.hack//Link


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/03/04
価格5980円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2010 NBGI / CyberConnect2 / .hack Conglomerate
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架空のオンラインRPGを舞台としたアクションRPG、「.hack//」シリーズの新作。
前作から実に3年越しの発売となる。今回は分割商法ではなく、一本でゲーム内容が完結する。また、アニメとのタイアップも無い。

今回、個人的に大きな不満を抱いた点が、ネットワークゲームと現実を完全に混ぜ込んでしまったことだ。
舞台になる世界観は、現実に支障を来す描写があるものの、基本的に「ゲーム」であった。つまり、プレイヤーはゲームの中のゲームを遊んでいる設定である。
そのため、その「ネットゲーム」をログアウトして、メールや公式掲示板で情報収集することも「ゲーム」の一つとなっていた。
今作では、主人公がゲームの世界に入り込むという設定になっているので、ここら辺の線引きが曖昧になってしまっている。

また、主役が魅力に乏しく没個性的な作りで、つまらない。コロコロコミックなどで良くいる赤毛で馬鹿っぽい、ステレオタイプの主人公である。
「.hack//G.U.」では、等身が上がり大人びた路線になったが、今回は少年誌向けの幼びたデザインである。
つまり、誰に売りたいのか良くわからないのである。携帯機ということで敢えて対象年齢を下げたのかもしれないが、どちらかというとPSPは小学生が好んで遊ぶハードではないし、
ゲームの性質としても、高校生、大学生辺りが興味を持ちそうな題材ではないか。というか、それぐらいの年代じゃないと、面白さがわからないという気もする。

総集編かつ完結編という位置づけであるために、ストーリーは、これまでのシリーズ作品をタイムマシンを使っておさらいしつつ、終盤にはオリジナル展開も見られる巨大さを見せる。
これは、これまでこの作品を知らなかった人にとっては、作品単体でシナリオを把握出来る(但し原作と比べ大幅にエピソードをカットされ、本作の設定に都合良い内容に変更されている)利点があるが、シリーズを熱心にプレイしてきた人にとっては、数十時間プレイしないと、進展が見られないもどかしさを与える。
また、タイムトラベラーものの欠点として、矛盾を感じさせる描写や設定が一部に見られることがある。この手の題材は取り扱いが難しいのだ。

イベントシーンは、アニメ絵で立ち絵に音声はフルボイスと貧相な印象を与えるが、PSPで無理して稚拙なリアルタイムポリゴンムービーになるぐらいなら、この判断は正解といえる。
見せ場でまれに挿入されるコミックデモの手法も中々面白い。漫画のコマをシーンに合わせて表示させ、音などの演出を加えてデジタルに処理している。
PCエンジン時代のプログラムで全て処理していたアニメーション時代を彷彿とさせ、頑張っていると思う。強いて言えば、もっとこのシーンを増やして欲しかった。いかんせん少なすぎる。

昔から言われていることだが、このシリーズは、ゲーム部分が今ひとつ弱い。今回はストーリーに容量を割いた分、もろに影響を受けている印象がある。
ゲーム自体は、イベントの間に、ダンジョン、奥まで行ってボスと戦うの繰り返しで、ボスは大抵がシナリオとは無関係のもので、ダンジョンも、バリエーションが極端に少なく、やり飽きてしまう。
結果、ダンジョン攻略が序盤からもう作業的になってしまう。システム的に、この流れが確立しているので、いくらストーリーで意外な展開を見せても、プレイヤーがやることは決まっているので、驚きがない。
もっと、ダンジョンに行かせる必然性を持たせるべきだと思う。シナリオの上辺だけの流れではなく、本質的なところからという意味で。
ストーリーの巨大さにゲームがついてこれてない感じだ。それならば、わざわざゲームにする必要は無いのである。

戦闘システムは、主人公ともう一人好きなキャラをつれていける2人パーティ制である。
敵のブレイクゲージを削りきることで、敵がブレイク状態になり、のけぞったり吹っ飛んだりする。吹っ飛ばした状態でLボタンを押すと、ユニゾンアタックが発動する。
どうでもいいが、スクウェアエニックス「ファイナルファンタジー13」と名称も内容も似たシステムになっている。さすがに食傷気味にならないか!?
ユニゾンアタックは、パートナーと敵をピンポンのように打ち返して無防備状態でダメージを与えていく。
打ち返す際、ゲージを目押しするのだが、ユニゾンアタックで溜めて発動出来るクロスレンゲキ(超必殺技)でもきつくはないが目押しを要求される。これだけ目押しさせられるとちょっと疲れる。クロスレンゲキの方は目押しの必然性を感じないし。

クロスレンゲキは、演出シーンが長い割にとばせない。テンポを悪くしている。その代わりなのか、ランダムに好感度を上げることが出来るボタンが出現するが、正直言っていらないからシーンカットを優先して欲しかった。
この要素のおかげで、演出シーンに見入ることが出来ないし、必殺技が発動したからとちょっと一息するということも出来ない。何とかして欲しい。

ただの3Dアクションにしてしまうのは嫌だったのだろうし、PSPというハードウェア性能を考えると、どうしても貧弱になってしまうからこそ、こういう奇をてらったシステムを考えたのだろうと思う。
基本的にユニゾンアタックで敵を倒すことが多いので、敵を倒す爽快感よりも、目押しばかりやらされていた印象がある。適正レベルで挑んでもサクサク敵を倒していけないので、テンポが悪い感じがする。
これは、システムもそうだが、ゲームバランスがあまり良く無いのだろう。ユニゾンアタックはちょっと強い敵に対して使う程度で、通常攻撃でも敵のHPを削れるようにするべきだったのではないだろうか。

まあ、ゲームバランスに関しては、寄り道をすると、レベルがガンガン上がって行くので、どちらかというとヌルい方と言える。

イベントポイントのインターフェイスが良い(十字キーの操作性が悪いが)。発生するイベントが時系列で並んでいて、達成度が目に見えてわかる。
こうやって全イベントが視覚的に表示されていると、全部見てやろうという気持ちにさせてくれる。クリアすることでイベントに関わったキャラがどんどん仲間になっていくというのも嬉しい(戦いに連れて行けないキャラばかりなのが残念だが)。
ただ、エンディング後じゃないと発生しないサブイベントが多すぎる。出し惜しみしすぎ。
また、サブイベントをクリアしないと本編が進めないような作りにしているのはやりすぎ。
こういうのはやりたい人が自己満足で遊ぶのであって、それを強制すべきでない。

発売前に体験版を配信するという販促は今や珍しいことではないが、特にこの会社は積極的にやっていて、最近では、体験版を遊んだユーザーの意見を本編にフィードバックさせて発売するというやり方は素晴らしいと言える。
テスターやデバッガーなどから意見を吸い上げるだけでもやはり限界がある。ほぼ出来上がったゲームを、興味のある人間が遊んで、出てくる意見というのはまた貴重な物である。
体験版のデーターを本編に引き継げるようにしたり、おそらく手間がかかっているだろうに、最近は色々この会社も悪く言われているが、頑張っていると言える。

台詞は、サブイベントの一言一句に至るまで、全てフルボイスで喋る!!そのせいか、音声データに容量を取られているのか、それ以外の要素が割を食っている感じがする。
とにかく良く喋るのだが、全般的に冗長でテンポが悪くなっている。
特に気になったのが、主人公が次の目的をご丁寧に一々喋る。しかし、メニュー画面でも、チェックマークを付けたりして迷わせないように工夫しているので、そこまでやらなくても良い。
メッセージも多すぎる感があり、スピード感がない。

ゲーム性は限界まで簡略化され、ゲームとしては自由度の低さ、幅の狭さが目立ち、手抜きと感じる人も出てくるだろう。
装備品を付け替えたりするRPGおなじみの要素は廃止され(その代わり見た目を変化させるアバターシステムがある)、パーティメンバーは2人であり、3Dマップはダンジョンのみで、町などは一枚絵でメニューから行き先を決めるだけである。
こういうゲーム内容を聞くと、駄目なゲームという印象を受けるかもしれないが、
逆に言えば、ゲームとして楽しみどころのみを残し、それ以外はバッサリ排除したと考えられないだろうか。方向性としては決して悪くない。寧ろ、めんどくさい要素を排除して遊びやすいゲームになったと言えないだろうか。
唯一不満点といえば、ストーリー上の制限で、好きなパーティキャラを選べなかったりする事ぐらいだ。親密度というパラメータがあるので、余計好きなキャラを選びたいと思う。

とはいえ、ダンジョンの数や、敵キャラやボスキャラクターぐらいはもっと沢山出して欲しかった物だ。
強さが違うだけで、同じ風貌のボスと何度も戦わされるのはさすがにウンザリだった。

また、メールを見るときだけ、PSPを縦に持たせるのも、うざったかったので辞めてほしかった。携帯メールみたいに使わせたかったのだろうが、一覧性に乏しくなるし、操作も最後までなじめずに終わってしまった。

パッケージの裏には最終章などと、さもシリーズ打ち止めのようなキャッチコピーを載せておきながら、続編の予告ムービーが入っていたりする。
このシリーズを続けるのは構わないが、そろそろ世界観を一新して欲しい。未練がましく前作のキャラや設定を引きずらないで欲しい。
また、ネットゲームやインターネットがこれだけ一般化してしまうと、現実社会との設定負けが気になってくる。「.hack//G.U.」のように、プレイヤーキラーといったうまい着眼点をストーリーに持たせないと、さすがにネットゲームという設定だけでは辛い時代に来たと感じる。
その点で言えば、ストーリーを現実世界にまで敢えて広げた本作のプロットはありかなとも思える(ただ、ネットゲームの世界に入り込むというありきたりな部分に関して捻りがないので駄目だと感じるだけだ)。

決して悪いゲームではないのだが、どの面においても練り込み不足で、もう一歩感がぬぐえない作品となっている。
最初にも書いたのだが、全体的にださく、ガキくさくなった作風や、過去作のストーリーを丹念に追体験するなど、新規プレイヤーを開拓したい割には、本作独自の魅力に乏しい。
逆に、シリーズファンには、オリジナルのゲーム展開がみれるのが、終盤までプレイしないといけないというのが駄目だったりするし、キャラ絵のイメージがだいぶ変わってしまっていたりする。ヒロインは怒ってばかりで可愛くないのも難点。
しかし、これまではっきりしなかった伏線に、しっかりとした決着を付けている点は良かったのではないかと思う。

つまらないと切って捨てるほどのゲームでもないのだが、特別面白いと思えるゲームでもない。
ストーリーが違うだけで、ゲーム部分は最初から最後まで同じダンジョンと敵キャラの繰り返しでまるで金太郎飴のようだった。そこで結論。

わざわざゲームにする必要はなかったのでは?





[2010/03/13]
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