ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城


対応機種プレイステーション4
発売日2015/02/26
価格7800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2015 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / SUGIYAMA KOBO / KOEI TECMO GAMES
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いわゆる「ドラクエ無双」。
パチモンではなく、無双シリーズの開発チーム「オメガフォース」制作による、贅沢なコラボレーション作品だ。

ドラクエが無双化するなんて、ナンセンスだし安直だという声も大きいだろうと思われる。
だが、プレイしてみると、ドラクエシリーズとしての違和感も少ないし、困ったことにしっかり面白い。

なにせ、無双シリーズは、コーエーテクモゲームス(旧コーエー)の看板タイトルであり、15年続く歴史ある人気シリーズだ。
「ガンダム無双」を皮切りに他社とのコラボ作品の実績もあり、最近では「ゼルダ無双」が記憶に新しい。

画面上に群がる味方と敵がぶつかり合う、局地戦をまるごとアクションゲーム化するという1ジャンルを築き上げたのが、この無双シリーズだ。

無双シリーズお馴染みの爽快アクションでありながら、目の前の敵をただ倒すだけの作業にならないような工夫が随所に見られる。
多くのステージは、拠点を守りながら敵の侵攻を食い止めるという内容になっており、ただ適当に敵を倒してれば良いという作りにはなってない。

地形や仕掛けを駆使して敵の侵攻を妨害しつつ、敵が湧き出てくる地点へ攻める。
また、倒したモンスターが味方になって戦ってくれるモンスターコインというシステムがあり、この戦力を上手く使って効率よく敵を倒していくといった戦略性も求められる。

ドラクエのアクションゲームは僅かながら出ているが、ここまで本格的なのは初めてじゃないかと思う。
一応RPGのシリーズなので、1ボタンだけで適切なコンボ攻撃を出してくれる「簡単操作」モードが搭載される配慮があったりするが、それでも、モンスターコインを使うタイミングや、×ボタンを押しながら発動する魔法、ホイミストーンなど。
コントローラーのボタンをフルに使う作りとなっており、それなりに忙しい。

個人的には、もっとのんびり遊べる作りでも良かったかなと感じた。
広い野外フィールドや入り組んだダンジョンを探索しながら、要所要所で敵が出現して襲いかかってくるなど、冒険や探検する楽しさを重視しても良かったように思う。
ここまで律儀に無双っぽくしなくても...という感じだ。
そういう方向も当然考えたのだろうが、他社の大型タイトルということもあるし、あんまり危険な橋を渡るような真似は厳しかったんだろう。

ゲーム後半以降は、アクションゲームとしても骨のある難易度になってきて、反射神経の腕だけでなく、有利に進めるために頭を使わなければいけないぐらいの歯ごたえあるチューニングになっている。
それでも、大量に用意された寄り道要素があるので、クエストをこなしたり、装備品を集めたりしてると、自然とレベルも上がって強くなるので、先に進めるのが楽になる。

無双シリーズは毎年何本も出ているので、食傷気味という人も多いと思われる。
この、「ドラゴンクエストヒーローズ」も、いわゆる量産型と言う範疇を抜けない安全牌な出来栄えといった感じではある。
ストーリーは、一応本家ドラクエスタッフが担当しているようだが、どことなくテキストが別物っぽかったり、ご都合主義満載で中身が無かったりなど。
厳しい書き方だが、それでもドラクエという名が付いているだけあって、一定水準以上のクオリティではある。

本作は、ドラクエという版権を扱ったゲームとして考えると、細かいところにもこだわりがあって、丁寧な作りだと感じた。
攻撃を当てるとダメージがポップアップされたり、スクルトやバイキルトなどの補助魔法をかけて戦う所、呪文を唱えた時の視覚的な表現。
ターン制RPGを3Dアクションゲームとして再現(表現)しているというのが、実は無双シリーズとしても初なのではないかと思う。
非常に細かい部分かもしれないが、こういうところをしっかりこだわっているから、ドラクエらしさを感じながら楽しく遊ぶことが出来るのではないだろうか。

クエストを受注する流れや、ドラクエ10の郵便局まで登場させるのは少々やりすぎかと思ったが(クエストは受注制限なしで、かつ、やれるなら自動受注で良いぐらいだし、手紙も一々受け取るのがぶっちゃけ面倒くさい)、
武器防具の値段や、お金の貯まり方にいたるまで、実にドラクエらしいバランスになっており、性能の良い装備に買い換えたいけど、お金がちょっと足りないという作りが絶妙でにくい。
なんでもかんでもドラクエを再現したというわけではなく、ゲームオーバー時に持ち金が半分に減らされるペナルティは今作では鬱陶しいだけだと判断されたのか排除されている。
これは良い判断だと感じた。

一方で、不満点や、不満というほどではないがちょっと気になった点を述べて終わる。

グラフィックは、ドラクエ8以降トゥーンシェードを基本としていたが、今作ではクレイアニメのような質感になっている。
プレイ中は思ったほどテクスチャーの違いに違和感はなく、十分馴染めたので特に問題はない。
そもそも、ドラクエシリーズ自体、トゥーンシェードでなければならないという絶対のこだわりはないので、雰囲気的なものが出せていればそれで十分だろう。

主人公の扱いや、登場キャラクターたちにボイスが当たっていることについて。
個人的には全く気にならなかったのだが、ドラクエシリーズ的には、声優のボイスが入るというのは結構衝撃的なことのようだ。
初めて登場人物に声を付けたのはWii「ドラゴンクエストソード」で、この時は俳優を多く使っていた。
今回は、主人公格のオリジナルキャラ2人は、敢えて声優ではなく俳優を起用しているが、それ以外はほとんど有名声優が担当している。
ここまでやったのなら、無理に俳優に固執せず、本業の声優か、もしくは同等の力量を持った人選で良かった気もする。
それから、誰もが言うと思うが、アリーナ役の中川翔子は、擁護のしようがないというか、まったく意図が読めなかった。

登場キャラに声が付くということに、ドラクエがやるべきことでないという熱心なシリーズファンの声や心境がわからなくもない。
それも、過去作品の人気キャラクターに、ボイスアクターが付いているのだからなおさらだ。
だが、もうドラクエシリーズであっても、敢えて声を入れないということに執着する時代でもないだろう。

確かに、想像力に任せてきた作風を崩してしまうのかといった言い分もあるだろう。
声を入れたほうが盛り上がって面白くなるなら入れるべきだし、かといって全部フルボイスにしてもかえってやかましくなったり、テンポが削がれたりする。
この辺、このゲームでは、基本はテキストだが、イベントムービーや、バトル中の台詞はフルボイスとなっている。
ゲームをやっている間も、時間が止まらずイベントが発生して会話が始まるため、ゲームをやりながら吹き出しの台詞を読めというのも酷な話である。
そういった点を考えると、ボイスを導入するというのは、妥当な判断だったと言えないだろうか。

個人的には、いたストでドラクエキャラが出てくるようになってから、キャラクターがひとり歩きしていったこともあり、さらに今回声も付くようになって、かなり感動したというのが実直な感想だ。

そしてもう一つ、主人公が喋ることについて。ドラクエとしてはおそらく初めてだろう。
イベントムービーは当然ながら、ゲーム中でもガンガン喋る。しかもボイス付きで喋る!!
もはやドラクエというよりも、堀井雄二がメインで関わるゲームでは、主人公を喋らせないのは鉄の掟とも言うべき決まり事であった。
スクウェア「クロノトリガー」の開発に参加した時も、堀井氏の「主人公は喋らせないでね」という鶴の一声で、喋らない主人公が出来上がったぐらいである。
(当時スクウェアの作るRPGでは喋らない主人公は本当に稀だった)

今回はコーエーテクモゲームスが主導で開発してるからこういうことになったのだろうと思われがちだが、おそらく主人公も喋るように言ったのは堀井氏ではないかと思う。
主人公もキャラを立たせて物語にガンガン入り込まないと、シリーズ歴代キャラに埋没してしまうから、そうなると没入感を持たせるために主人公を無口にするとかそういう次元の話ではなくなってしまう。
L2ボタンで操作キャラを自由に変えられることもあり、主人公を魅力的に引き立てないと、ただの邪魔者になってしまうのだ。
この辺りは、バンダイナムコゲームス「テイルズオブザワールド レディアントマイソロジーシリーズ」での手痛い失敗例がある。
(主人公=プレイヤーで、台詞がなく無口なドラクエタイプだったが、いつの間にかシリーズの人気キャラ総出演が売りになっていき、外せない主人公キャラが邪魔者になっていった)

ここからは具体的な不満点となる。

キャラクターの性能について。
大体はイメージ通りのキャラ性能だったが、いくつか首を傾げるキャラがいた。
アリーナの分身拳が、ドラクエの武闘家のイメージと違っていたところと、クリフトが回復呪文を使えない点。
他にもイメージと異なるキャラはいるが、致命的に感じたのはこの2つぐらいだ。
どうも回復呪文をスキルに入れたくなかったらしく、代わりに主人公が「ホイミストーン」というものを持っていて、この「ホイミストーン」にホイミ、ベホイミ、ベホマの魔力を教会で入れてもらって使うという仕組みになっている。
ただ、HP回復するスキルを全く持たせてないわけでもなく、ゼシカにハッスルダンス(味方全員にHP回復)を持たせている。それならクリフトにもベホマラーを入れてほしいとは感じた。差別化したくて入れなかったのかもしれない。
プレイアブルキャラは、無双シリーズをやりこんでる人からすると少なく感じるかもしれないが、多ければ良いというわけではないので、こんなものだと思う。肝心なのは個性的なキャラ作りができているかではないだろうか。

カメラがプレイヤーに近いせいもあるのかもしれないが、エフェクトが過剰で派手過ぎる。
マップの作りにも問題があるのかもしれないが、敵が密集してたりすると、状況や現在位置がわかりにくくなって、迷うことが多数あった。

あと、マップは、3Dアクションゲームとしては決して狭くはない部類だが、ルーラストーンでワープできるシステムもあるのだし、もっと巨大なフィールドを舞台に遊びたかった。
おそらくそういう果てしない広さを持ったマップも考えたのだろうが、ひとまずドラクエとしては一作目だし、取っ付きの良さを優先していったのだろうとは思う。

歴代シリーズの色々なBGMが入っているのはわかるのだが、イマイチ使い方が軽い感じがした。とりあえず流しておけばいいという節があり、あまりありがたみを感じないというかBGMの使い方に面白みがなかったのが残念。
とはいえ、聞き覚えのあるサウンドが流れるだけでもそれなりに感動はするのだが。欲を言えば意外性が欲しかった。

色々書いてしまったが、とりあえずドラクエというキャラゲーとして考えれば及第点は軽く超えていて、楽しめるゲームだと思う。
物足りなかったり、細かいところでの不満は無視できないほどあるにはあるのだが、ドラクエの世界観で無双をやるというだけである程度の面白さが保証されているのだから、ずるい作品といえばずるい作品だ。

それにしても、錬金釜の強化合成やアクセサリ、郵便局の手紙や100体討伐のちいさなメダルなど、ちょっとドラクエ10ネタが多すぎな気が?
敵キャラクターのモーションや、バトル時の表現方法は間違いなくドラクエ10をお手本にしている。というかあれだけ視覚化した戦闘シーンをわざわざお手本にしない理由はない。

なかなか上手にドラクエを無双に移植したという感じで好感触。そこで結論。

ドラクエファンにこそ遊んで欲しい作品。





[2015/03/01]
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