ロストスフィア


対応機種プレイステーション4
発売日2017/10/12
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2017 SQUARE ENIX / Tokyo RPG Factory
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「いけにえと雪のセツナ」で華々しいデビューを飾ったTokyo RPG Factoryの、第二作目となるのが本作であるRPG「ロストスフィア」。
どうやらproject SETSUNAというプロジェクトの一環で、3作リリース予定のうちの2本目だそうで、「いけにえと雪のセツナ」の続編ではないものの、ゲームシステムや製作技法は、かなりの部分で「いけにえと雪のセツナ」を継承した形となっている。
あと、「いけにえと雪のセツナ」では、90年代のクラシックRPGを取り戻そう!と言う意図があったそうだが、今作の公式サイトを見る限りでは、特にそんなことは一言も言ってない。なので、そのへんは考える必要はないだろう。
今作もUnityを使って制作しており、開発者も同じ布陣で、「いけにえと雪のセツナ」の続編ではないものの、このレビューでは続編的な見方をする部分が多々あることをご了承いただきたい。

非常に目につくのが「いけにえと雪のセツナ」で不満に上げられていた部分のその殆どを解消している点だ。宿屋がないとか、ワールドマップでセーブできないとか、戦闘時に敵は移動するのに味方は移動できないのは不利など、多くの意見を拾って、改善に努めている。
単純に良くなった部分が多く、好感触だ。

ただ劣化したと感じた点としては、メッセージウィンドウに顔グラフィックがつかなくなってしまった点。せっかくキャラデザインをしてもらっていて、メニュー画面では小さいものの顔グラフィックが表示されている。
しかし見る機会が殆ど無い。戦闘画面でも顔グラフィックが表示されるが、ATBバーにかぶせて表示されているので、これまた存在感なし。となると、イベントシーンで、顔グラフィックを表示させることは重要なことだと思うのだが、なぜやめてしまったのだろうか。
私なぞ、キャラクタのイメージが掴めず、あの貧弱な3Dキャラモデリングで、まさに“想像”に任せるしかなかった。メッセージウィンドウに顔グラ、付けたほうが良かったと思うんだけどなあ...。

今回はPSVitaを切ったことで、グラフィックは一段とクオリティが高まった。それでも、PS4/Switchのパッケージタイトルとして見ると、まだ水準としてはイマイチでエフェクト効果も地味目であるのが気になる。

ゲームシステムは、前作をベースとしているものの、より複雑化しているという印象だ。
中でも特徴的なのが、装備周りで、武器、防具、そして法石(アビリティ)を装備できる。
武器、防具は、専用素材を消費してパラメータを強化することができる...んだけど、ちょっとゲームを進めると、無強化でもっと良い装備がどんどん手に入るし、強化するだけ損というふうになりがち。もうちょっとなんとかならなかったかなぁ。
例えば他のゲームだと、装備を強化したものが無駄にならないように強化した装備を継承することができたりするRPGもあったはず。そういう一工夫が欲しかったところだ。

法石(アビリティ)はお金を出して買うのではなく、敵が落とす”記憶”を使って作成する。また、セツナ法石というものがあり、法石(アビリティ)に一つだけ装備させることができて、法石を強化できる。
例えば、「回転斬り」という法石に、「火属性を付与」というセツナ法石をつけると、火属性の回転斬りという形でパワーアップするのだ。ただし、SPを消費してセツナを発動させなければ、セツナ法石の効果は得られない。
また、セツナ法石の効果を使い込むと、昇華効果というものが発生して、SPを消費してセツナを発動させなくても、効果が発揮されるようになる。このようにして、法石(アビリティ)に追加効果をもたせてどんどんとパワーアップさせるのが、このゲームの骨子なのだ。
まあ、早い話が「ファイナルファンタジー7」のマテリアシステムの変形である。

法石にどんどん昇華効果を付けて強化していくのは面白いのであるが、法石、セツナ法石作成のための素材集めが面倒だし、昇華するためには、技を使い込まなければならず、どちらもプレイヤーへの負担が大きい。

素材の名前とか、落とす敵の名前とか、覚えづらいものになっているのもマイナスで、一応逆引き出来るんだけど、その敵はどこに出現するのかは直接図鑑を見なければわからない。
有り体に言って、面倒な作業が多すぎる。ただ、開発者はこれを面白いと思ってやっている節がある。
ちなみに、敵の落とす法石作成に必要な“記憶”自体は結構ポロポロと落とすので、中々落とさなくてストレスをためるみたいなことはない。

このシステムは悪くはないのであるが、いかに「ファイナルファンタジー7」のマテリアシステムの完成度が高いのかを思い知らされてしまった。

他には、機装と呼ばれるロボに乗り込むことができて、その状態で戦闘もできる。「クロノトリガー」の次は「ゼノギアスかぁー?」と、ちょっと悲しくなった。レトロRPGをリスペクトするってそういうことじゃないんだけども(今作ではその意図はないらしいが)。
機装状態で戦う場合にはエネルギーを消費するのだが、このエネルギーが少なく回復手段も乏しいため、使い所を考えないとすぐになくなってしまう。
ちなみに機装に乗り込むと、能力値が上がって、強力な専用攻撃スキルが使えるようになる。が、「ゼノギアス」のように、人間時とステータスが劇的に変わるとかはない。
ロボ、というよりは、サイズ的にもセガ「サクラ大戦」の霊子甲冑(光武とか神武とか)のそれにイメージとしては近い。

それに加えて、アーティファクトというものをワールドマップに建造できて、これを作ることでバトル時におけるルールをカスタマイズできる。攻撃が敵味方問わず必ず当たるようになるとか、物理攻撃力が大幅に上昇する代わりに防御力が下がるなど、様々なメリットデメリットをもたせる事ができる。
この辺のカスタマイズも割と重要なファクターになっている。ちなみに、アーティファクトの建造にも敵が落とす“記憶”が必要。このように“記憶”の重要度がこのゲームではかなり高いものになっている。

バトルは、「いけにえと雪のセツナ」と比べると、3人から4人パーティになっている、行動時にキャラクタを移動させることが出来るようになっている、技にチャージタイムが設定され強い技ほど連発できない様になっているなど、が大きく変わった点だ。
ATBゲージは顔グラフィックのところで下から上にゲージが溜まっていくようになっているが、素直にバーで表示させたほうが見やすくて良いだろうに。
前作でも思ったことだが、セツナを発動するときに、攻撃する瞬間にボタンをタイミングよく押さなければならないのだが、これ、もっと良いやり方はなかったものかと思う。
このシステムが搭載されている以上、コマンド入力に集中できないので、バトル中の操作が煩雑になってしまうのだ。ただ、セツナ発動のタイミングを考えた戦略性が面白いのも確か。
しかしやはり、操作が煩雑になりがちなのは気になる。いっそのこと、思い切ってセツナシステムを廃止してしまっても良かった気が?

戦闘周りは細かい部分でのUIが良く無く、初歩的なポカが目立つ。
技の表示ポップアップとダメージのポップアップが良く被って見づらいとか、ターゲットを選択するとき、特に味方を選択するとき、誰にカーソルをあわせてるか表記がないので、分かりづらいとか。
あと、SPの表示も見づらい。操作性も良くないし、バトルシーンのレイアウトは刷新したほうが良いと思う。

ゲーム中盤以降のボス戦、イベント戦がかなり難しく、ここまで長々と紹介してきたシステムを熟知して使いこなしていることを前提としたバランスになっている。
問題なのは、これだけシステム過多のゲーム内容でも、システムを理解してなくても結構進めてしまえる点である。
「いけにえと雪のセツナ」でも感じたことなのだが、ゲームシステムの導入部が下手くそで、今作でもそこら辺の説明であったり、理解のさせ方というのがどうも良くない。
もっとこのシステムを活用するとこんな強くなれますよーとか、こんな便利なことが起きますよーっていう“初心者の館”的なものをきっちり作ってガイドするぐらい必要だと思う。
私なんて、終盤になりレベル上げじゃどうにもならなくなって強くて勝てないボス戦でどうにも困ってどうしようもなくなったときに、セツナ法石の昇華のメリットであったり、機装の使い方、パラダイムシフトの内容をやっと把握したぐらいだ。ははは、これは私がアホなのか。
ただ、システムを熟知していたら簡単になるのかというとそういうわけでもなく、難易度はかなり高い。
(難しいという声が多かったのか、難易度調整機能が後のアップデートで追加され、イージーモードが選べるようになった)

ストーリーは、まさに王道といった作り。お行儀の良い感じのシナリオで、素朴で透明感のある世界観、雰囲気には良く合っていると思うが、「平均点以上」ではあるが、印象には残らない、といった感じ。
ロストした世界(人・物・建物etc)を復興させるためには、それに由来する記憶が必要という設定は、ゲーム的で面白いのであるが、ゲームを進行するために必要な記憶探しはほとんどしなくて良いようになっているので、探す楽しみを奪っている。
エニックス「ドラゴンクエスト7」の石版集めのように、意外なところに石版があったり、石版のために洞窟を探索したりみたいな、ゲーム的な面白さの広げ方ができただろうに、非常にもったいない。
一応、ゲームの本筋に関係ない部分で、ロストした宝箱などに、探索を要求する場面はあるようだが、もっとこの設定を有効活用したほうがゲームが楽しくなったんじゃないかと感じる。

全体の感想としては、「5800円も取って、しかも、2本目でこれかーー」と、情けない気持ちに。
なんだか、ゲームの規模も、個人制作レベルというと失礼だが、あまりにもチープ。
グラフィックはVitaを切ったことでグレードアップしているが、それだけ。エフェクト効果もショボいのは相変わらず。イベントシーンの演出もほとんどテキストだけの進行で、これといった視覚的な見どころなどはなにもない。
じゃあ、ゲームシステムが面白いかと言うと、システム過多でそれでいて作業感が強いものばかり。目新しさに乏しい。そして、ゲームバランスも渋い。厳しい。
恐ろしいのは、わざと手を抜いてこのレベルのゲームを作っているようではなく、どうやらTokyo RPG Factoryの開発力自体が、この程度のものしか作れないんじゃないか、ということだ。
この内容で、2000、3000円程度の価格でインディーズ作品というのなら、納得のゆく作品となるのだが、スクウェアエニックスから出ていて、お値段もフルプライスの5800円!?というところに驚きを隠せないのである。

2作目にしては、厳しい水準の作品。





[2019/06/25]
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