ゼルダの伝説 スカイウォードソード


対応機種Wii
発売日2011/11/23
価格6800円
発売元任天堂

(c)2011 Nintendo
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Wiiモーションプラスを使った全く新しい「ゼルダの伝説」。
丁度シリーズ誕生から25年ということもあって、大々的なキャンペーンも併せて展開された。

ゲームを遊ぶためにはWiiモーションプラス(あるいは機能を内蔵したWiiリモコンプラス)が必要。
このWiiモーションプラスは、2009年6月に「Wii Sports Resort」に同梱する形で登場したが、ユーザーにもメーカーにも製品の魅力が伝わらなかったのか対応ソフトは少なく、専用ソフトは無いに等しい状態であった。
そもそもWii自体、ハード初期から中期こそ、Wiiリモコンの機能を駆使した意欲的なソフトが発売されていたが、新鮮味が薄れるにつれて次第に持て余すようになり、結局はクラシックコントローラを軸に据えたゲームばかりになってしまった。

そんななか、Wiiリモコンの機能をフル活用して作られたのがこの「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」である。

2010年のE3で初披露されたが、会場の盛り上がりと反対に据え置き向けのゼルダで初めて全く期待出来なかったのだった。

Wiiモーションプラスによって、リモコンを振った方向に剣先が動きます!!などと言われても、はっきり言って今更感が強かったし、グラフィックも衝撃をうけるようなものがなかった。
それに、すでにゼルダというだけで、無条件に期待感を持てる時代でもなくなった。前作(トワイライトプリンセス)から5年。その5年でゲームは飛躍的に進歩した。
ゼルダの方法論をパクったアクションアドベンチャーゲームは他にも出ており、ゼルダの伝説という名前だけでアドバンテージになる時代はもう終わったのである。

なにより、事前情報を見ても不安は増すばかりであった。
何やら今回のゼルダはやたら開発に力が入っているらしい。必要以上に力みすぎると迷走して失敗するケースを多く見ている身としては、逆に心配になってしまったほどだ。

特に、コマーシャル。たまたま見ただけでしっかり見たわけではないが、イベントムービーが流れてて栗山千明がそれについて語っているものだった。それを見て今度のゼルダはムービー、ストーリー押しなのかと感じてしまった。
もう「ゲームでしか味わえない感動がある」のキャッチフレーズを使うのはやめてしまったのか。64の「時のオカリナ」の時のものだが、ずっと使い続けてもいいぐらいの名言だと思うのだが?

ついでに言うと、ニンテンドウ64版「時のオカリナ」のコマーシャルは当時衝撃的なものだった。
有名人が部屋でゲームをやっている姿を流してるだけだが、あの頃はテレビに出てる人がゲームをやってる姿って珍しかったから、「アレは本当にゲームやってるのか!?」なんて言う疑問さえ飛び出していたほどだ(差し込みのゲーム映像はさすがに合うシーンを後からスタッフがやったやつを入れたと思うけど)。
なにより、ゲームにのめり込んでるリアクションが自然すぎて、コマーシャル流れるたびに「早く遊びてえ!!」なんて思ったものだ。ゲームもコマーシャルも斬新で新しかった、ああいう時代はもう二度と来ないだろう。

タレントにゲームやらせる手法はすっかり一般化してしまったが、今のタレントCMはダメだ。カメラを意識してるのか、とにかく反応すればいい、喋ればいい、間を埋めればいいって言う努力が、かえって不自然さを感じさせる。
グルメ番組で奇を衒ったコメントを言わせようと必死に考えさせる風潮に似ている。ゲームをアピールするってそういうやり方とはまた違うと思うんだけど。

コマーシャルにまでケチつけんのかよ!って言われるかもしれないが、今年のゼルダ関係のCMはひどいと感じたから書いた。
特に「時のオカリナ3D」の中川翔子のCM。ただただうるさい。お前は水野晴郎かと突っ込みたくなったものだ。

そんな前代未聞の期待値の低さとなったゼルダだったが、肝心の中身はというと、個々の要素にケチをつけたくなる内容ではあるが、総合的にはしっかり面白い、なんとも困ったシロモノになっている。

しかし最初に断っておきたい。まず、Wiiモーションプラスを使った操作性についてである。
これは、このゲームの肝となる部分で、結論から書くと、モーションセンサーを重視したゲームデザインによって、はっきり好き嫌いの分かれるゲームとなっただろう。

なにせ、単に剣を振って攻撃するという操作一つするにしても、いちいちリモコンを振らなければならない。それどころか、振る角度まで気にしなければならない。
剣攻撃のバリエーションは非常に多く、かいつまんで挙げるだけでも、縦に切るか横に切るか、斜めに切るか、振り上げるか振り下ろすか、左から切るか右から切るか、突き刺すか、とこれだけある。
敵によって有効な攻撃を使い分けなければならないため、ただ敵の動きに合わせて攻撃ボタンを繰り出せば倒せていた従来のものと異なり、自由度が高まったことで必然的に難しくなっている。

また、他機種のゲームであれば単にボタンを押すだけ、スティックを動かすだけの操作も、リモコンを傾けたり振ったりと、従来のゲームと操作方法がかなり異なっている。
Wiiリモコン+モーションプラス+ヌンチャクというボタン数の少ない入力デバイスだが、操作性に関してはかなり色々なことが出来る、複雑で扱いの難しい(大変な)ものになっていて、シリーズ経験者であっても手こずるレベルと言える。
勿論これを従来のコントローラーで操作させようとすると、煩雑なものになっただろうことは言うまでもない(剣攻撃は今までスティック操作とボタンの組み合わせで出していたのだし)。

このデバイスの致命的な欠点はただ1つ。アナログスティックが1つしかないので、カメラ操作ができないことだ。Zボタンで後ろに回り込ませることができるが、さすがに不便だ。

このように、このゲームはモーションプラスありきのゲームデザインであり、言い換えれば、人を選ぶ思い切った作りとも言える。今までモーションプラス専用の大作ゲームソフトが中々出て来なかったのも納得が行くというものだ。
ここまでやらないと、モーションプラス専用にする必要性がないからである。

だが、贅沢を言わせてもらえば、Wiiのロンチ時点でこのクオリティを出して欲しかった。それは無理だとしても、せめて1,2年早く、Wiiモーションプラスと同時発売でもちょうどいいぐらいだ。ちょっと完成が遅すぎた感がある。
少なくとも「ゼルダの伝説」というシリーズは、それぐらい強烈なパワーを持った作品であったはずだ。「時のオカリナ」はCD-ROM全盛期にマスクROMであのボリューム&クオリティを叩き出して驚きを与えたし、「風のタクト」も(2002としては)トゥーンシェードのグラフィックは目新しかった。

次のゼルダはどのようなものになるかはわからないが、少なくともこういう体感型要素を追求していくのは間違い無いと思われる。ニンテンドーDSのゼルダでも意固地にタッチペン操作を貫き通していたし。

グラフィックは、リアルすぎずアニメすぎずでバランスが取れていて良い。これまでがある意味両極端過ぎたとも言える。ゲーム的な記号(オブジェクト等)も違和感なく溶け込んでいる。今後ゼルダシリーズはこのグラフィックを踏襲していくんじゃないかと思う。

ゲーム構成、ストーリー、ゲームバランスについて。
ストーリーは、ゼルダということもあって、先にダンジョンやギミックありきで作っていると思うが、それを加味しても、なんだかすっきりしない、しっくりこない出来上がりである。
このシリーズに感動的なシナリオとかそういう話を求めているわけではない。一本筋のがっしり通った使命感に乏しい(弱い)節があり、かつ、ゲームありきでお話が構成されてるので、物語を進展させようとすると、足止め感の強い目的を課せられて、イマイチ気分が盛り上がらない。
なんというか、この辺をネタバレなく表現するのは非常に難しいのだが、同じマップが何度か舞台になることが前提にあってシナリオを組まれているんだけど、そのへんの動機の付け方が弱いというか、面白くないのだ。
同じマップを何度か訪れるというのは、言ってみれば使いまわしだが、使い回しであっても、ゲーム自体はマンネリにならないよう工夫が凝らされていて、ちゃんと面白かったので、なんとなくダラダラしちゃってる原因はストーリーにあると思う。

ゲームバランスは、やはりチャンバラ戦闘に慣れるまでが相当つらいだろう。最初のダンジョンで、この基本的操作に慣れさせるために敢えて強力なボスを置いたりしたのだろうが、そういった意味でもゲームに慣れてない、体力も低い序盤で、この体感的操作に辛抱強くついていけるかいけないかで、受け入れられるか受け入れられないかの分かれ目になるだろう。
その壁を超えてしまうと、だいぶ面白くなってくる。それでも思ったとおりに動かないことが結構多いのがもどかしいけど。

実は、このプレイ感覚に非常に似たゲームを思い出した。それは、ニンテンドウ64「スーパーマリオ64」だ。まだアナログスティックで3D空間を自在に操れるゲームが他になく、スティック操作に慣れてないので、まっすぐ動かすことすらおぼつかなかった(今では信じられない話だろうが)。
これが不思議なもので、ゲームを進めるにつれて自然と上達し、完全クリアする頃には壁ジャンプも軽々と出せるぐらいまで上手に動かせるようになるのだ。

マリオ64のケースは、ゲーム機の進化にともなってアナログスティック操作が標準となった。しかし、今回のケースは、今後果たしてスタンダードとなるのかどうか?標準となった場合、体感型ゲームの先駆けになるだろうが、そうでなかった場合、異端のゲームとして語られることになる。
また、クリアするだけでも結構な長さのゲームだが、前述のマリオ64ほど上達感がなかったのは残念といえる。

フィールドマップは「風のタクト」方式に近い。「風のタクト」では海だったように、今度は空が舞台となっている。真ん中に拠点となる町があって、ところどころに小さな浮島が点在している。ゲームを進めると雲の封印が解けて、もう一つの舞台である大地に降り立つことができるポイントが出現する。この空を鳥に乗って冒険する。
ずいぶんと強引な世界観だが、これはWiiモーションプラスを使わせるために作り上げたものといっていいだろう。大空を鳥に乗って滑空するときの操作は全てモーションセンサーを使って行う。
この空を移動するパートは端的に言うと面倒くさいが、ゲーム的には新鮮でいいアクセントになってると思う。「風のタクト」ほどわずらわしさを感じさせないようとても気をつかっている。気を引かせるために宝箱が出現したら地図に表示させるようにしたりして、かなり工夫している印象だ。なにより空をとんでいるという感覚は単純に気持ちいい。

ダンジョンやマップ構成、ギミックなどについて。
どうやら今回、新しい風を入れたかったらしく、携帯機でゼルダを開発していた人間をだいぶ取り入れてるようだ。というかもっと具体的に書くと、元カプコンでゲームボーイカラー「ふしぎの木の実」、ゲームボーイアドバンス「ふしぎのぼうし」作ってた連中。
それは構わないのだが、携帯機のゼルダはどれも、今ひとつダンジョンの構造がワンパターンで物足りなかったものだった。携帯ゲーム機ってことでわざとそうしてるとも思って甘く見てたのだが。
今作では、その伝統が悪い意味で受け継がれてしまった印象がある。

一見すると入り組んでるように見えて、露骨にショートカット出来る道が必ず作られているので、先の展開が予測しやすく、なんとなく道なりに進んでいれば自然と解けてしまう。また、謎解きのヒントが石版に頼りがち、解法に捻りが足りないなど。
携帯機のゼルダチームは、マップ制作に上記のような癖があり、パターン化しているために、解いていてもどうにも歯ごたえが足りないのである。
ダンジョンも、あまり大きくなく、そのかわり仕掛けの濃さで勝負している感じで、入り組んだ構造だったり足りない鍵はどこにあるのだろう?という迷わせ方ではない。
分量的には少々物足りなさを感じたが、そのぶんギミックの作りこみが素晴らしく良く出来ており、先ほど指摘した物足りなさを帳消しにするほどの面白さであふれている。この辺の質の高さがゼルダたるゆえんだと思う。

システム的な細かい不満点を述べる。
素材アイテムを取った時、入手済みのものでも起動するたびにいちいち取得した演出が入ってゲームが止まってしまう。「トワイライトプリンセス」でもルピー入手時に起こしていた問題点をそのまま受け継いでいる(ちなみにルピーに関しては前作で相当言われたのか対策済み)。
こういう基本的な設計部分でのチェックミスは、開発規模が大きくなればなるほど起こりやすい。何とかして欲しい。

盾に耐久値が付いており、0になると破損してなくなってしまう(耐久値は修理することで回復させることは出来る)。おまけに、万能な盾というものが存在しない(木の盾は炎に弱い等)ので使い勝手が悪い。結局ほとんど全く盾を装備することなくクリアーしてしまった。

冒険ポーチという概念が追加され、盾や空き瓶といった汎用的なアイテムは持っていける数に制限が付けられている。爆弾袋など(初期状態から)持てる数を拡張させるアイテムもポーチに入れないと意味をなさない。
ポーチに入れられる数が少なく、プレイスタイルや目的に応じて取り替えて欲しい意図で作られたのだと思うが、あまり面白く無い。

他にも、素材を集めてアイテムを強化したり薬を合成したりといった新しい要素を積極的に取り入れようと言う努力は伝わってくるのだが、どれもわずらわしさだけが目立ってしまっているのが残念な所だ。

後は、装備しているアイテムを切り替えるとき、時間が止まらなくなったのがマニアックになってしまった印象だ。時間を止めずに装備を切り替えるクイック機能はあってもいいと思うが、従来通りメニューを開いてじっくり切り替えるモードも用意しておくべきだ。
じっさい、こういう仕様になったことで極端に困るといった場面はなかったのでさしたる不都合ではないのだが、気になったので指摘しておく。

まったく期待出来なかったゲームだったが、想像以上に面白くて正直驚いている。レビューでは文句ばかりたれ流しているが、個々の要素については粗が気になるゲームなのだが、遊んでみるとしっかりと面白い。
ただ、ゲームの作りが、全体的にマニアックに寄りすぎている印象で、この内容で楽しいと感じる人(ついてこれる人)がどれぐらいいるのか心配になってしまうほどだ。
特に、アクションが多彩になって、がんばりゲージを消費してダッシュできたり、色々と利便性が高まってる反面、それを使いこなせる人も限られてそうで、人を選ぶストイックなゲームだと強く感じた。
もともと、ゼルダの伝説とはそういうゲームだったのだけど。そこで結論。

強いインパクトを残すほどのものはないが、根性で作り上げた力作。ゲーム好きを自称するなら遊べ!!





[2011/11/27]
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