エッグモンスターHERO


対応機種ニンテンドーDS
発売日2005/03/24
価格4800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2005 SQUARE ENIX
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半熟英雄がニンテンドーDSに殴り込み。
エッグモンスターHEROとタイトル名もジャンルもRPGと装いも新たに
NDSの衣を纏ってどのような変化が起こったのかも興味深い所だ。

いままでリアルタイムシミュレーションであったこのシリーズだが、
本作はロールプレイングの体裁を取っている。
これは良い路線変更で、従来より取っつきやすく遊びやすいゲームになった。

流れとしては、拠点となる村から目的地のダンジョンを転々とするスタイルで、
RPGとはいえ、ストーリー構成が分かりやすく、村→ダンジョン→奥でボス撃破→ストーリー進展の繰り返しは、
だれずにテンポ良く進んでいく。

ダンジョン攻略は、先へ進むために特定の鍵やアイテムを入手する必要があり
それらは、宝箱に入っていたり、周辺の敵が持っていたり、簡単なフラグイベントをクリアするといった程度で
隅々まで探索していればまず詰まることはない。
この辺りの作りは実に旧世代的で、しかしゲーム内容と考慮すると良い味を出していると思う。
音楽やグラフィックは完全にSFC中期〜後期といった感じの雰囲気を醸し出しており、ノスタルジーに浸れる。
反面、仕掛けが単純だったり、ザコ戦闘や展開が単調になりがちな面もそのまま引き継いでいる。
特に終盤のダンジョンは少し広すぎる上に、序盤に見せたフラグイベントが少なく
鍵の入手ばかりになってしまっている気もする。

PS2「半熟英雄対3D」のようにチンタラしていない。
RPGということも手伝ってか、全体的に小気味よくストレスが溜まらずに遊べる。
全般演出面もさっぱりしており、その代わりテキストに力が入っている。
「対3D」はどちらかというと絵的なインパクトで勝負している向きがあり、
文章はあまり面白くなかったのだが、本作では携帯ゲーム機というハードウェア事情の関係もあってか
とにかくテキストが面白い。台詞で笑いを取るというSFC版のような雰囲気が戻ってきたように思う。
イベント中に頻繁に選択肢が挿入されるのも面白く、ぼうっと見てるだけにならない工夫がされているのもいい。

ゲームとしては、限りなく簡略化が図られていて、お金の概念は無く、
物量的な面での不自由をすることは有り得ないぐらいの親切さである。
プレイヤーがやることは、先へ進めるために必要な程度の戦闘とアイテム探しぐらいで、
ゲームとしてどうか?と思う面もあるが、必要最低限以外のところはバッサリ切り捨てられているためにサクサク遊べて良い。
加えて戦闘はシンボルエンカウント方式であり、バランスも緩いので意識的に戦いを挑む必要も無い。

戦闘は従来通り、兵士同士でぶつかりあうスクラッチバトルとエッグモンスターを使うお触りバトルの
2種類に分けられるが、卵には経験値の概念があり、使い込まないと成長しないので
まずスクラッチバトルを使うことは無く、ザコ戦でもエッグモンスターを積極的に使っていくことになる。
召喚する際に、EPを消費して呼び出すという格好を取っているが、回復ポイントがふんだんに用意されており
スッカラカンになってどうしようもなくなることはまず無い。
主人公自体のパラメータがアップするアイテムもマップ上にはふんだんにおいてあり、
これを入手していくことで主人公が強化していくという側面もあるがほとんど意味が無い。
ただ残念なのは、切り札も同じように沢山おいてあるのだが、4つまでしか所持出来ないうえに
ザコ戦で使う機会は殆ど無いために、せっかく探索しても取れずに無駄に終わるというのが気になった。
せめてアイテムとしてストック出来て、それを手元に装備させるという形にすれば
もっと積極的に探索しようという気にもなるのだが。

また、今回は主人公一人を動かすスタイルなので、一人が複数の卵を所持して使い分けるという体裁を取っている。
使うたびにランクの低いモンスターになるということもなく、EPがある限りは
好きなモンスターを選んで呼び出すことが出来るために、だいぶ戦闘に於ける自由度が高まっている。
たとえ不意にモンスターを倒されてしまって卵が壊されても別の卵ですぐに応戦したり、
瀕死のモンスターをひとまず下げて、また同じのを呼び出すということも出来る。

特にボス戦では1vs1ということもあって、単にHPの削り合いという単調な展開になってしまっていたが
お触りバトルの概念によって、適度な緊張感と意外性を与えることが出来ている。
攻撃時に、9つのパネルに表示された味方と敵のどこを選択するかによって結果が変わるのだが、
敵側のパネルには、逆ギレ/弱点/ハズレの3つの意味合いを持たせており、
逆ギレを突くと、反撃を食らい同ターンで2回攻撃を被り、
弱点の場合、大ダメージを与え一定確率で行動キャンセルさせる威力を持つ。
ハズレは攻撃を外してしまう。パネルに絵が描かれてないところを選択する場合に起こる。
弱点が分かっていれば、多少格上の相手でも倒すことが出来るし、
逆に弱点を突かれて負けてしまうことも有り得る。
味方側では、タッチした場所によって攻撃コマンドが変わり選択するまでそれは分からないのだが、
「対3D」でもコマンドに対する解説文を表記しない意図的な不親切さがあった。
あの作品でやりたかったであろう、上手い曖昧さを生み出せていると思う。
例えば、攻撃を外した場合でも、大ダメージを被った場合でも
全てパネル選択による結果であって、理不尽さを感じないのが素晴らしい。
一応、触った場所による結果はメニュー画面で蓄積されていくフォローもあり、配慮が行き届いている。
ただ、このシステム自体は、どうしてもタッチパネルが必要なほどのものではないとは思うのだが、
発想としては面白い物と思う。

ボス戦も含め、バランスは低めで良い辺りにあると思う。
ただラスボスは若干強く何度かゲームオーバーにはなったが、事前準備がしっかりしてればクリア出来る程度。

グラフィックは戦闘画面以外は2Dのドット絵でなかなかの脱力感を味わえる風味であり、
戦闘ではポリゴン描写ではあるが、2Dとの違和感が感じられないほどの出来映えで
「対3D」の2Dキャラの時のような若干の無機質さも無く、背景も含め暖かみのあるグラフィックになっている。
エッグモンスターのアニメパターンもかなり豊富で、「対3D」のアニメムービーのような
コミカルな雰囲気が出ており好感が持てた。

ただ、あらゆる面で使い回しが多く、キャラクターデザインやエッグモンスター、攻撃エフェクトに至るまで
その殆どが「対3D」のものであり、プレイ済みの場合、新鮮味の乏しさはある。
敵キャラも完全にSFC版のものであり、タツノコプロによるアニメーションムービーが無いこと
有名人の出演が無いこと、ボイスが全く無いといった豪華さが欠落していることからも
手抜きや地味っぽさといった印象が漂うのは否定出来ない。
しかし、敵役の使い回しは、SFC版のキャラがそれだけのポテンシャルを持っていることと
シナリオ自体は新規に書き直されている辺りで、それほどの嫌味は感じなかった。

音楽も「対3D」の使い回しが基本だが、フィールド曲を中心に新規楽曲も多く
「対3D」では少々しつこくて逆効果に感じたファミコン風味のサウンドも
本作ではNDSというハードである点と、流れる頻度と合わせていい味を出せていると思う。

フィールドやイベント時では、画面上にそれらが表示され、下画面には観客席が表示されている。
客が出入りして、おしゃべりが流れるのだが、それがゲーム画面に連動していないのが惜しい。
幾つかやりとりのパターンがありそれをランダムで流しているだけである。
せっかくなのだから、勝った時や負けた時、状況の推移によって台詞が変化すると面白かった。
ついでに言うと、客にタッチペンでちょっかいまでかけれると最高である。
ここまでやって初めてDSの機能を生かしていると言えるだろう。
NDSならではの演出もわずかにかいま見えるのだが、まだまだ少ない。

インターフェースは概ね快適ではあるがこなれているとは言えないレベル。
基本的にコントローラで操作するのが大半なのに、
戦闘のみ、メニューに切り替える時やお触りバトル時にコントローラでのフォローが全く無い。
あまり繊細な操作を要求されるゲームではないが、モンスター選択時に
ウィンドウをスクロールする際のボタンの判定が小さく、
指で触れるにも誤操作を起こしやすいので、結局タッチペンを持ちながらのプレイになってしまう。

ゲームのボリュームとしても、10時間以下で終わるほどの程度であり、短い気もするが
これ以上長くすると逆に間延びするのではないかとも思う。
あとまぁ、ゲームとしてはさしていい出来では無い。
これは、シリーズのコンセプト的にそういうものを求めるのは少し筋違いだろう。
が、シリーズ内としてはなかなか良い方の出来になっていると感じた。

地味ながらも意外に良い仕事している佳作。





[2005/04/07]
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