クロヒョウ 龍が如く新章


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/09/22
価格5980円(UMD)/5600円(PlayStation Store)
発売元セガ

(c)2010 SEGA
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据え置きゲーム機で展開していた龍が如くが遂に携帯ゲーム機「プレイステーションポータブル」に進出!
主人公もシステムも新しくなり、一新された中身に期待が高まる作品だ。TBS系列では発売に合わせてテレビドラマも制作され、積極的なメディアミックスも注目された。

主人公は桐生一馬ではなく、右京龍也という高校中退した18歳の少年。また、神室町が舞台で、東城会といった過去作の組織や地名がメインストーリーに関わっているが、ダイレクトに前作までの主要キャラクターはほぼ出てこない(サブイベントなんかでファンサービスはある)。
プラットフォームを携帯ゲーム機に移したことで、プレイヤーの年齢層を広げたかった意図も強く見受けられるが、正直言って桐生一馬を主役にゲームを続けるのは限界に達しているのを感じていたので、これは良い変更点だと感じた。
と同時に、龍が如く=桐生一馬というほど存在感のある人物だったので、ゲームとしてつまらなくなるのでは?という不安も出てくるかもしれない。そういった実験的な側面もあるのだと思う。
しかし、そんな不安は些細なものだったのである。要するに、魅力あふれる主人公を新しく立てればよいだけであって、桐生一馬が必ずしも主人公でなければ龍が如くが成り立たないわけではない。
今作の主人公「右京龍也」は、ゲーム上で巻き込まれる事件を通して「成長」するというテーマをあてがうことで、なかなかに感情移入できるキャラクターに仕上がっている。

龍が如くといえば、表現規制の流れに真っ向から立ち向かう作品としても有名だ。本作でも、未成年でありながら煙草を吸うシーンがあったり、冒頭では10代の不良少年が金融事務所を襲うという衝撃的な演出を軽くやってのける。やはり、さすがに飲酒は出来ない。
最近の龍が如くは、水戸黄門化してきているというか、主要メンバーが同じだとそうならざるを得ない面もあるのだが、初期の硬派なイメージが崩れ、単純な勧善懲悪ものになりつつあった。
今回は、不良少年を主役に据えたことで、アウトローで男気溢れるヒューマンドラマに仕上がっていると感じた。シナリオは基本的に一話完結型で、地下格闘場で戦う相手を描いたものである。テレビドラマによくありそうなノリだ。
しかし、終盤になるにつれ描かれる核となるメーンストーリーに関しては、はっきりいってつまらない。前半で展開される、対戦相手のバックボーンと、熱い不良少年との拳と拳のぶつかり合いが面白いのであって、殺人事件の犯人探しの段に入ると、とたんに安っぽいご都合主義な流れになる。
おまけに歯切れの悪いところで終わってしまう。クリア後に続くのかと思えば、どうやらなさそう。今作に限って言えば、凝った伏線はなくていい、もっとバカ単純で真正面からぶつかってくる(端から見るとクサイと言われてもいい)ぐらいの路線で良かった。

ストーリーで褒められるところは、序盤で与えられる地下格闘場で10連勝せよという分かりやすい目的と、ゲームの進行度が目に見えてわかるシチュエーションがゲーム的に言えば素晴らしい。

イベントムービーは、PSPでは凝った3Dポリゴンムービーは厳しいので、「メタルギアソリッド」などで使われている原画を動かす手法を用いている。劣化したなど色々賛否両論あるだろうが、個人的にはこっちも雰囲気が出ていていいと思う。
何もポリゴンムービーに拘る必要はない。そもそも本作は、戦闘シーンがフルポリゴンなぐらいで、他ではそんなにポリゴンを使っていない。
二つほど不満点をいわせてもらえば、ゲームクリアしないとムービースキップ出来ないことと、ムービーが全体的に長い。

PSPになったことで、システムとグラフィック周りが大きく変化した。
グラフィックは、先程もちらっと書いたが、戦闘フィールドはフルポリゴンだが、通常のフィールドマップは、一枚絵にポリゴンキャラを重ねたタイプのものだ(初期の「バイオハザードシリーズ」などで良く使われていた)。「龍が如く1」や2ではフルポリゴンだったが固定カメラだったので、プレイ感覚はそれらに近い。
ただ、マップの切り替わり(切り替わる場所やアングル)に一定の決まりごとがなく、良く方角を見失うのには参った。とにかく、慣れるしか無い。本来フルポリゴンで描かれていた神室町をそのまま2Dに落とし込んだ感じで作られているので、自転車などの障害物も多く、歩ける場所歩けない場所が分かりづらい上にやたら引っかかる。
ここは思い切って、神室町をそのまま再現するのではなく、この表現技法に特化したマップ構造に多少はアレンジすべきではなかっただろうか。
フィールドマップのグラフィックは一枚絵で表現されていることもあって、看板一枚にいたるまで繊細に描かれている。また、バトルフィールドも言葉が悪いがごまかしテクを多用することで、雰囲気を損なわず高いクオリティで見せている。

システムの変化は、主にバトル周りだ。従来のように単純に経験値を溜めてプレイヤーを強化していくだけでなく、ボクシングやムエタイといったバトルスタイルを選んで、それらを使い込んでいくことでレベルアップしたり、新しいスタイルを使えるようになったりする。
スタイルによって、攻撃モーションとステータスが変化する。パンチを好んで戦っているのであればボクサーが向いている。ただ、やっぱり使えるスタイルと扱いづらいスタイルの差がある気がする。

戦闘も、三國無双のような大味なものには出来ないので、敵は最大で同時3体まで出てくるが、基本的には1vs1で戦うように作られている。落ちている空き瓶や看板を持って攻撃に使ったり出来るようにするなど、頑張って龍が如くっぽい戦闘を再現しているが、従来作とはシステムは別物と思ったほうがいい。
もっとタイマンの駆け引きを楽しませるようなストイックな路線である。頭や腕といった各部位にダメージを受け続けると、そこが負傷して、戦闘に支障が出るようになる。ガードに使う腕を痛めると、防御してても弾かれるなどである。
色々と複雑なルールづくりをしているようだが、普通にプレイするぶんにはそこまで意識する必要はない。逆を言えば、頭でっかちなゲームシステムだということだ。ただひとつ言えるのは、いつもの龍が如くのように手軽に爽快感を得られるゲームとは趣が異なる。
例えば、敵の攻撃に合わせてボタンを押すことでカウンター攻撃が出せる。このゲームにおいてカウンター攻撃は最強である。敵の攻撃をダメージなしで受け止めての反撃は確実に相手にダメージを与えられるからだ。逆を言えば、コンピュータもこれをやってくるので、コンボ攻撃を考えなしで出しまくるということは、言わずもがな不利となる。
となると、相手の動きをじっくりと読み、考えて戦っていく読み合いに重点をおいたゲームバランスと言える。戦闘スピードも遅めに調整されている。

ボタンの数に対してやれることが多い。もっと詰めることは出来なかったのかと思う。

体力バーなども一切表示されない(自分の状態はメニュー開けばわかるが)。体力が減ってくるとFPSのように画面が赤くなって知らせたりはする。以上の事から、リアルなケンカバトルを追求したのだろう。
また、体力値を隠したのは、自分の体力に対して主にボス級のキャラは、恐らくプレイヤーと比べて莫大な量の値をつけていることをごまかすためでもある気がする。見せるとやる気を無くすほど膨大な数値にしているのではないかと思う。

難易度は、ゲームに慣れている人でないと、厳しいと思う。ボス戦が、難しい。難しいというよりは、CPUのルーチン自体は非常に単純で、まともにやりあっては相手がタフすぎてきついので、結局はパターンを探してハメ殺すパターンゲーになってしまっている。これを探す気力があるかどうかにたいしての難しさだ。
一応イージーモードにしたりも出来るが、このシリーズは口コミで評判になって、幅広いユーザーが手にとって遊ぶゲームとして定着したのに、ここにきて今更セガらしいゲームおたく以外お断りな牙をむくゲームバランスにしてどうするって話だ。また、この難しさが面白いかどうかも重要だ。はっきりいって面倒なだけで面白いとは思えなかった。
闘技場でボスと戦うのに、やたらと回復アイテムを買っておこうと警告する台詞も滑稽だ。アイテムを使わないと厳しい作りってのもどうか。

ゲームシステムが無駄に複雑化していると感じた。キャラクタのレベルの他にスタイルのレベル、修行場でお金を払うことでパンチやキックなど各能力値の強化、新しい必殺技の習得など、ただ経験値を割り振って習得していた従来作に比べると煩雑で覚えることが多い。

不良少年を描くのにも苦労している印象を受けた。まず、主人公の喋り方。俳優を起用しているというのもあるが、無理にワルっぽいアクセントで演技させているのが、傍目に聞いていて辛い。
ザコキャラなんかも、リーゼントとかファッションが80年代で、今更ありえない時代錯誤さである。これらは開発も勿論わかっているだろうが、一目見て不良と思わせるには一昔前のものを取り入れるしかなかったのだろう。

苦言を呈した部分も多いが、マンネリしつつあるシリーズ作品の新しい方向性を模索している感じで、戦闘システムは好き嫌いが出そうで失敗してそうな感はあるが、概ね完成度は高い。(メディアインストールしている場合)ロード時間も非常に早い。
サブイベントの内容もただ作っただけでなく、他のパートと摺り合わせが出来ていて、丁度良い。イベントが起こる箇所にアイコンが表示されるようになったのも良い。装備品のシステムが廃止されたり、ミニゲームの数が減ったとかボリュームが薄れたという声もあるだろうが、個人的には全てにおいてこれぐらいがちょうど良いと思う。
しかし相変わらず未成年が主役なのに、キャバクラだけは絶対に外さないのは、何かこだわりでもあるのだろうか。

いくつか気になった点は全てこれが理由だと思うが、本作は外伝的作品なので、本流チームが作っているわけではない(監修や内容に口出しなどで多少は関わっているはずだが)。そのせいか、細かい面で配慮にかけていると感じた部分がある。
特に顕著だったのが、クリア後に選べるプレミアムアドベンチャー(シナリオ進行を無視してサブイベントを遊べるモード)で、クリアデータを作成できないことだ。つまり、一度プレミアムアドベンチャーに入ってしまうと本編に戻れない。
PS3のトロフィーを模した称号システムがあるのに、これはいただけない。それにしても最近は、トロフィーや実績のようなシステムを自前で組み込むのがトレンドなのか!?今作に限っては、取得条件を全て隠してるのはセンスがないなと思ったが。

携帯ゲーム機ということで、通信機能を使って対戦や協力プレイ出来るモードが付いていて、結構凝っているようだが、はっきりいっていらないと思う。そこで結論。

主人公が変わっても、龍が如くらしさは健在。





[2010/09/25]
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