ジャッジアイズ 死神の遺言


対応機種プレイステーション4
発売日2018/12/13
価格8290円
発売元セガ

(c)2018 SEGA
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ジャニーズの最強アイドルこと元SMAPの木村拓哉を主人公に据え、新たな路線で送る「龍が如く」。
ゲームの発表直後から、「キムタクが如く」(誰が言い始めたんだろう?)というネーミングタイトルが定着した、大作アクションアドベンチャー。
「龍が如く6 命の詩。」でお目見えしたドラゴンエンジンが使われている。日本一過激で日本一危険な街「神室町(モデルは歌舞伎町)」を舞台に木村拓哉演じる元弁護士で探偵の八神隆之(ター坊)が時には推理し、時には大立ち回りの大暴れ。
バトルはセガ「スパイクアウト」風で、フィールドマップは実質切替なしのシームレス。まさにキムタクが「龍が如く」に挑戦したという衝撃作であり、果たしてどのようなゲーム内容へと変革したのか。

本作が実現した経緯としては、「龍が如く」で積極的に芸能人を声優として起用し、かつ、フェイスモデルを声を演じている芸能人本人に似せるという手法が定着していたためである。
これによって、単に木村拓哉が声優を担当しただけではなく、本人そっくりのキャラクタが誕生し、それが主人公としてゲーム内を動き回るという画期的な描写を実現している。
主演・木村拓哉と言っても過言ではない、存在感の強さを発揮している。

実際、キムタクの存在感は抜群で、これほどまでに芸能人とのタイアップ企画で成功しているゲームというのは見たことがない。たとえそれが「龍が如く」という長寿シリーズの系譜に乗っかったチカラだとしても、芸能人をここまで効果的に使えているゲームはなかなか無い。
話題性を考えると大成功であろうし、ゲーム上でキムタクを気持ちよく動かせるということが、それだけでこんなにも面白いものなんだということに驚きが隠せない。
プレイする前は、ある種水と油の存在ではないかと感じていた男性アイドルの起用は、それだけで感情移入を妨げるのではなかろうか、という心配をもたらした。だが、そんな心配はまさに杞憂で、すっかりキムタクになりきってゲームを遊ばせてくれるのだから、その手触り感というのは素晴らしいものだ。

キムタクを起用したことでのゲームの影響としては、ミニゲームのキャバクラとカラオケが無くなってしまった。ただキャバクラに関しては代替要素が存在するので、実質的には無いと言っていいのかもしれない。
それから、これはキムタクの影響ではないのかもしれないが、武器で刃物や銃を持つことができなくなっている。敵は刃物や銃を使ってくるが、プレイヤーがそれを使うことは出来ない。
これに関しては事務所がNG出したのか、今回は主人公がカタギの人間だから、あえて持てなくしたのかの判別が付きかねる。
なんにせよ、大物芸能人、それもジャニーズの人を使っている割には、元となるゲームがゲームとしてはきわどいヤクザ系のゲームというのに、NGが殆ど無いというのも凄い点だ。

具体的なゲームとしては、「龍が如く」シリーズを非常に研究しているという印象で、過去作の不満点を徹底的に排除してあるし、逆に過去作にあって好評だった要素が復活していて、嬉しい。
例えば、不満点といえば、ダッシュするのにスタミナをいちいち消費するだとか、瀕死になると移動速度が落ちて敵に絡まれやすくなるみたいな「なぜ、そうするのか!」みたいな部分が徹底的になくなっている。
細かい部分だと、オートセーブ機能が復活しているが使うかどうかが選択制になり、保存先も専用のオートセーブスロットにセーブされるようになったので、勝手に上書きされてたみたいな問題も無くなった。

また、過去作にあった要素として、「龍が如く2」にあった町で助けた人が戦闘に加勢してくれるシステムが復活。今作ではフレンドイベントをこなすことで協力してくれるようになる。
他には「龍が如く0」で登場し、好評だったスタイルチェンジシステムが洗練された形で導入。多数の敵を相手に戦う「円舞」。タイマンで戦う「一閃」。2つの戦闘スタイルを、状況に応じて使い分ける。
ただこれに関しては、「一閃」が強力すぎて(というか使うのが楽しすぎて)、あまり「円舞」の必要性がなかったような気がしないでもない。「円舞」スタイルもスキル強化できて使い勝手を良くするようにしていけば、良かったと思うが、ここらへんバランス調整が難しかったか?

一方で、プレイヤーへシビアな調整もある。
回復アイテムの種類が減り、持ち歩ける数に厳しい制限がかかるようになったことで、回復アイテムごっそり持ち込んでゴリ押ししてりゃOKみたいなプレイスタイルが否定され、適度な緊張感をもたせるような作りになった。
クリアするためには、ちょっとは頑張らなきゃならないという程度のバランス調整がつけられている。
とはいえ、ゲームオーバーを繰り返していたら、一時的に難易度を下げる選択肢も従来どおり出てくるので、「負けた」気にはなるものの、クリア不能というほど厳しく作られているわけではない。
また、スキルで回復アイテム所持数を増やすことができるというのは良い作りだ。

新しいシステムとして、最大HPにダメージを受けて、最大HPを減らされる「致命傷」システムというものが入っているのだけれども、効果的に作用しているとは言い難かった。
致命傷を受けるのは、ボス級の敵が放つ特定の攻撃や銃撃だったりするのだが、ボスが放つ特定の攻撃は大抵使ってくるタイミングが決まっているから避けるのが容易だし(気づけなかった人には辛いかもしれないが)、逆に銃撃はイベント戦闘以外でも雑魚戦でも稀に使ってきたりするのがうっとうしい。
なにより、治療するのが容易なので、思っているほど緊張感がない。画期的な試みではあったとは思うけども、もうひと押しなにかおもしろい仕掛けを考える必要があったように思う。

ストーリーの出来がかなり良く、特に後半のクライマックスに向けての畳み掛けるような怒涛の展開には、思わず目を見張る面白さがある。
それ以外でも、長丁場のストーリーを飽きさせない工夫が序盤から散りばめられており、探偵ものという設定を上手に活かした演出も抜かりなく、実にクオリティが高く、楽しく遊べる。

探偵ということで、尾行やチェイス、ピッキングなどの鍵開け、サーチモードというアドベンチャー風のミニゲームがいくつか挿入される。
これは個々の面白さについてはテンポを削いでいる印象がありやや難が感じられたものの、雰囲気作りとしては正解だと思う。

将棋や麻雀という定番ミニゲームをシッカリ収録し、ゲーセンのラインナップはさらに豪華に、自宅ではピンボールが遊べるなんてのも、なかなかお洒落で良い。
作り込みすぎて「それってミニゲームか?」と首を傾げたくなるような存在がなかったのも最近では逆に引き締まって良い。

不満点と言うと、エンカウント率が非常に高めで、雑魚戦とのバトルが結構煩わしいと感じられたことぐらいか。

パッと見は新規タイトルではあるが、「龍が如く」イズムを受け継いだ作品の一つとして、細部まできっちり作り込まれており、シリーズのファンである人はもちろん、新規プレイヤーも楽しい、非常に高い完成度を持った作品である。
無理なく続編を出せる終わり方をしているし、「龍が如く」の後継作品として、シリーズ化できる度量を十分持っている。これは続編を期待したい。

「龍が如く」から生まれた新しい芽は素晴らしい優等生だった。新主人公のター坊に痺れろ!!





[2019/03/27]
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