メタルギアソリッド3 SNAKE EATER


対応機種プレイステーション2
発売日2004/12/16
価格6980円
発売元コナミ

(c)1987 2004 KONAMI / Konami Computer Entertainment Japan
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敵を倒すのではなく、見つからないように隠れるという
逆転の発想と、作家性の強いストーリーに定評のある
メタルギアソリッドの3作目が、遂に登場。

さすがに3ともなると、ちょっとやそっとで驚いてもらえないのが分かっているのか
シナリオもシステムもとにかく巨大で、理解するだけでも一苦労。

今回は、敵兵士の行動AIがこれまで以上にグッと賢く
より人間くさい動きをするようになったのと、
周辺の地形と敵の視界を表示していたソリトンレーダーをなくしたことによって
だいぶアナログ的な、というかリアリティに徹した作りとなっている。

このシリーズは、敵に見つかってしまうとすぐさま増援がこれでもかというほどやってきて
見つけられた敵以外に周辺の敵までもが一斉に襲いかかって来るという一風変わったシステムになっていて
まともにやりあっていたら身が持たないゲームになっている。
そのために、敵の目を上手く欺きかいくぐるように先に進む必要性があるのだ。

この視界は、敵の正面数メートルまで近寄らないと感知しないもので、
後ろからであれば、いくら足音を立てて近づこうがいっこうに気付かない
ゲーム的な事情からくる不自然さがあったが、
今回はかなり遠方からでも気付かれるし、ちょっとした物音でも不審がるようになっている。
従来のアナログスティックによる移動の他に
十字キーで動かすと足音を一切立てない「ストーキング」という移動方式の
2種類があり、今回はこれらを使い分けなければならない。
当然、十字キーで動くストーキングの移動速度は極端に遅い。

これとレーダーをなくしたことによって、とにかく不便で不便で仕方が無い。
他にもスタミナゲージが追加され、黙っているとどんどん減っていくし
激しい動き(泳ぐ等)をすると、あっと言う間に無くなってしまう。
銃声を消すサプレッサーや各種センサー類も消費型になり
ずっと装着し続けて使い放題ということは出来なくしてしまっている。
そのセンサー類も劇的に使い勝手の良いものはなく
結局は目視による確認が一番手早く、クリアーするには如何にして敵の位置を把握するかが重要で
目視(主観視点との切り替え)を瞬時に行えるように慣れる必要がある。

ただ、このような物量的な飢餓感は、サバイバルがテーマな割には
物に不自由することは無く、あちこちに銃弾は落ちてるわ、
スタミナを回復する食べ物(生き物)はあるわで、
従来作と同様で物の有り難みを味わうようなことは無い。
(恐らく、基本的には色んな隠しネタをじっくり探して遊んで欲しいから豊富に置いてるのだろう)

他にもシステムの肥大化に従来のL型のメニューでは耐えきれないために、
スタートボタンで切り替わるメニュー画面が別に追加されてしまった。
ここでは、野戦服の着替えや、食べ物や銃器類の管理、状態異常の回復など
RPG並の項目がごちゃごちゃと並んでいる。

とりあえず、ここで新規追加されたシステムは、
面白いっちゃ面白いんだが、ごてごてしてしまって面倒という側面が強い。
服を場所ごとに目立ちにくい服装(ジャングルでは迷彩服、倉庫では黒っぽい服など)に
着替えてカムフラージュ率(敵の目を欺いている確率)を上げるようにうながされるのだが、
この数値が高かろうが見つかる時は見つかるし、
結局はあまり意識しないでも問題無かったりする。

それから、敵から受けた攻撃によって切り傷や銃傷といった傷を負う概念があって、
これによって最大HPが下がったりRPGでいう状態異常みたいなものがあるのだが、
回復させるにはメニュー画面を一々開く必要があり、とにかく面倒。
しかも、一番ゲームを寸断されたくないボス戦に於いて
痛い状態異常を頻繁に食らわされる。困った物だ。

このメニュー画面も、開くのに若干ロードが入る(短いのだがACTゲームとしては致命的)のと
ウィンドウ内のカーソル移動や決定に至るまでのレスポンスが全て悪く何度もイライラさせられた。
この辺りはベイグラントストーリーと全く同じポカをやらかしてしまっている。

今回は、通常時は敵の動きを遅くするなどゲームスピードを遅めにして、
その代わり多種多様な取れる行動の選択肢の中から
決断を迫るまでの猶予を作っているようだ。
主観視点に切り替えて敵を狙い撃ちにしたりといった
ちょっと高度な操作を要求される局面が多いことからくるバランス調整だと思われる。

操作性は、割り振られているアクションの数が多く大変だが、
慣れてくると相変わらず上手く動かせるようになってくる。
また、敵に見つかるのが前提に作ってるのか、
エリア内で出てくる増援の数に制限があるし、銃撃を受けた際のダメージが軽減されたり
のけぞりが無くなっており、これまでの作品と違い、かなりアバウトに遊ぶことが出来る。
(勿論、影に潜んで遠くから狙撃したり、見つからないようにすすめたり、人それぞれ好きに遊べるように
作ってある)

しかし、ボス戦となると話が別で、途端に高度な操作技術を要求されるようになっていて、
しかも、ダメージを与えるまでのプロセスが手間がかかり大変なものが殆どで
そのプロセス自体も決してセンスがいいとは言えない。端的に書くと面白くないのである。
通常のザコ戦と同じく、ある程度幅を持たせた倒し方を用意すれば良かったように思う。
システムをフル活用した倒し方を強要されるため、やらされてる感覚が強いし
慣れない操作によって長期戦やゲームオーバーになりやすく、妙な足止め感を与えてしまっている。
どうも、通常時とボス戦との難易度に差があり、どの辺りにバランスをおきたかったのか
軸足がはっきりしない感じがする。

映像面の作り込みがもの凄く、ニンテンドウ64の「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をはじめて触った時と
同じ衝撃を味わった。
ただ綺麗なだけではなく、ひとつひとつのオブジェクトにきちんと干渉出来る
インタラクティブ性を兼ね備えていて、ちゃんと画面の中に世界が存在している
という実感をしっかり感じ取れる。
小島ゲーの長所で、高い映像美と60フレームのプレイアビリティの両立が挙げられるが
本作ではレートを落としてまでグラフィックの質を優先させた。
これには最初がっかりしたが、レートを犠牲にしてまで表現力の幅を広げた
還元の方が多く、ある程度プレイしたら気にならなくなった。

ゲームのボリュームも相当長いのだが、森林、洞窟、要塞、山岳など
舞台も豊富に用意されているのと、イベントで提示される目的が多彩で
マンネリを感じることなく、驚きの連続であった。

イベントムービーでは、人と人が絡み合うモーションを作れるようになったからか
ただグラフィックが綺麗になっただけでなく、キャラ同士が殴り合ったり
見応えのあるシーンがグッと増えている。
(恐らく、着替えシステムやCQCの接近戦も技術の向上を見せたかったためだろう)
相変わらず見ている時間が長いのだが、2とはちがって
間が持たず無線通信でやりとりする苦しいところも無く、
シナリオの説明不十分なところもなく、高い完成度でできあがっている。
それにしても、ムービー映像がとても芸術的で、もうきわまった感がある。

脚本も良くできていて、ゲームであることを忘れず一人語りに入らないように
分をわきまえている。
そのため、多少ムービーが長くても飽きずについていくことが出来る。

PS2のハードをとにかく上手に使っていて、映像面もそうだし、
コントローラが感圧式なのを忘れてしまうほど、この機能を使っているゲームが
無く、しかしMGS3では、ボタンを強く押して離すと発砲、弱く離すと発砲しないで銃をしまう
というような(前作でもあったのだが今回はさらに上手く使っている)
感圧の部分までをも、操作の割り振りに使っている。
全ボタンに何かしらの操作を振り分けているのに、複雑さを感じないのは素晴らしい。
グラフィックにしたって、PS2のハードウェアを限界まで使い尽くさないと出来ないクオリティである。
本当にソニーはKCEジャパンに感謝すべきだ。

ただ、一つ指摘したい最大の欠点がある。
それは、小島ゲーのウリだった、
「見た目は硬派だけど、敷居は低い、誰でも遊べる」
部分が無くなってしまっている点である。
本作は「見た目も硬派だけど、中身も硬派」なのである。
ゆえに一見さんやライトユーザーがさらっと遊んでみた場合、
すぐに投げてしまう無愛想さがある。ちょっと小島ゲーらしく無い。
(良い意味で)ゲームっぽいいい加減さが排除されているのは、ちょっと気になった。
いくら難易度設定で易しいモードが用意されてるとはいえ、
特にアクションゲームに苦手意識が無い人はノーマルモードで遊ぶはずである。
そのノーマルの難易度もやや高い気がする。
CEROの審査では18歳以上対象作品に指定されていることから、
一部のイベントムービーなどで、目をそらしたくなるほど過激な描写も多く、
完全にそっち向きに作ってしまった感がある。

しかし困ったことに、多くの問題点はあれど、面白いのである。
そこで一つの結論。

これはマニア限定の面白さか!?見直しが必要だ。





[2005/01/01]
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