リンクの冒険


対応機種ファミリーコンピュータ(ディスクシステム)
発売日1987/01/14
価格2600円
発売元任天堂

(c)1987 Nintendo
戻る

ディスクシステムのキラータイトルとして華々しいデビューを飾った「ゼルダの伝説」の続編として開発されたのが、この「リンクの冒険」だ。

この後発売されたSFC「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」で、見下ろし型トップビュー+画面切り替え式の流れがシリーズとしては決定的となった。
そのため「リンクの冒険」で採用された、横スクロールのサイドビューで、アクション要素の比重が強いこの作品は、シリーズとしては異端で、外伝的扱いをされてしまっている。

だが、このゲームが発売された段階では、まだ、シリーズとしての人気が確立していたわけではないので、そのへんのこだわりは当時はまだなかったのだと思われる。

実際、サイドビューアクションとなっても、RPG的要素や前作にあったエッセンスは随所に残されており、やっぱり「ゼルダ」を遊んでいる!という感覚を味わえるのだから、このさじ加減はさすがと言える。

フィールドを探索して、アイテムを集める、町で情報収集してイベントをこなし、新しい魔法やアクションを教えてもらう。その力を使って、7つの神殿を目指し道を切り開く。
神殿の中では、手強い敵と対峙し、鍵の掛かった扉を開け、神殿に眠るアイテムを取り、ボスを倒す。

コンセプトだけで言えば、前作と流れは全く変わらない。

ただ、サイドビュー視点となったことで、凝ったギミックはできなくなり、どうしてもアクションゲームとしての色合いが強くなってしまっている。
探索要素や、経験値を集めてレベルアップといったRPG的要素はあるものの、このゲームを、RPGやアドベンチャーとして楽しむことは難しくなったと言っていいだろう。

そして困ったことに、アクションゲームとしてみても、良く出来ているのだが、難易度が高めで、全体的にかなり丁寧な操作を求められることから、非常に敷居が高い。

アクションゲームとしては、敵味方ともに挙動が凝っていて、作りこまれていて、出来が良い。
特に、単純なアクションゲームのヒットアンドアウェーではなく、いわゆる殺陣を楽しんで欲しいらしく、上段攻撃、下段攻撃と明確にわけられた攻撃、盾を使って敵の攻撃を防御する戦闘は、なかなかRPGらしくて良い。

しかし、プレイヤーの攻撃のリーチがかなり短く、そのせいで、シビアなゲームになってしまっている。
殺陣のアクションを強要されることも合わせて、相当精密な操作が要求されるために、かなりのアクション慣れした人でないと、厳しい作りとなっている。

ゲームを進めると、下突き、上突きという攻撃を覚えて使えるようになるが、もっと序盤に使えるようにしてくれてもいいぐらい、プレイヤーが“弱い”。

ドラクエなどの当時のRPGブームに影響されたのか、敵を倒すと経験値が手に入り、一定値稼ぐとレベルアップするという要素が導入された。
単純にレベルアップするのではなく、攻撃、ライフ、マジックの3つからレベルアップさせるものを選ぶようになっている。

敵を倒し経験値を稼ぐことにより、プレイヤーが強くなっていくという構図が出来上がっているのは良い。
だが問題なのはここからで、ゲームオーバーになってしまうと、この3つのパラメータのレベルが、一番低いものに合わせて落とされてしまう。

そのため、一応レベルアップ時に3つのパラメータから強化させるものを選択できるものの、実質的には3つを満遍なく強化していかなければならない。

このゲームでは、残機アップや回復アイテムが手に入ることは殆ど無い。というより、ほぼ無い。

1UPアイテムは隠し部屋など決まった場所に配置してあるが、一度取ってしまうと二度と復活しない。
敵を倒しても、このゲームでは体力を回復させるアイテムを落とさない。魔力を回復させるアイテムは落とすことはあるが、頻繁には落ちない(体力回復などは町や回復ポイントで行う)。
敵の動きも結構いやらしく、いわゆるごり押しが効きづらい作りとなっている。

こういった仕様もあり、相当慎重にプレイしなければ、すぐにゲームオーバーとなってしまう。
ゲームオーバーになってしまうと、溜めた経験値は0になり、場合によっては上げたレベルも引き下げられてしまう。

せっかく上げたレベルをロストしないために、3つのパラメータレベルを均等にした状態でゲームオーバになる必要がある。つまり、経験値稼ぎを要求される。
町の周辺でエンカウントを繰り返すなどの、安全な方法で経験値稼ぎをするハメになるのだが、これがゲーム的に非常に苦痛なのは言うまでもない。

かといって、低レベルでゲームを進めようとすると、攻撃力やダメージの多さなども手伝って、かなり難しい代物になってしまう。

正直、このようなRPGの経験値レベル制を導入したのは、大失敗だったと言える(海外版では、案の定このレベルロスト仕様がなくなっているようだ)

ゲームを進める上で理想的なのは、普通に遊んでいれば、適正なレベルになっており、適正な強さでゲームを遊べるべきだ。
しかし、このゲームでは、レベルロストしてしまうせいで、それを意識してゲームをやらなければならないため、レベルが最大まで上がり切るまでは、どうしてもプレイが保守的になってしまう。

この辺のゲームシステムの噛みあわせの悪さが、イマイチ、「ゼルダ」シリーズとしても、外伝的な、存在感の薄い位置に座してしまっている原因ではないかと思う。

断っておくが、アクションゲームとしては、少々ストイックではあるが、しっかりクオリティが高く面白いものとなっていることだけは付け加えておきたい。
だが、これを「ゼルダの伝説」の冠をつけて売りだしてしまったのは、当時の事情を考慮に入れても、ナンセンスだったといえるかもしれない。
(前作が、他では見たことがないような突き抜けた衝撃作だったのに対し、本作はちょっと出来の良いほかでもありそうなアクションゲームとなってしまったのは、期待していたのとは違うというか、やはり落胆せざるを得ない)

そこで結論。

紆余曲折していたころの「ゼルダ」。しかし普通に遊べる。





[2016/09/18]
戻る

inserted by FC2 system