ゼルダの伝説 神々のトライフォース2


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2013/12/26
価格4800円
発売元任天堂

(c)2013 Nintendo
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ニンテンドー3DSで「ゼルダの伝説」のシリーズ完全新作がついに登場。
立体視の機能をフル活用したゲーム内容に期待が高まる所だ。

初報で発表された時は、はっきりいって、全く期待できなかった。
なぜなら、「ゼルダの伝説」で、過去作の世界観を露骨に引き継ぐような真似をして欲しくなかったからだ。
画面写真を見れば見慣れたフィールドばかり。おまけに、壁に入り込むという新アクションも地味で、期待できる要素が全く感じられなかった。

世界観の共有という部分だけ見れば、結果的に、いい感じに仕上がっていると思う。
心配していたのは、変にSFC版に縛られて、SFC版プレイ済みの人間が飽き飽きするような作りになっていないかどうかだった。
「神々のトライフォース」と同じ世界ではあるが、構造的にはかなり変わっており、ダンジョンのギミックなど部分的に、オマージュ(懐かしさ)を感じられる程度の重なり具合が良い。
つまり、SFC版を知っている人間でも、新鮮さを保ちながら、かつてのギミックが形を変えて蘇ってきたような感覚でプレイできる。

副題の「神々のトライフォース2」というのは、過去作品の人気にすがっているとも取れるし、名前負けしかねない一面もはらんでいる。
全く違った副題にして、世界観のつながりを曖昧にすることが個人的には適切だと感じるが、全くもって思い切った副題を付けたものだ。
内容的には、確かに「神々のトライフォース2」がふさわしいっちゃふさわしいのだが...。

立体視オンでプレイすることが半ば前提となっているゲームシステムは、相変わらずかなり強気な作り。
DS時代のゼルダも、タッチパネル操作オンリーという、割り切った作りをしていた。
今作の、完全に真上から見た形のトップビュー視点で、なおかつ、立体的な仕掛けを全面に押し出したシステム設計は、ある意味携帯機のゼルダらしい。
ニンテンドー3DSのプラットフォーマーとして、どうしても立体視を絡めたゲームにしたかったのだろうと思われる。

ニンテンドー3DS向けということで、今作は、携帯ゲーム機のゼルダシリーズの系譜に乗っかった作品と言っていい。
おそらく制作スタッフも、ゲームボーイカラー、GBA、DS版を作ってきた人間がやっているのだろう。作風も似通っており、DS版の正当な進化系といった例えが近い。

携帯機のゼルダはどこか物足りなさを残していたが、今作は、ちゃんと探索できるフィールドマップがあって、ダンジョンの総数も多くて、ボリューム的にもなかなか頑張っている。
ゲーム画面はフルポリゴンで作られており、映像もそれなりの綺麗さでありながら、秒間60フレームで、滑らかに動かしている点も特筆すべき点だ。

本作は、“ゼルダの当たり前を見直す”というフレーズを掲げて作られた記念すべき一作目となる。
そんなわけで、意図的に新しい試みが導入されている。

「ゼルダの伝説」のお決まりとして、攻略するダンジョンの順番がきっちり決まっており、なおかつ、ダンジョンクリアに必要なアイテムは、必ずそのダンジョン内に配置してあるという暗黙のルールが存在していた。
この、ゲームを成立させるためにこれまで必須とも言われていた流れを、今回は思い切ってぶち壊している。

今作では、ゲームをクリアするために必要となる、いわゆるキーアイテムは、ほぼすべて、ゲームの拠点となるレンタル屋で、借りることが出来る。

無料ではなく、物によって値段は異なるが、50ルピーから100ルピーのレンタル料が付けられている。買い取って完全に自分のものにすることもできるが、その場合は800ルピーから1200ルピーといった高額な代金を支払わなければならない。
レンタル時の使用制限は特にないが、ゲームオーバーになってしまうと没収されてしまう。高い金を払って買い取ったアイテムは、ゲームオーバーになっても手元に残る。

この新しい仕組みは、とうぜん賛否両論巻き起こることだろうが、個人的には英断と取りたい。
まず、ゲームオーバーになるリスクを持たせたため、適度な緊張感を持ってゲームプレイ出来る。アイテムを買い取るという行為は、ゲームオーバーになった時のリスクを軽減させるためのものだ。
考えなしに借りまくっても良いが、やられてしまった時にレンタル料が無駄になってしまうため、借りる時に、どのアイテムを借りるかという葛藤が生まれる。
もちろん、ゲームオーバーになった時にリセットしてセーブしたところからやり直す手も残されているが、いずれにしても、アイテムをレンタルするという一手間によって、一定の緊張感を与えることができている。

また、これまでのゼルダシリーズの決まり事を破ったことで、意外性を持たせることに成功している。
今までのゼルダでは、段階的に新しいアイテム(アクション)を与えて、先へ進める作りになっていたため、そのお決まりを読める慣れたプレイヤーにとっては、試行錯誤の余地がなくなりつつあった。
今回は、攻略するダンジョンの順番が決められていないため、初期のゼルダシリーズのように、ダンジョンの入口や入り方から探したり、ダンジョンの中に入ったはいいものの詰まってしまい、後回しにして別のダンジョンに行くといった自由度の高さがある。
いきなりでかいフィールドにポンと放り出され、特に目的も明示しないというのは、今の時代のゲームの作り方としては、勇気のいる決断だったと思われるが、良くも悪くも昔気質のゲームへと先祖返りしているといえないだろうか。

壁に入り込む(壁画となって移動する)という新アクションは、未プレイの人にはピンと来ないものかもしれないが、良くこのような荒唐無稽のアイディアをここまでしっかりとしたものへと昇華させたものだと感心してしまった。

不満点や気になった点を述べる。

登場人物や世界観、ストーリーの作りこみが希薄で、魅力がない。
携帯機ということもあってか、低年齢層向けを意識しており、ポケモンやマリオといったノリに近い。
「時のオカリナ」ほどシリアスで大人びた世界にしろとは言わないが、ゼルダシリーズ自体がとこを向いているのか、ちとわかんなくなるほど、子供向けに舵を切りすぎている。
子供向けのストーリーをつまらないと切って捨てているわけではなく、細かい台詞回しに気を遣っているところは伝わってくるのだが、全体的に作りが安直で、ありきたりで、面白くない。

インターフェイス。操作性に一考の余地あり。
Bで剣を振り、Aが物をつかむ、X,Yにアイテムを装備させるボタン、Rで盾を構える。
スタートでポーズ画面に入り、ゲームを終了させるかどうか聞かれる。
セレクトでアイテムセットメニューが開く。
他に、ボタンに入りきらなかった分のコレクトメニューを開くなどの操作を下画面にアイコン表示させてタッチ操作で対応しているが、欲を言えば全部ボタン操作で呼び出せるようにして欲しい。
やり方としては、「時のオカリナ」のように画面を左右にぐるぐる回して切り替えるようなインターフェイスにして欲しかった。
特に3DSは、セレクト、スタートボタンが押しづらく、使いづらいので、余っているLボタンに何かの操作を割り振って欲しかった。実にもったいない。

ゼルダの肝とも言える、ダンジョンは数が多くバリエーション豊かだが、1つ1つのダンジョンがその分、短めで、すぐに終わってしまう。
また、解法がワンパターンで、ある意味洗練されているとも言えるが、全体的に捻りが足りなくて、なんとなく物足りない。
気づくか気づかないかというバランスは絶妙と言えるところではあるが、昔のゼルダは気持ちもうちょっと、手ごわかったような気がする(意識的にこのレベルの難易度にしている気もする)。

ダンジョンの数が多くてボリュームがあると言っても、クリア自体は10時間前後で終わってしまうのも、量的には物足りないと言わざるをえない。

フィールドはフルポリゴンで描かれており、壁に入り込むときは視点が変わったりするが、2Dアクション(2D時代のゼルダ)のゲームルールを意固地とも言えるほど貫いている。例えばジャンプが出来ないなど。
高低差や立体感を意識した仕掛けが多数仕込まれていて、絵的には3Dアクションと大差無く見えるのに、それでも見下ろし型の2Dアクションのルールを採用しているため、その古臭いルールが滑稽に映ることがある。

フィールドマップにギミックを詰め込み過ぎ。
これは、一概に悪いこととはいえないのだが、ハートのカケラ集め、ミニゲームなどのサブイベント、目の前に見えているやりこみ要素があまりに多すぎて、変えってやる気が無くなる。
携帯ゲーム機ということで画面サイズの関係もあり仕方ない部分もあるのだが、マップがパズル的でごちゃっとしてて、見てるだけで疲れてしまう。このへんのさじ加減の取り方は難しい所だ。

最後になるが、「神々のトライフォース2」という副題ということもあって、少々懐古的に考えてしまったことがある。
これはゼルダに限ったことではないのだが、任天堂の人気シリーズ作品。主に、マリオ、ゼルダシリーズは、社内的にマニュアル化や方法論が確立してきたのか、安定した完成度を持ち、期待を外さない作りになっている。
しかし、あまりに体系化し過ぎていて、意外性に乏しく逆に面白味がなくなってきてしまっている。

だれでもクリアできるラインの難易度だったり、理不尽さは無いが、決まりきったプロセスを踏んで戦うボス戦闘。
SFC版のゼルダの伝説は、アクションとしても謎解きとしても、絶妙な手強さを持ったゲームで、理屈では語れない没入感が確かに存在していた。
そういうものを期待して、シリーズの新作を購入するのだが、かつて味わった熱い感覚を、なかなか味わえなくなってきている。
商品としては、綺麗に整ってきて、丁寧な作りなのもわかるのだが、ゲームである意味一番大事な部分、熱中させてしまうものが足りない。
ゲーム慣れしたプレイヤーには2周目以降ハードモードで対応というのも、なんとも機械的で芸がない。このへんも“ゼルダの当たり前”で見なおして欲しい部分だ。そこで結論。

いつも通りの小粒なゼルダ。





[2013/12/29]
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