ジャストコーズ2


対応機種プレイステーション3/Xbox360
発売日2010/06/10
価格7980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / Eidos / AVALANCHE STUDIOS
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前作はだだっ広いフィールドをイカした音楽をバックに自前のバイクで走り回り、難易度も低めで、気張らずプレイ出来るおおらかさが良かったものだ。まさに雰囲気ゲーの極みであった。
2は、悪い意味でゲーム性の希薄さが改良され、このゲーム唯一の長所を潰してしまったと思う。

前作はグラフィックもあまり綺麗とは言えなかったが、さすがにディテールがグッとアップしており、高精細な映像になっている。また、ガンシューティングとしてもきっちり作り込まれゲーム性も高まっている。
しかし土台となるゲーム内容にブレはなく、馬鹿でかいフィールドを舞台に、私腹を肥やす政府軍から街を開放する、という核となる部分はそのままで、正統進化した作品と言える。

言葉尻だけでは、確かに良くなったゲームという優等生の基準を満たした理想的な作品なのだが、最初に書いたように、本作は肩の力を抜いて気楽に遊べる良さがなくなってしまったことが、残念に思う。
このゲームはいいゲームを提供するというよりも、でかい箱庭を用意して、その中で好きに遊んでもらうというのが理想的な立ち位置ではないだろうか。
各要素は良く出来ているが、ストーリーにしろガンシューティングにしろ良く出来たゲームは当たり前のように存在するのである。寧ろ、このシリーズお決まりの要素がまず前提としてあるため、ゲームシステムに干渉してことさら足を引っ張っていると感じた。
いまさら、この路線で真っ当に勝負しても人気作品に叶わない。それならば、徹底的にお馬鹿な路線を追求した方が個性が出て面白くなったのではないだろうか。

システムは色々凝ったことをやっているが、複雑化してしまってイマイチ取っ付き辛くなってしまったと思う。全体的に不便になってしまっていて、面倒臭くなった印象が強い(実際そういう面もあるのだが)。

メインミッション、サイドミッションという分け方ではなく、メインミッションを進めるためにサイドミッションを攻略するというスタイルに変更されている。具体的な説明は混乱するので避けるが、サイドミッションをクリアしたり、爆発オブジェクトを破壊するなど、やり込み要素を達成するとカオスゲージが増えていき、それを一定値に満たすことで本編を進めるようになるという仕組みだ。
つまり、単純にゲームクリアーだけを目的にプレイすることが出来ないのである。この点についてシナリオとの整合性は取れているが、ゲームの仕組みとしては制限が加えられて、足止め要素が強くつまらない。特に終盤になると、かなり稼がないと先へ進めない。ただのプレイ時間引き伸ばし工作にしか感じられなかった。
前作では、拠点開放するという目的があったのに、全くやらなくてもクリアできた不自然な点があった。このことに対する対応なのだと思うが、正直言って、この手のゲームのミッションは似たり寄ったりだから、強制されるのはかなり苦痛だ。それこそ好きな時に好きなように遊ばせて欲しい。自由度の高さがこの手のジャンルのウリではないのか。

ブラックマーケットで武器や乗り物を買うことができるが、武器の弾薬はしょうがないとしても、一度買った乗り物は所有したことにして次に選んだ時からはお金を取らないようにして欲しかった。前作ではゲームを進めると、自分専用の乗り物が与えられ、好きな時に持ってきてもらえたのに、今作ではその都度お金を払わないと使えないようにしている。不便である。

グラフィックの水準が上がったせいもあってか、ロード時間が長くなってしまった。起動時や画面の切り替わりの際のテンポが悪い。ウリの一つだった音楽も控え目になり、そもそも無音であることが多かったりして、かなり寂しくなってしまった。あのノリの良い音楽が流れるだけでもだいぶ違うのだが。フィールドを移動しているとき、非常に退屈である。

しかし、新たに追加されたワイヤーアクションが面白い。高所にいる敵を引きずり落としたり、壁に吊るしたり。忍者のように壁を伝って屋上まで上がったり、地面に打ってパラシュートを開き、素早く移動するなど、便利だし気持ちいい。今作の唯一の長所と言える。
ワイヤーを如何に上手く使いこなしているかどうかで、人によって上手い下手が分かれるのも面白い。

前作はZ指定(18禁)での発売だったし、この手のクライムアクションは残虐性が強くウリになっている部分でもあるため、Z指定で発売されることが多い。しかし本作はD指定(17歳以上対象)で売り出したいためか、日本国内版に限って、ゲーム内容に調整が入っている。
敵ではない一般人を轢き殺せない(轢いても死なない)のはまだしも、味方を誤射して殺してしまう可能性があるという理由だけで、本来勢力下では一緒に戦ってくれるゲリラ兵が削除されているというのは納得行かない。つまり、多対多で戦ってくれる状況が、日本版のみ単独で戦わなければならないのである。軍施設で破壊工作を行う際の難易度がかなり引き上げられたと言える。そして、勢力図を拡大させるメリットが日本版では殆ど無い。
ここまでゲーム性を書き換えておきながら、オリジナル版との違いを公表したのは発売後である。
他にも、色々いじくった弊害なのか、遠景のテクスチャーが表示されないという不具合が発覚し(日本版のみ)、公式サイトで謝罪している。
よほど抗議が殺到したのか、これ以降同社が手掛ける海外作品は、必ず海外版との違いを“発売前に”明示するようになった。

最近この会社は海外製タイトルのローカライズに力を注いでいるが、体裁が気になるのか売上を伸ばしたいのか、基本的にZ指定では売りたくないらしく、過激な暴力シーンはD指定(17歳以上対象)に合わせて修正を加える方針のようだ。
映像演出に規制を加えることで、ゲーム自体の面白さ(内容)は余程のことがない限り変わることはない(今作は仕様自体を変えているためひどい作品と言えるが)。しかし、過激で残虐性が強く、暴力的なシーンがウリのゲームをD指定に抑えて売るという及び腰なスタイルは気に入らない。
Z指定とD指定には大きな壁がある。Z指定はそもそも18歳未満は購入出来ない。プレイも出来ない。昔で言う18禁に当たるゲームソフトである。販売元としては、手堅く売れる(もしくは売れた実績のある)タイトルを逃したくない。しかも、なるたけ購入機会のハードルも下げたい。そこでD指定に拘るのである。
だが結局、暴力的な部分がウリのゲームである事実は変わらない。このゲームは日本語吹き替えされているが、「血を流せ」「豚を狩るように燻り出してやる」などと物騒な台詞が飛び交う。規制対象を排除したと言っても、とてもじゃないが若い子には遊ばせたくないゲームである。
そういうゲームに過敏に反応するのなら、Z指定にならないゲームだけローカライズすればいい。何も海外タイトルで売れているゲームの全てが、暴力的なゲームではないだろう。

また、この会社が関わったゲームは値段が軒並み高いのも好きになれない。

後半はゲーム自体とは関係ない話になってしまった。
主人公はクールでカッコよく、ストーリーもイカしている。続編を作るとしたら、でかいフィールドやグランドセフトオートの形式に拘らず、ストーリー性を強化して、「アンチャーテッド」のようにガンシューティングゲームに特化させてみるなど、色々工夫が必要だと思う。ていうか2で終わらせるのは勿体無い。かといってこのままの内容で続編を作り続けるのは厳しい。
探索要素や収集要素は膨大で、長く遊べるゲームになっているが、マンネリさも気になるところだ。マップはでかいが似たような場所も目立つ。

ガンシューティングとしては割と本格的な作りになっていて、この手のゲームに慣れていないと辛いだろう。多対多で戦ってくれるところが多いはずなのだが、日本版では一人で戦わされるシーンが多いだけになおさら厳しい。
各要素は丁寧にブラッシュアップされているが、どれも本職にはかなわない中途半端な感じが惜しい。繰り返しになるが、前作を遊んでいた人間も、そういう真面目な路線はこのゲームに決して望んでいなかったと思う。なんとも、没個性なゲームに落ち着いてしまった残念なゲームだ。そこで結論。

前作の良さを殺してしまった優等生。





[2010/07/08]
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