ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて


対応機種プレイステーション4
発売日2017/07/29
価格8980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2017 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / SUGIYAMA KOBO
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ニンテンドー3DSとプレイステーション4という、前代未聞のマルチプラットフォームで発売された「ドラゴンクエスト11」。
いわゆる、性能差のあるゲーム機で同名タイトルを出す場合取られる方法として、機種ごとにゲーム内容をゲーム機の性能に合わせて開発という形ではなく、なるべく基本的なゲーム内容に差異が出ないよう配慮が取られた。
それでいて、各プラットフォームの性能を活かした、例えばPS4であれば、勿論綺麗なグラフィックだったり、3DSであれば、豊富なモード数(2Dで遊ぶか3Dで遊ぶか)、独自イベントの導入で、差別化を図っている。

このレビュー項目では、プレイステーション4版を取り上げる。

全般的なゲームの傾向として、オンラインゲームとなった前作「ドラゴンクエスト10」をベースに開発しているところが目に付く。
それはシステム的なところだけでなく、登場スキルなどゲームバランスに関わる部分、町にいるNPCのモデリングなど、色んな要素を含めて、ほとんどこれオフライン版ドラクエ10と言ってもいいんじゃね?というぐらい、驚くほど踏襲したものとなっている。
(ここまで踏襲したのだから、DQ9にもあった、あまり使われることのなかった「しぐさ」も、入れておいてほしかったというのは贅沢な注文か)

ドラクエ10を遊んだ層からすれば、「ここまで一緒でいいのか?でも続編だしね」という感じで新作感はゼロだが、
ドラクエ10はオンラインゲームだから、遊ばないといった層が大勢なはずである。

そういった、10を飛ばした層からしてみれば、この内容でも十分、目新しく感じられることだろう。

逆に、ドラクエ10がオンラインゲームになったから、アレは別物と捨て去って、全く新しくインターフェイスを設計し直したりするよりは、
ドラクエ10で良かった部分を、どんどん取り込んでいくほうが、親しみが持てるはずである。
ドラクエ11を遊んで、ドラクエ10に入ったときも、違和感なく入っていける。
(もはや、ここまで踏襲していると、ドラクエ10の宣伝のために作っているのではないか?という疑念すら出てしまうほどだ)

ドラクエは8で、本作のような完全3Dポリゴンフィールドを採用したが、この方式を採用した作品は、ナンバリングだと、まだ8、オンラインの10、そして本作の11と、実はまだ歴史が浅い(スピンオフや外伝は除く)。
であれば、なるべくシステムやインターフェイスは変更せず、同一のプレイ感覚を提供したほうが馴染みやすいというのは言うまでもない。

なにより、MMORPGとなってしまったドラクエ10が、このようにオフラインのRPGでも、インターフェイスを使いまわせる作りにしたことが、驚異的というほかない。

具体的なゲーム内容についてだが、さすがドラクエという冠がふさわしい作りで、細かなストレスになりそうな部分は徹底排除されているし、引っかかるようなところもなく流れるようにゲームが進む。
戦闘はシンボルエンカウントで、かなり敵を避けやすく作ってあるし、ボスも全体的にそれほど嫌らしいものがなく、苦労するところはない。
そんなので楽しいのかという熟練ゲーマーの声もあるだろうが、そういった遊びはクエスト攻略や、「せんれき」の図鑑埋め、鍛冶職人の武器生産などで十分楽しめるように作ってある。
ゆとりを持ってゲームが進められるように作られているのは、偶然ではない、意図的なもので間違いないだろう。

ただ、ゲーム全体の流れとしては、淡々としすぎており単調といった印象は拭えない。
ストーリーは勇者だ、魔王だ、とちょっと笑ってしまいそうになるぐらい直球で王道すぎるぐらい王道だ。
また戦闘においても、特定の特技が極端に強くて、結果的に決まりきった戦術に頼り切りになるなど、普通にゲームを進めているだけでは、物足りなさが鼻につくところがある。

「ドラクエ10」と大きく異なる部分としては、バトルシーンが挙げられる。
ドラクエ10では、リアルタイムバトルで、敵と味方に接触判定があり、いわゆる相撲をして、敵の攻撃を防ぐなどの、独特なバトルシステムが採用されていた。

本作では、素早い順にターンが回ってくるセミリアルタイムのオーソドックスなターン制バトルを採用している。何気にセミリアルタイム制はドラクエシリーズでは初だったはずである。

ドラクエ10のようにバトルフィールド内を好きに移動出来るフリー移動バトルというモードが用意されているが、ゲーム的にはほとんど意味がない。
敵キャラや味方キャラを好きなアングルでスクショ撮るといった使い方を想定したものなのだろう。

これにはがっかり、と言いたい所だが、ドラクエ10のバトルをそのまま採用してしまうと、ドラクエ10の存在意義が薄れてしまう。
それに、下手に敷居の高いバトルシステムを採用するよりかは、いつものドラクエのターン制バトルのほうが、断然間口も広く優れているというのは言うまでもない。

戦闘シーンで気になった点としては、敵を選ぶときのカーソル初期位置が、一番近い敵を指しているらしく、キャラによってカーソル初期位置が変わってしまうこと。
全体攻撃を食らってしまったときのダメージが見づらいこと、ぐらい。

他に気になった点としては、フィールドの中でも、町のマップが広い上に複雑で、こういう3Dのゲームに慣れてない人にとっては辛い可能性がある。
一方、ダンジョンは、かなり気が使われていて、ほとんど一本道といっていいぐらい単純化されている。
町マップも、それなりに気を使った構造にはなっているものの、入り組んだ構造になっていて、物陰も多く、探索するのに時間がかかりがちなのが辛かった。

しょうがないことなのだが、エリアチェンジのロード時間が、長め。
エリアによって軽かったり、重かったり、まちまちなのだが、総じて、データロードしたときは、結構長く待たされる。
データ量が多いのだから、この辺はどう考えても仕方のないことなのだが。

全体的に、誰にでも楽しめるRPGを前提に作られているため、ヘビーゲーマーには物足りない仕様が目立つ作りかもしれない。
しかし今の時代、そういうふうなRPGを作れるのも、周りを見渡せばドラクエぐらいしかなくなってしまったように思う。
確かに、「ドラゴンクエストはもっと面白かったはずだ」と言いたくなる一面もある。だが、それはドラクエという様式美に慣れ親しんだからこそ、生まれる感想なのではないかと思う。
もうドラクエも11作目である。変わらぬ面白さを長年提供し続けるのは難しい。そこで結論。

変わらぬ安定感がそこにある。それをよく感じるか悪く感じるかは人による





[2017/08/08]
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