るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-


掲載雑誌週刊少年ジャンプ
巻数全28巻
作者和月伸宏
発売元集英社


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明治維新前後の激動の日本を舞台に繰り広げる異色の剣術バトル漫画。
1990年代後半のジャンプの屋台骨ともなった作品で、フジテレビでアニメ化されるなど、沢山の支持を得た。

絵柄やテイストがやや少女漫画風で連載開始当初のジャンプとしてはまさに異端だったと思う。
しかしそれが逆に人気の火付け役として一役買ったのも事実だ。
ただ、本人もそこを自覚しているのか、メインキャラがやたら美男子揃いにしてしまった(なってしまった)のはやりすぎである。

話は主に悪役の中の悪役であり超人的な強さを誇る敵を倒していく「京都編」と、主人公の過去の出来事を軸に添えた「人誅編」の2つ。
これを全28巻で描いているのだが、ちとくどすぎるきらいがある。もっと短くまとめられなかったのかと思う。
他の漫画であれば、もう2つ3つぐらい別のエピソードを突っ込んでいる量である。
その分、丹念に話が書かれており、読み応えはあるが、長さの割にバリエーションに乏しい。
余計な設定が増えない分、安定して読めるが、意外性が無く面白くないのだ。
そこがこの作品の長所でもあり短所でもある。また、ジャンプの王道バトル漫画でありながら史実に出来るだけ忠実に作ろうという意図は評価出来る。

ストーリーにしろバトルにしろ一定水準はクリアしており文句の付け所はこれといって無い。
強いて言えば、両方とも描こうとして節々でその中途半端さが見受けられた点を挙げる。
バトルをやろうとすればストーリーに引っ張られ、ストーリーをやろうとすればバトルに引っ張られる感じだ。
バトル漫画というジャンルに拘りすぎて、なんとか両立させようと言う欲張りがたびたび作品の出来を落としている。

漫画の内容にあまり関わってこないが、明治前後の日本史の解説もところどころに入っているのだが、
どうも、入れ方が下手くそなのか頭に入りにくかった。間の悪い時に挿入されたりして混乱することもあったほどだ。
こういうのは漫画であっても、やりようによっては上手に読者に理解させることが出来るのが他の作品で証明されているので、頑張って欲しかった。

一番脂がのっているのはやはり「京都編」のクライマックスであろう。
「人誅編」は、緊迫感が足りず、また妙に大団円や王道路線に固執した展開が強く見られ、シチュエーションの下手さなどと相まっていまいち盛り上がらない。
長年連載が続くと、カンやキレが鈍るのは、まあしょうがない。

少々手厳しいことも書いたが、明治時代の雰囲気が上手く出ていたりとなかなか良くできた漫画である。
ただ、個人的にはもうちょっとストーリー寄りの構成にして心に残るような描写ももっと欲しかった。

作者の拘りと、人を選ばないわかりやすさがしっかり両立した作品。





[2005/08/07]
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