ファイアーエムブレム 聖戦の系譜


対応機種スーパーファミコン
発売日1996/05/14
価格7500円
発売元任天堂

(c)1996 Nintendo
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親子二代に渡る壮大なスケールで描かれるストーリー性がメインテーマとして話題となった
シミュレーションRPG「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」である。

インターフェイス(画面構成や操作性)が凄く進歩していて、ステータス画面は綺麗に見やすく、必要な情報を適切なタイミングで教えてくれる。
フィールドでは移動範囲だけでなく、色を変えて攻撃範囲まで表示されている。他のSLGと比べ頭ひとつ抜けた完成度を発揮しているところが素晴らしい。

ゲームはというと、元々カップルネタの多いシリーズだったが、とうとう自分でくっつける相手を決めることができて、ゲーム後半にはその子供がユニットとして登場するシステムが組まれた。
キャラクター同士に好感度が設定されており、ゲーム中にキャラ同士を隣接させていると上がっていき、一定値を超えると会話イベントが見れるようになったりする。
ちゃんと組み合わせたユニットごとに、子孫のパラメータやスキル(特殊技能)が反映されており、組み合わせによって子孫のキャラクタに(システムの内容を考えれば当然なのだが)違いまで出る。

とてもじゃないが、一度のプレイですべての会話イベント、キャラクタを見ることは出来ず、人によって全く異なった展開を見せる。
なんとも、オタク心をくすぐる要素をぎっちりてんこ盛りにした、したたかさを見せるゲーム内容となっている。

ゲームクリア時には、プレイ技能を評価されたり、一度クリアするとコンピュータのAIルーチンを賢く設定できる機能が追加される。
一度クリアして終わりではなく、周回プレイを促す仕掛けを沢山仕込んでおり、実に良く出来ていると言える。

おおまかなゲームの特徴を述べたが、実際のところゲームデザインは衝撃的で面白いし、かなり細かく作りこまれているのだが、一方で荒削りな部分も目立って感じられた。

まず、説明書を開かなければ理解できないゲーム・ルールが多く存在している。
例えば、好感度の上げ方やゲームの構成・細かいゲームシステムだとか、今作におけるお金・道具の概念など。

なんというか、任天堂らしくない。他社のゲームだったら、不親切に感じるぐらいで終わるのだが、任天堂のゲームにしては、珍しくこのへんがおざなりで、配慮がない。

面クリア型のゲーム構成が大きく変わった。
章立てなのは変わらないが、巨大なフィールドマップを大陸ごとに区切り、その中で一々マップが切り替わらず、ゲーム進行に合わせて次々イベントが起こり、
それに合わせて敵が出現し、めまぐるしい状況の変化を演出する方式に変わった。

ダイナミックかつ、ドラマティックな路線を重視したかったのはわかる。
しかし、マップが大きすぎて、移動させるだけでターンが終わるなど、テンポが悪いし、一章が長いので中々ゲームを進めているという実感が沸かず、冗長になってしまっている。

敵の城を制圧していくことで、シナリオが進んでいくが、1枚のマップすべてを最初から自由には移動できない。
城門を閉ざしていたり、橋を落とされていたり、地形で上手くごまかしているのだが、飛行系ユニットが仲間に入ると、せっかく地形でごまかしていても、それが意味をなさない。
また、ゲーム後半になると、イベント演出のために、半ば強引に進入できない「見えない壁」が増え始め、興ざめするところが目立った。

ゲームバランスは、相変わらずタイトな計算式と倒されたら復活しないシビアな詰め将棋的システムだが、緻密に戦略を組み立てていって攻略するよりも、キャラクターの活躍に重点をおいたものになっている。
キャラクタに付けられたスキル(特性)は、派手で強力なものになっているが、敵が持っている場合もあり、スキル効果によって結果が運に左右される部分が大味さを強めている。

ターン最初にセーブ出来るようになっていて(ターンの途中では出来ない)、やり直しが容易になったため、そのぶん緊張感が薄れてしまった。
不本意な戦闘結果が出ても簡単にやり直せてしまうので、“失ったユニットは帰ってこない”というシステムに意固地にこだわる必要があったのか疑問を残すところだ。

そして、騎乗ユニット全てに“行動後、使わなかった数だけ再移動出来る”特性が付けられた。
「再移動」自体は面白いものだがあまりに万能すぎて、ただでさえ移動力で差がついていたのに、歩兵ユニットとの格差がさらに広がってしまう結果になっている。
一応、歩兵ユニットは、森や山など移動コストの高いマスに進入しやすいように設計されているが(つまり地形効果の恩恵を受けやすい)、だだっ広い開けたマップばかりの本作では、使える局面があまりに少ない。

「紋章の謎」で一発当てたシリーズだが、今回は、世界設定やキャラクターで手堅く人気を獲得しようという意図が強く見え隠れしてあまり好きになれなかった(ある意味正しいやり方だとは思う)。
SLGの体裁をとっている以上、どうしてもテキストベースのシナリオ展開になってしまうため、間をおいて唐突に説明的な台詞でストーリーが急展開する。
マップ上でイベント的な戦闘を見せるといった工夫はあるのだが、どちらかというと強引で強制的な印象ばかりが先行してしまい、のめり込めない。

「結婚」システムの関係か、美系キャラクター揃いなのも、逆に存在感に乏しく、物足りなさを感じてしまった。
キャラデザは、原画はそうでもないのかもしれないが、ゲーム上の顔グラフィックを見る限りでは、バリエーションが少なく、女性キャラも男顔のキャラばかり。
女性ウケを狙ったのかもしれないが、この辺もう少し頑張って欲しかったところだ。

グラフィックはグラデーションバリバリで、アニメーションの演出なんかも、売れ筋の路線をそのまま踏襲していて、オリジナリティがない。
魔法攻撃は派手にしたかったのはわかるが、演出が長くてテンポを落としてしまっているのが気になった。特に遠距離魔法を連発されると、正直かなりダレてしまう。

最後になるが、周回プレイを促す作りにしては一周が長く、かつ、テンポも悪く何度もやりたいと思えないのも惜しい。二部構成だが、つかみが弱すぎて、面白さを感じるまでがかなり長い。
ゲームのコンセプトである、“世代交代”の面白さを実質味わえるのがゲーム中盤の二部に入ってからなので、もっと前半の第一部にスピード感や引っ張るものが欲しかった。

手厳しい指摘ばかりになってしまった。
S.RPGとして画期的で新しいことをやってやろう!という意気込みは十分伝わるし、細部の作り込みや、操作性、インターフェイスの良さなど、光るところ(見どころ)はたくさんあるのだが、
時間が足りなかったのか、大風呂敷をたたみきれなかったゲームに見えた。その辺が、物足りなさを感じさせた要因なのかもしれない。そこで結論。

斬新で丁寧な作り込みは素晴らしいが、人を選ぶ作品。





[2013/02/21]
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