ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2012/05/31
価格5490円
発売元スクウェアエニックス

(c)2012 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / KOICHI SUGIYAMA
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ゲームボーイで1998年に発売されたドラゴンクエストモンスターズシリーズ第一作「テリーのワンダーランド」。
これを「ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2」(正確にはプロフェッショナル版)のシステムエンジンを使ってフルリメイクした作品だ。

「ジョーカー2プロフェッショナル」を出した後、次回作はどうするのだろうと思っていたら、過去作のリメイクしてくるとは、なかなか上手く逃げたものだ。

プログラムてきにDS「ジョーカー2」の名残が見られる(流用しているのだろう)。もちろん上位機種の3DS用にグラフィックやインターフェイスなどが改良されてグレードアップしているが、
まだまだ所々DS臭さが残っていて、チャチい印象がある。ゲーム自体は洗練されていて文句の付け所がないだけに、見た目をもう少し凝って欲しかった。

メニュー処理は、ハード性能が上がったことで快適に仕上がっているのだが、まだ若干、レスポンスで引っかかりが見られる箇所がある。
それ以外に関しては、画面の解像度が上がったこともあり、見やすく快適になっている。

戦闘システムは、「ジョーカー2 プロフェッショナル」をベースに、プレイヤーの意見を取り入れ再調整しているっぽい。
また、ハードウェアの性能が向上したことで、3人パーティ制から4人パーティ制となり、戦略の自由度が格段に広がった。
これによって、1匹で2枠3枠取る巨大モンスターを、パーティメンバーに入れやすくなったことが大きな利点として挙げられる。

グラフィックは3DSのゲームとしてはもうちょっと頑張って欲しい気はするが、それなりに綺麗だし、イベントシーンも丁寧に描かれている。
収録モンスター数は600種類以上とボリュームも申し分なく、原作がゲームボーイ版ということで本編ストーリーに食い足りなさがあるものの、クリア後のお楽しみがサービス満点で、かなり遊べるように配慮されているのも特筆すべき点だ。

詳しいゲームシステムは「ジョーカー2」に準じているので、そちらのレビューを参照してもらいたいが、簡単に説明すると。
戦闘中に「スカウト」コマンドでモンスターを仲間にし、2匹のモンスターを配合してより強いモンスターを生み出し、これを繰り返して自分だけの最強のモンスターパーティを作る。いわゆるドラクエ版ポケモンのようなゲームだ(オリジナル版当時はそうやって嫌味で揶揄されたりもした)。

今回はリメイクにあたって最新作「ジョーカー2」のシステムに合わせて全面的に作り変えられ、フィールドは完全3Dポリゴン、シンボルエンカウント、いつでもセーブ&ルーラ(ワープ)が可能、「スカウト」コマンドで敵を仲間にする(GB版同様肉を使って仲間にすることも出来る)、
スキルポイントを割り振って特技を覚えさせるスキルシステム制度の採用等、GB版とはまったく別物のゲームになっている。

基本的にドラクエらしい手堅い作りで、非常に良く出来ているのだが、目に付いた不満点を述べる。

オリジナル(GB)版で冒険するダンジョンはハードスペックの制約もあり自動生成式のダンジョンだった。
原作の内容を尊重するという意味で、今作でも自動生成ダンジョンを採用しているのだろうが、システム的に自動生成を採用する意味が全くない。
ゲームボーイ版の時は2Dのドット型見下ろしタイプのフィールドだったので、簡単にバリエーションを持たせることができた。

しかし3DS版では、3Dのフィールドマップをいくつかつなげた形で自動生成してるので、見たことあるマップと遭遇することが非常に多く、探索していてかなりつまらない。
加えてシンボルエンカウントなので、敵との戦闘を簡単に回避できる。モンスターハウスを用意したり工夫は見られるんだけど、これでは自動生成式ダンジョンのメリットが全く活かせてない。

結局、落ちているアイテムを拾いながら見覚えのあるイマイチな構造のマップをダラダラと何フロアにもわたって降りていくという、単調で作業的なものとなる。
ただし、断っておきたいのは、3Dダンジョンマップの枚数自体は決して手を抜いているわけではなく、結構な量を作っているのだが、ランダム生成である以上、どう頑張っても同じマップに出会うことは避けられない。

贅沢を言わせてもらえば、どうせなら、ここまで今風にアレンジしまくったのだから、ダンジョンも固定式にして、旅の扉のモチーフに合わせたマップを作って欲しかった。
クリア後のおまけダンジョンの数も考えると、量的に無理があるのはわかってはいるのだが。

それなりにいい動きはしてくれるのだがAIが期待通りに動かないことがある。
対応策として、覚えている特技を使用させない機能が付けられている。これを駆使することで、たいていのことはカバーできると考えているのだろう。
スキルシステムによって、千差万別の性能を持ったモンスターが生まれてくるので、AIのアルゴリズムを完璧に制御するのは不可能とはいえ、最初からもっといい動きをしてくれないものかなあと思う。

他には、中古対策なのはわかるのだが、Wi-Fiにつながないと使えないお店があったり、「ジョーカー2」からモンスターを引き継ぐためにソフトに付いている配信コードを入力して専用アプリを別途ダウンロードしなければならないこと。
それ自体は正当な販売戦略だし、全く悪いことではないのだが、なんだかせこいなあと感じてしまう。前者はともかく後者は機能自体がなくてもほぼ問題なく遊ぶことは出来る。

ドラクエのナンバリングのリメイク作とは違って、オリジナル版を知っている人が懐かしむ目的でやるにしてはゲームの趣旨(システムの中身)が違いすぎているし、
かといって「ジョーカー」シリーズからやっている人からしたら、見たことあるような代わり映えしない要素ばかりで新鮮味に乏しい。
ドラクエの手堅い保守的な作りが悪い意味で目立ってしまっているのだ。

しかし、ゲーム自体は完成度が非常に高く、駄目なゲーム、遊べないゲームといった意味ではない。

最後に与太話になるが、オリジナル版「テリーのワンダーランド」が発売された時、ポケモン系育成対戦RPGとしては、対戦部分の作りこみが甘くて、
蓋を開けてみれば、一定の決まった戦法が確立してしまって、駆け引きの余地がなく、ドラクエという名前が付いていながらブームは一過性で終わってしまった。
3年後に同じくゲームボーイで続編が発売されたものの、相変わらずバトル部分は代わり映えがなく、発売時期の悪さ(GBAの発売と同時期にGBでの発売)も重なって、不発に終わった。少なくとも対戦で盛り上がった記憶はない。
そこから数年後、DSで「ジョーカー」を出して、対人戦も盛り上がるよう試行錯誤を繰り返してきて、ようやく完成形に達したという感じだ。

完成形に達したとはいえ、新作を出す以上なにかしらの変化は期待してしまうところである。
だが、今作はリメイクということもあって、シリーズとしてはやや足踏み感が否めなかったので、次は正真正銘の続編を出して正統進化した形を見せて欲しいところだ。そこで結論。

良くも悪くも手堅い作品。





[2012/06/03]
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