ドラゴンクエスト モンスターバトルロードビクトリー


対応機種Wii
発売日2010/07/15
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / KOICHI SUGIYAMA / Rocket Studio / Kai Graphics / EIGHTING
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アーケードで稼働しているカードゲームの最新バージョンを家庭用向けに再構成し、移植したものである。
筐体の中央にでかい剣が突き刺さっている特徴的なフォルムで、一度は目にしたことがあるだろう。

このゲームは、もう一作目が稼働してから3年にもなるが、人気シリーズといった印象はなく、ドラゴンクエストというネームバリューとマスコミ向けに話題づくりなどで細々と続いているシリーズと言う感じだ。
主だったターゲット層が低年齢層向けらしく、大手アミューズメント施設(まあ要するにゲームセンターだ)に置いてあることは少なく、デパートのゲームコーナーといった場所に重点的に配置されている。

しかし肝心の子供たちはというと、「ポケモン」「遊戯王」にがっちりシェアを奪われており、既に出来上がったそれらのシェアに切り込めたかというと、明確なデータは見ていないが、怪しい。少なくとも体感的に流行っているという気はしない。
まず今時の若い子はドラクエというよりはポケモンである。その時点で、国民的RPGドラゴンクエストとしての強みが通用しない。しかも、ゲーム内容を深く理解していこうとすると、ドラクエを知っていないと入り込みづらい側面がある。

商業的に成功した(シリーズが続いているということは成り立っているのだろう)のは、恐らく、ドラゴンクエストの強烈な神通力によって、一部の熱心な固定客を獲得したからではないだろうか。

ゲーム内容は詳細に語っていくと雑多になるのでおおまかに説明するが、いくつかのカードを筐体に読み込ませて、3vs3のカードバトルを行うというものだ。
小さな子供からでも楽しめるよう、システムは極力シンプルにまとめられており、難しい操作は必要としない。

いわゆる「遊戯王」などのトレーディングカードゲームと決定的に違うのは、ダメージや攻撃の命中率などはコンピューターが管理計算している点である。
従来のカードゲームは、卓上で遊ぶことを前提としており、円滑にバトルが進むよう、ランダム要素は廃され、暗算で即座に結果が予測できるようにしている。
このゲームは、そうではなく、戦闘シーンはコンピュータが処理していくので、番狂わせが起こりやすい。ゆえに、勝率が上がるデッキの組み合わせは確かに存在するが、絶対的な強さにはならない。

だが、逆にコンピュータゲームとしてみると、プレイヤーが介入できる余地が少なく、運頼みのバトルシステムがゲームとしては薄っぺらな印象を与え、底の浅い上辺だけのゲームに見えてしまう。
今回家庭用に移植したのだから、どちらかというと、(一応ジャンルはカードゲームとなっているのだが)こちら側からの評価をされてしまうだろう。

つまりデッキを組んで強いパーティを構築するところまではトレーディングカードゲームと同じだが、実際のバトルシーンは従来のドラゴンクエストのように遊ぶことが出来る。

ただし、ゲームセンターのゲームなので、長期戦にならない工夫が施されている。大概一回の戦闘は5分前後で絶対に終わるようになっている。これは、アーケードゲーム特有のワンプレイの時間を固定しインカムを管理するためである。
また、弱くて使えないというようなはっきりとした優劣は付けず、例えばスライムでも使える余地を残すなど、ゲームバランスを大きく崩したりインフレをおこさせないように頑張っている点は評価したいところだ。

戦闘システムは、場に出した3体のパーティのHPを合計したものが自分のHPになり、どちらかのHPが0になると決着がつく。
1体のキャラにつき、2つの攻撃コマンドが用意されているが、攻撃する相手を選べない。つまりは、弱点とする攻撃を対象とするターゲットに選ぶことは出来ないのだ。
コマンドを素早く入力したり、攻撃演出時にタイミングよくボタンを押すことで「ゆうき」ゲージが溜まっていく。これが満タンになると「とどめの一撃」を使えるようになる。
「とどめの一撃」は非常に強力で、これを食らってしまうとほぼ勝負がついてしまう。いかに「ゆうき」ゲージを相手より素早く貯めるか、相手に貯めさせないように「つばぜり合い」で妨害するかが鍵となる。
この止めの一撃が、ゲームを長期戦にさせず、常に一定のプレイ時間を維持させるよう組み込まれたシステムなのである。

こういうゲームは、勿論対人戦が面白い。さぞ筐体はネットワーク接続されており、対戦メインで遊べるのかと思いきや、ローカルのみであることに驚いた。どちらかというと、一人用で遊ぶ方がメインになっている。
コンピュータ相手に、似た展開になりやすいバトルを何度も繰り返し遊ぶ。ゲーム的には実につまらない。集めたカードをゲームに出してその演出を楽しむものなのだろうが、それならばどちらかというとカード集めを楽しむものになっているのではないだろうか。
これじゃあゲームとしては流行りにくい。

いっぽうWii版では、アーケード版のゲームモードのほかに、大会モードという、いわゆる家庭用向けに制作された物語に沿って遊ぶモードが追加されている。アーケードモードだけだと淡々とした戦闘の繰り返しで退屈になるからいれたのだろう。
舞台となる町は3Dフィールドで自由に歩き回ることができる!町を探索してNPCとバトルしたり、ちいさなメダルを探したり、様々なイベントが盛り込まれている本格派である!様々な大会を勝ち抜いて日本一のバトルマスターを目指す!
まあシナリオは有って無いに等しい。ドラクエシリーズは外伝作品でもこういう部分も抜かりなく作ってくるだけに、今回のクオリティはややがっかりだ。取ってつけたようなモードというのがありありと伝わってきてしまうだけに惜しい。

この手のゲームは、カードが集まってきてから面白くなってくるものだが、アーケード版同様に中盤辺りまでカードの集まりも悪いし、自由度も低い。ゲームセンターの場合はそうもいかないだろうが、もっと前半から色々カードを与えてくれても良かったと思う。
大会モードをクリアーしてからが本番とも言えるが、大体そこまでをスムーズにやっても15時間程度はかかる。それまでがとにかくだるい。転職クエストの条件も厳しく、作業を強要されるのも駄目だ。

職業レベルというものがあり、主人公がバトルで戦った職業を使い込んでいくと、経験値が手に入り、通常のロールプレイングゲームのようにレベルアップしていく。パラメーターも伸びていくが、このレベルが高いからといって劇的に有利になるというわけではない。
このレベルの要素は、単純に客離れを防ぐためにつけられたやり込み要素だろう。そして、より駆け引きが面白くなる上級職へ転職するための条件に関わっている。
いくらアーケードに準拠しているとはいえ、この職業レベルを高レベルまで上げなければ上級職へ転職できず、大会モードのゲームも進められないというのはいかがなものか?なんだかんだ言って、大会モードを最後まで遊ばないと、なかなか良いカードが手に入らないようになっているので、このへんの仕様は家庭用向けに変更を加えても良かったと思う。
はっきり言って、このゲームで最もつまらなかった部分がこの上級職につくまでであった。極端を言えば、そこにいたるまでに飽きられる可能性だってある。

極論になるが、今回のWii版は職業レベルをなくしても良かったんじゃないかとすら思う。Wi-Fiに対応し、対人戦の敷居も下がっていて、勿論オフラインでも対戦ができる。さっきも書いたが、この手のゲームの肝はやはり対人戦だろう。
そうなると、ただ客を囲い込むだけの要素でしか無いレベル制は、対戦するときの平等性という観点から見ると実に邪魔な要素になってくる。

ドラクエにしては、プログラム周りやメニューインターフェイスの出来がかなり悪い。アーケードのグラフィックを完全再現するために無理しちゃっているのか、ディスクアクセスが多く、また、画面の暗転時のロード時間がかなり長い。
メニュー周りの操作も、Wiiリモコンのポインティング操作を標準としたようなインターフェイスで、ボタン操作では違和感のある操作性で、かなり使いづらい。
ハードの使い方があまり上手じゃないのか、処理周りももたついており、テキパキと操作できない。デッキを組む際の所持カードを参照するのだが、処理が重くテンポが悪いので、ストレスが溜まってしまう。
ドラクエの冠を付けるには、全体的にクオリティが低い。

また、チュートリアルなどでクラシックコントローラを使っているのに、Wiiリモコンを使った操作でしか説明されないのは、不親切だと感じた。ゲームの入り口とも言える部分なので、一番気を使うべきところである。

ゲーム自体が面白いつまらない、合う合わないではなく、このゲーム自体好きにはなれなかった。
アーケードゲームだから多少は意識してやらなければならないことなのだが、全体的に演出過多で、色遣いも派手目なわりに、攻撃演出の最中に目押しを求めてきたりする。目が疲れるし、ゆっくりと遊べない。まず、自分の味方の攻撃をじっくりと見ることが出来ない。
派手さを重視しているので、ゲームのテンポも悪く、戦闘も単調で、繰り返しプレイしているとだんだんと疲れて飽きてくる。
そして決定的に好きになれなかった原因が、「とどめの一撃」に顕著に現れているが、全体の演出技巧が、近年のパチンコ・パチスロの確定演出を踏襲していて、あざとさが嫌というほど目に付くからである。
この度を超えた内容は、昔ながらのファンを喜ばせるスタッフの遊び心ではない。巧みに作り込まれた、客を引き込むための演出なのである。ここまで徹底してやられると、逆に冷めてしまう。
一歩間違えば、そのままパチンコ・パチスロに使えそうな映像である。

Wii版に限って言えば、ダウンロードコンテンツ商法を射程に入れて発売していることだ。まずドラゴンクエストというゲームの割に価格が安い。これは、今後配信していくダウンロードコンテンツで収益をあげることを見積もった上でのことである。
悪い売り方ではないが、昔からゲームを知っている人間にとってはどうしても良い印象を持てない。ましてWiiの場合、構造上、データ自体は全てディスクに入っていて、その解除キーをオンラインで購入する形となる。
アバターアイテムやカードぐらいならまだ許せる範囲だ。しかし、新たなストーリーモードをダウンロード販売で売っていくようだ。また、既にDSiウェアで実物のカードをカメラで取り込んでゲーム上に反映させるアプリケーションを200円で販売している。
こういう機能は、はっきり言って無料で本体に組み込んでほしいぐらいだ。
バンダイナムコ「アイドルマスター」が大成功したから、ウチもドラクエで稼ぎたいという気持ちは理解できる。しかし、このシリーズは安易にこの路線に傾倒して欲しくはなかった。DS「ドラゴンクエスト9」のように無料配信であればどれだけ違う印象を持ったことだろう。

ゲーム開始時に、自分の分身となるアバターキャラを作成し、着せ替えを楽しめる。だが、着せられる部位の自由度に乏しく、コスチュームも今ひとつ面白いものが無い。ダサいものが多い。もう少し頑張れなかったか。

バトル自体は単純明快に作ってあるが、それ以前のデッキを読み込ませたり、敵との相性や武具の組み合わせなど、戦略性の幅を広げた結果、覚えることが多くて、とっつきのよくないゲームである。
体裁上は小さい子供向けに作ってあるが、奥深い戦略というよりかはシステムが複雑で、仕組みを理解するだけで一苦労といった印象のほうが強い。

まだ見たことのない「とどめの一撃」やスペシャルカードの演出を視聴モードで見れてしまうのはマズイ。自力でカードを手に入れようという気持ちが薄れていく(いつでも見れるモードをつけること自体は評価出来る)。
自分は大会モードの進行に応じて増えていくこの視聴モードで一通りの演出を見てしまった段階で満足してしまった。

色々と悪く書いてしまったが、Wii版を発売した意義といえばやはり、対人戦が遊びやすくなった点だろう。カード集めも少々大変だが、懐具合を気にしなければいけなかったアーケード版に比べればだいぶやりやすくなったと思う。
やりすぎなぐらいのあざとさが少々気に障るが、ドラクエ好き同士が各々最強の組み合わせを持ち寄って対戦するさまは、「ドラゴンクエストモンスターズ」に通ずる駆け引きの楽しさがある。
寧ろ、アーケードゲームのアプローチの仕方が下手くそだったんじゃないか?とも思わせることも時折ある。しかし1Pプレイがもうちょっと楽しくなるような工夫が欲しかった。ドラクエシリーズはそういう面でかなり気を遣って作ってくるだけに残念でならない。そこで結論。

アーケード版を忠実に再現するのではなく、独自路線で作るべきだったのでは?





[2010/07/25]
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