメクリエイターを使って作らせているだけはある。
どれもが高レベルで凄い。

とにかくこのゲームで評価したいのは、ギャルゲー特有のクセをかなり綺麗に払拭している点。
ソニーのブランド力であったりCMであったり(20台の女の子が部屋で遊んでいる内容だったハズ)、
有名なアニメーターを使う等、要するに豪華なギャルゲーなのだ。
(このゲームはギャルゲーでは無いと言う人も多いと思うが、描き方や仕組みは実にギャルゲー的である)

だからこそ(と言うわけでも無いが)、もうちょっとゲームバランスを落として欲しかったようにも思う。
このゲームに、そこまで深いゲーム性を求めている人は少ないと思う。
というより、あまりにバランスが理不尽。




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