ゼルダの伝説 風のタクト


対応機種ゲームキューブ
発売日2002/12/13
価格6800円
発売元任天堂

(c)2002 Nintendo
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アクションアドベンチャーの傑作、ゼルダの伝説がゲームキューブに登場。
ニンテンドー64ではその革新的なゲーム内容が話題を呼んだ。
その新作が上位機種でどのような進化を遂げたのか。

64では、リアリティを追求したグラフィックだったが、
GCでは一転してトゥーンシェイドによるアニメ的な映像になった。
トゥーンレンダリングは、2002年12月の発売当時からしても
別段珍しい技術でもなく、幾つかのゲームで採用されている物だが、
本作は、ゲームキューブの性能を活用して、まさに完成されたアニメーションを
実現しており、従来のトゥーンレンダリングが「未完成作」に見えてしまうほど
頭一つ抜け出ている。

とにかく、モデリング、エフェクト、テクスチャーの張り
どれもが付け入る隙のないほどできあがっていて、
思わずポリゴン欠けなどの粗を探してしまいたくなるほどだ。
(そういった粗は全く無いのが凄い)

見た目は大きく変わったが、基本システムは「時のオカリナ」で作られたものを継承しており、
そこをさらに遊びやすく改良が施されている。
操作性やインターフェースがさらに良く親切な設計になったこともあり、間口がグッと広まっている。

簡単な操作で派手な攻撃技が出るようになったこともあって、
だいぶんアクション操作の難易度は下がっている。
敵がマシンパワーを生かしてワラワラと出てくるようになり、
それを簡単操作でガシガシ倒していくのはなかなか爽快ではある。
しかし、その分迫力や絵的な派手さにかまけて大味なバランスになったために緊張感が薄れてしまった面もある。

全体的に実直な作りで、変則的なギミックで惑わされることは少ない。
逆を言うと、全体的に難易度が落ちていると言える。
仕掛けを解く時にも、その親切さから64版ほど頭を使う機会が減り、サクサク進める反面物足りなさもある。
結果的に遊びやすくなったのも確かではある。

本作で新たな試みとして、フィールドマップの殆どは海であり、
プレイヤーは帆船に乗り、大海原を航海しながら目的地の小島を転々とする
ちょっと珍しいスタイルになっている。
これは、概念が分かり辛く、敷居を引き上げる要因となったように思うが、目新しい向きもある。
ただ、全体像が把握しづらく、もっとプレイヤーに情報を与えても良かった気がする。
かなりマップが広く、そこを従来作のようにぞうきんがけというのは負担が大きい。
その分、サブイベントもかなりの量ちりばめられており、相変わらず探索が面白い。
少々問題点もあるが、やはり天下のゼルダシリーズだと実感出来る。

ストーリーの比重が今まで以上に大きく、ゼルダにしてはイベント挿入も多い。
そして基本的に、目的を指示されて言われたとおりに行動する誘導性の強い構成である。
だが、同時にやらなければならないサブイベントも多数用意されており、それを片っ端から探すという能動性も見せる。
ゼルダは元々能動性の強いシリーズであるが、本作の場合、枝葉と本筋の距離が褒められた物では無く、
クリアのために枝葉の要素を通り抜けなければならないというのはストレスになる。

推測するに、海の探索(宝のサルベージなど)を楽しませるために用意した余興のつもりだったのかもしれない。
しかしである、そこまで手取り足取り楽しませる必要も無い。なんだかあざといのだ。
クリアのためのノルマに組み込まれると、作業感が一層増大してしまう。やりたくないのにやらされるからだ。

ゼルダの伝説といえばダンジョンではあるが、本作ではストーリーやイベントの要素が強く、
ダンジョンの数、分量ともに少し物足りないように思う。
そのぶん、一つ一つの質が高いのではあるが、親切設計ゆえに少々緩すぎるのではないか?と感じられる。
ひいては、仕掛けを解かされている、やらされている感を受けてしまうところもあった。
全体的にがっちり丁寧に作られた弊害か、考える楽しさや自分自身の力で探索した発見したという自由度も薄れている気もする。
勿論これは、ゼルダにしてはという但し書きが付く。
どうも、イベントムービーの長さなどと相まって、用意された一本道を歩かされている印象を強く持ってしまった。

本作も、トゥーンシェードという新しい描写法を使い、鮮やかな世界、表情豊かなキャラ、やわらかいグラフィックと
64版をさらに突き詰めた、遊びやすさと評価出来る点も多い。
しかし、それは「時のオカリナ」の土台の上から作られた物であって、それ以上の物があったかというと微妙である。
とても丁寧に丁重に作られた努力の跡はひしひしと感じるゲームなのではあるが、
残念なことに、内容的に光る何かが見あたらなかった。そこが惜しいところであった。
ただ、自由を奪ったという点から遊びやすくなったというのも事実。
誤解の無いように言っておくが、自由度が低いから駄目だという意味ではなく、遊びやすさとはある意味表裏一体の物である。
更に言うと、これもこれで高い完成度で出来上がっていて面白くはある。

間口が広く遊びやすくなったが、シリーズとしての進化は無い。





[2004/03/16-2005/04/11]
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