聖剣伝説4


対応機種プレイステーション2
発売日2006/12/21
価格6800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2006 SQUARE ENIX
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スクウェア(現スクウェアエニックス)の人気シリーズの一つ、聖剣伝説が11年ぶりに、連番作品として久しぶりにリリース。
最近では、ゲームボーイアドバンスやニンテンドーDSで新作が発売されていたが、据え置き機での発売はかなり間をおいた形となる。
とりわけ、プレイステーション2での開発は、なんと今回が初めてである。
坂本龍一に音楽制作を依頼したことも大きな話題を呼んだ(PC-E「天外魔境」と同様、オープニングとエンディングだけだが)。

正統な続編ということで、往年のシリーズの雰囲気を押し出すような配慮がそこかしこに見られる。
パッケージやタイトル画面の森を全面に押し出した部分や、全般的なグラフィックデザインなど。かなり聖剣らしい。

シリーズでは、ポリゴンの採用も初の試みである。あの独特の柔らかみのあるデザインをうまく再現出来ている。
この辺はさすが、映像面での技術力の高さに定評のある同社らしい強みといえる。

従来作では、アクションRPGであったが、本作ではアクションアドベンチャーになっている。
これには、多くの期待していたユーザーから反感を買った。

レベルや経験値が蓄積されることはなく、ステージクリア型のアクションゲームで、次のステージに進めてしまうと、再びレベル1に戻ってしまう。
一応、特定の条件を満たすことで手に入るメダルを装備することで初期状態をいくらか強化した状態で始めることが出来るが、あまりRPG的な、カスタマイズ性やパラメータバランスに重きを置いたゲームではない。
また、RPGのように、与えられた世界をストーリーの目的に応じて、右往左往するようなものでもなく、同社「コードエイジコマンダーズ」のように、完全に与えられたステージを突き進むタイプのゲームとなっている。
大体、1ステージのプレイ時間は1時間前後を想定しているようだ。合間にセーブポイントがいくつか用意され、中断も出来る。

イベントムービーの合間にゲームというスクウェアエニックスらしいゲームである。

イベントムービーはリアルタイムデモとムービーの2種類であるが、リアルタイムでも他社の追随を許さない高いクオリティなのは相変わらず。
ムービーも、「ファイナルファンタジー7 アドベントチルドレン」のノウハウを生かした、質の高さは素晴らしいが、リアルタイムとの違和感バリバリである。頑張りすぎ。

このゲームでもっとも見所となるのは、havokの物理演算処理である。
箱やタルといったオブジェクトのみならず、敵やプレイヤーの挙動にいたるまで、この物理演算を使っており、リアルな世界を表現している。
置いてある岩を動かして坂の上から転げ落としてやると、実に自然な動きでごろごろと転がっていく。これが意外と面白い。
通常のゲームでは、これらの挙動は、あらかじめゲーム内で作られた嘘の挙動であり、つまりは、ゲーム的に都合の良い挙動に調節された実に身勝手な作りといえる。

リアリティを重視されつつある昨今、意外とこの自然さを追求するゲームは少ない。なぜなら、その方が都合がよいからだ。
実のところ、聖剣伝説4は自由度の高いゲーム性をhavokによって手に入れたように見えて、それは全く逆で、リアルな演算処理によって、ゲーム的に言えば、縛られた不自由な世界となっている。

おそらくゲームバランスの調整に相当骨を折ったに違いない。なぜなら、全てのゲーム内の挙動がリアリティに基づいたものになっているからだ。
こうと決めたやり方でやれば、必ずその通りの結果が返ってくるゲームと違い、状況によっては、そうならない場合の方が多いわけだ。作り手側にとっては、都合の悪いシステムだろう。

このリアルな物理演算に重きを置いたゲームコンセプトについては、着眼点は良い。ほかにも、型にはまった巷に溢れるアクションゲームに対して挑戦的なシステムを次々と導入している点は高く評価すべき点だ。
まずは、これら突飛なゲーム内容をいったん受け入れた上で、どこが良くてどこが駄目だったのかをシビアに指摘していく。

コンセプトの一つとして、ただ敵へ攻撃してヒットポイントの削り合いにはしたくなかったらしく、プレイヤーは比較的弱めに設定されている。
そのため、MONOと呼ばれるオブジェクトを駆使して、それを敵にぶつけることでパニック状態を引き起こし、そうやって無力化した敵を攻撃して倒すというプロセスが主な流れとなっている。
そのほかにも、敵をつかむことが出来て、近くの相手にぶつけることでパニック状態にさせることも可能。アクション数の多さは、かなりのものだ。

だが、面白いステージとつまらないステージがくっきり分かれてしまっているのは問題だ。
おそらく各ステージの設計担当者のセンスの差異だろうと思うが、ここまでひどいとさすがにゲンナリする。

マップが、デザイナーが好き勝手作ったようないい加減なもので、迷って当たり前。これはあんまりだ。
ステージによっては、妙に曲線的でくねくねしたようなところもあり、いくら物理演算の面白さを表現したいとはいえ、行きすぎに感じる。

これに対応する形で、目的地をレーダーマップ上と画面上で直接方向を指し示す機能がついているが、縦軸は完全に無視したナビゲーションなので、あまり役に立たない。
場所によっては、スイッチを踏んだり、鍵を手に入れないと先に進めない場所もあり、こういった足止めが唐突に起こるので、突然何をしたらいいかわからなくなることが多い。
同社「キングダムハーツ」の二の舞を踏んでしまっている。
せっかく、フィーというナビゲーションキャラがいるのだから、もっとこういった局面に対して、ヒントを出してくれても丁度いいぐらいだと思う。
一応、ヒントをくれるところもあるのだが、まだまだ足りない。

プレイ感覚は、キングダムハーツに近いものがあるが、物理演算に処理を割いているためか、全体的に動きが遅くもっさりとしている。
プレイヤー自身も物理演算でしっかり制御されてるので、思い通りな動きが出来ないことも多く、時にはおかしな挙動になってしまうこともある(実際はそれがリアルな挙動としてはき出されているのだけど)。
正直言って、アクションゲームとしての操作感はあまり気持ちのいいものとは言えない。

ただのアクションゲームでは終わらせたくないらしく、そこかしこでRPG的なアプローチも見られる。
なかでも評価したいのは、レベルリセットによる、飢餓感だ。
敵を攻撃していくと、能力値アップするアイテムが手に入る。これでキャラクタを強化し、最奥にいるボスを倒すのだ。
ここで、いかに効率よくキャラクタを強化していくか?という葛藤が生まれる。敵から逃げすぎても大変だし、ステージ序盤から強い敵も出てきたりするので、その合間を縫って上手にキャラを育成させていく緊張感はなかなかのものだ。
ただし、やけどや雪だるまといった状態異常はなんだか余計なものに感じられる。あまりにRPG色が強すぎるのだ。

それは、魔法やパチンコ弾の種類の多さにも現れていて、こんなに種類があったって瞬時に使い分けることなんか出来ない。明らかに多すぎ。最後まで遊んでもすべてのアイテムの効果がはっきりと覚えられず、なんだか場当たり的に使ってきた程度でしかない。
ちなみに魔法なんかは、回復魔法以外仕様用途が見いだせなかった。

操作性も、なんだか色々と詰め込みすぎて、煩雑である。
ロックオン機能がついているが、これがお粗末な代物で、画面上に対象がいないと、補足してくれない。一番近い対象にロックオンせず、画面中心にいる的にロックオンしようとする。
また、敵へのロックオンとMONOへのロックオンが分かれているのも気になる。いっしょくたにしてくれた方が使いやすかったと思うのだが。

敵をつかむという重要な操作があるが、このアクションを使うと、強制的にロックオンが解除されてしまうのもいただけない部分だ。
つかめる敵をつかんで、強い敵にぶつけるといったことをやるときに、一連の操作が非常にやりにくい。こういう視点周りの仕様の劣悪さはがっかりの一言で、ここがもっとちゃんと作られていれば、もっと良い印象を持てたのだと思う。
とどのつまり、あまりに操作性が複雑すぎるのだ。もっとそぎ落として、整理するべきだった。

意欲的なゲームなのに、いまいち面白くない、良い印象が持てないのは、アクション作るのが下手くそなメーカーがやっているからだろう。
アクションゲームを作る上で、やっちゃいけないことがわかってないから、大味なバランスで、理不尽にやられたり、明らかにおかしな抜け穴が放置されたまま発売されている。
ボス戦なんかは、そのほとんどが、倒し方がさっぱりわからず、抜け穴を見つけて倒すか、わけのわからないうちに正しいのかはっきりしないやり方で倒してしまったという達成感の乏しいものばかり。

これは、聖剣シリーズで毎回思うことだが、やり始めて最初の数分は「買って損した!」と思わせるに十分な雑な作りである。
どーも、ここのシリーズの開発者は、作品を詰めるということをやらないらしい。
それは、今作のゲーム全体にもその雰囲気が漂っていて、やりっ放し作りっぱなしないい加減な印象を受けた。
これはそもそも、いい意味でも悪い意味でも聖剣シリーズらしいプレイ感覚と言えるので、一概に批判するところではない。
結局は、開発者的には、このような物理演算の偶発的な結果が、面白いと思って作っていたのではないかと思われる。
そこら辺が、実に押しつけがましく感じられ、しっかり作り込まれた和製アクションの良作を知っていると、この面白さがなかなか理解出来ないで終わってしまう。

ゲームクリア後も、アリーナというチャレンジモードのような要素が用意されており、やり込み要素もなかなか多く仕込まれている。好きな人には長く楽しめるゲームになっているだろう。

批判的な内容になってしまったが、崇高なチャレンジ精神は高く評価すべき部分であり、逆に、プレイステーション2でここまでリアルさを追求するのは早すぎたとも言える。
この先プレイステーション3などでは、こういったhavokのリアリティを追求した演算処理は少なくとも部分的にでも必要になってくるだろうことから考えると、近年のスクウェアエニックスらしからぬ、背伸びをしたゲームに見えた。

着眼点は素晴らしいが、練り込み不足。





[2007/01/22]
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