ラブプラス


対応機種ニンテンドーDS
発売日2009/09/03
価格5800円
発売元KONAMI

(c)2009 KONAMI
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女の子を落とせば終わり(=告白される)なのがセオリーだった恋愛シミュレーションで、その後が楽しめる画期的なゲームが「ラブプラス」だ。
発売前から、そのセンセーショナルなゲーム性が話題となり、ネット上ではラブプラスブームが爆発した。

攻略対象となる女の子が3人しかいない。これは、冒険をしたと言える。
この手のゲームにおいて、女の子とは、いわゆるお品書きである。より多くの人に好みのキャラが出来るように、様々な性格の女の子を用意して、購買層をひっかけようとする。
概ね5〜10人が相場の中で、3人とは、あまりにも人数が少ない。年下、同い年、年上と、ピンポイントで狙ってはいるものの、3人の中に10人分の女の子の魅力を詰め込むのは相当骨が折れたと思われる。

手抜きをして人数を減らしたわけではない。一人一人のキャラクタを作り込むために敢えて人数を絞ったのだ。
このゲーム、まず最初は、普通の恋愛SLGと同じように各種パラメータを上げ女の子に告白されることを目指す。このパートは非常に簡単だ。普通にやれば狙った子に告白されることはたやすい。
しかし今作においてはこれは前座であり、本番はここからはじまる。

告白されてからは、まったく違ったゲームになる。
ニンテンドーDSの内蔵時計と連動し、「彼女のいる高校生活」が始まる(時計機能を無視して自分のペースで遊べるスキップモードも選択できるが、恐らく保険で付けたモードだろう)。
彼女になったとはいえ、何日もほったらかしていると機嫌を損ねて好感度が下がってしまう。
理想的なのは、毎日起動して、その日何をするかスケジュールを決め、彼女にメールを出したり、電話で呼び出して直接触れ合ったり、週末のデートの約束を取り付けたりする。

仲良くなってくると、服装や髪型、性格までも自分好みに変化させることが出来る!まさに自分だけの彼女が出来るのだ!

この、キャラクタの特徴を変えることが出来るという仕様は、今作においてもっとも重要な部分だ。これが登場キャラ1人ならば、なんの驚きもない。
しかし、今作では3人もいて、それぞれがさも当たり前のように容姿どころか性格(口調)まで変えられる。

しかも、女の子の台詞はDSでありながら、フルボイスを実現している。性格が変わるとそれにともなって台詞も変わるが、どの台詞も勿論フルボイスで喋る!
性格は1人につき3種類用意されている。つまり、実質9キャラいると考えて良い。このシステムが面白いところは、本来性格がキツかったキャラを素直なキャラにカスタマイズ出来ることだ。
ただ、性格が変わったからといってさすがに全ての台詞が変わるわけではない。日常的に使われる部分の台詞(他にメールの返信内容など)のみが変わるのだが、それだけでも印象がだいぶ変わってくる。

テキストの量も膨大だ。これといったシナリオはないのだが、登下校やデート時といった日常的な会話のバリエーションが凄まじく豊富である。ちゃんと四季にあわせた会話やイベントを作っていて、単純に全部見るためには一年間プレイする必要がある。

女の子のグラフィックのみ、ポリゴンで描かれている。描画処理が弱いDSで敢えてポリゴンを選択したのは、勇気のいる決断だったと思われる。しかも、システム上カメラが寄ることがほとんどなので、テクスチャーの荒さをごまかすことが出来ない。
ポリゴン化を前提としたキャラクターデザインを行っていることもあってか、この手のゲームにしてはデザインが地味だ。しかし、容姿をカスタマイズ出来ることで、弱点をカバーしている。
また、時代柄派手めなデザインのものが増えてきている中、敢えて自己主張を抑えた絵柄は、逆に強烈な個性になったと言えないだろうか。

そして、ラブプラスで最も有名な場面が画面上の女の子にタッチして触れ合ったり、挙句の果てにはキスまですることが出来るシーンの存在だ(さすがにコンシューマでエッチシーンまでは出来なかったか)。
わざわざDSで、しかも縦持ちプレイでポリゴンの女の子を作り出したのは、この一点がやりたかっただけとしか思えない。
拙いポリゴンとはいえ、画面内の女の子は情感豊かで、モーション一つ一つも実に自然に動く。これが2Dドットの立ち絵だと、ここまでの存在感は得られなかっただろう。

主人公の名前をきちんと音声で喋ってくれることも特筆すべき点だ。コナミはPS「ときめきメモリアル2」からEVSというシステムを開発し、ヒロインに主人公の名前を喋らせることをとにかく重要視している。

非常に長くなってしまったが、この突き抜けた作りこそがブームの源泉と言える。

で、ゲームとしてはどうかというと、見た目の斬新さや壮大な作り込みに反して、同じことの繰り返しで、意外と飽きが早い。
恋愛SLGの体裁をとっていて、一日4つまで行動を選択できて、彼氏力と呼ばれる自分のパラメータを上げることで彼女を日曜日にデートに誘うことが出来る。デートを終えると彼氏力を消費するので、再び各種能力値を上昇させてデートに誘う、の繰り返し。
これが、毎日欠かさずプレイすればあっさりとパラメータがマックスになってしまう。ただでさえヌルいのに連日起動ボーナスまで手に入る。余ったターンで、デートスポットに行くことでスポットレベルをあげることが出来るが、これもそんなに苦労せずにカンストしてしまう。
それじゃあ、イベントCGやおまけを集めようかと思うと、現実時間と連動しているために、時間操作などのズルをしないと集めるのが困難な作りになっている。
これといったストーリーもないので、継続性に乏しい。

乱雑に例えるならば、「たまごっち」を女の子にすり替えたようなゲーム。

コナミがこの手のギャルゲーを作ると「ときめきメモリアル」がそうだったように、稀に他では見せない力みっぷりを発揮し、なんだかわからないけどとにかく凄いモノを仕上げてくるのだが、その力の入れっぷりがイマイチゲームの面白さに直結してこないという実に惜しい物になっている。
人気声優を使っているし、服飾デザインも数の割にしっかりしてるし、セーブファイルは3つあり1つのカートリッジで3人全員と付き合えるのもよく分かっている。それ以外にも全体的に高水準で、なんとかゲームとしても面白くしようという努力は見られるのだが、これがどうにも空回りしてしまっている。そこで結論。

話題になりやすいゲームだけど、面白いゲームではない。





[2011/04/27]
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