スーパーマリオメーカー


対応機種Wii U
発売日2015/09/10
価格5700円(パッケージ)/4700円(ダウンロード)
発売元任天堂

(c)2015 Nintendo
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ゲーム好きなら一度はやりたいと思うだろう「スーパーマリオ」のコースを自分で作れる!!
夢の様なゲームソフトが、遂に誕生!!それが「スーパーマリオメーカー」だ!!

長らく待望されていたものだったが、このたびようやく発売が実現した。
そして、待たされただけあって、エディターとしての完成度も非常に優秀で、単純に一個の商品としても良く出来た仕上がりとなっている。
特に、作れるだけで終わらず、作る、遊ぶの循環が面白くなるような仕組みがとても良く出来ている。これは2015年と言う時代と、Wii Uがなければ到底実現できなかった代物と言い切ってもいい。

本題に入る前に。
「スーパーマリオメーカー」誕生の経緯というほどではないのだが、これまであまり公には語られることのなかった裏の歴史的なものに触れなければならないだろうと思う。

「Youtube」や「ニコニコ動画」といった動画サイト誕生初期。この時期、いわゆる「改造(ハック)マリオ」の動画それ自体が、1つのカテゴリとして成立するぐらい、流行していた。

日常的に動画を見ている人には有名なことなので既にご存知だと思うが、隠しブロックを理不尽なところに配置して、そのトラップに引っかかる「孔明の罠」(三国志の諸葛孔明が策士として有名なことから)。
何も操作しなくても勝手にステージをクリアする「全自動マリオ」。また、普通ではありえないほど、非常識で理不尽さがウリの「鬼畜マリオ」。
それどころか、グラフィック・サウンドデータやプログラムの仕様データまでをも作り変えて、本家の面影がほとんど残らないほどの高度な改造マリオまで存在した。
このような動画が、動画サイト上でかなりの盛り上がりを見せた。かつ、その一部に関してはその気になればプレイ可能な状態にあった。

今簡単に紹介したような「改造マリオ」というのは、オリジナルのゲームデータを改造して、ステージのデータを書き換えることである。

元々「スーパーマリオ」シリーズには、ステージを作成できるエディットモードを搭載しているものはない(外伝作品では搭載されているものもある)

なので、改造をどのようにやっているのかというのを簡単に説明すると。
ゲームソフト(FCやSFCのカセット)を特殊な機器を用いてPC上にデータを吸い出し、そこから専用のツールを使って読み込むプログラムを書き換える。
(正確には、新しく作成したステージデータを差し替えるといった表現が正しい)

そこから、改造したデータを使って遊ぶには、PC上でそのプログラム(FCやSFCのプログラムデータ)が動作するアプリケーションが必要になる。
これがいわゆる、エミュレーターと呼ばれているものである。

プログラムを改ざんして、ネット上に動画やそのデータをアップロードする。ソフトのデータを吸い出して、そのデータを複製し、ネットで誰でもダウンロードできるようにする。
言うまでもなく、これら一連の行為はあまりよろしくない行為だ。

「改造マリオ」の流行の裏には、このような闇の顔が潜んでいたため、メーカーとしてもオフィシャルに盛り上げることの出来ないものであった。

このブームを上手に使ったのが、サイドビューのステージを自由に作れて、ネットワークを介して他のプレイヤーにも遊んでもらえる作りをウリとしたSCE「リトルビッグプラネット」だ。
(少々脱線するが、カプコンの「ロックマン」も、動画サイトからの流行がきっかけでレトロ風「ロックマン9」として復刻したのは間違いないだろう)

勿論、任天堂としても、この熱量をただ黙って見ていたわけではないだろうが、なにぶん自社の一番の看板であるマリオが絡んでいるだけあって、相当慎重になっていたのだろう。

その証拠として、サンプルステージに「オート(全自動)マリオ」が入っている。
また、オトアソビという機能。音符ブロックを使うことで曲を演奏させることができるような作り方が出来たり(マリオシーケンサの影響)、本作には何かと動画サイトの盛り上がりを意識した部分が数多く見られる。
(曲が演奏できるというのは想定外の使い方だったと思われるかもしれないが、それだと敵によって音が変わる&位置で音程が変わるという大掛かりな仕掛けを入れないので)

さて、本作のクオリティだが、正直言って、エディットモードとしての出来の良さ、かつ、ただのエディターソフトでは終わらない機能の作り込み等、本当に溜息の出る質の高さで驚いたほどだ。
作る方には興味が無いから...という理由で、買わない人も大勢いるのだろうが、「マリオ好きなら騙されたと思って買ってくれ!!」と言いたくなるほど、本当によく出来ている。

まず、ウリとなっている作る方のモードについて。

主にゲームパッドを使ってプレイする。個人的には、TVモニタは全く使わず、ゲームパッドだけでプレイしていた。

画面上部のパレットからパーツを選んで、ステージエリアの置きたい部分に、画面をタッチすると、そのパーツが配置される。
例えば地面とかだと、画面上をなぞると、その部分にサーッと地面のパーツが配置されていく(その必要がない、敵などのパーツはなぞっても連続配置されない)。
感心した点としては、なぞって配置していくと、地面の上に山とか木みたいな背景のパーツがランダムで自動生成されるのと、地面パーツをくっつけて固めて配置していくと、自動で最適なパーツに置き換えてくれる。

この手のエディターを触っている人にしかこの気の利いた機能の凄さはわかりにくいと思うが、地面のパーツだと、同じ地面でも端っこの地面は崖のように見た目を変える必要が出る場合がある。
そういう面倒くさい部分を、破綻すること無く自動で最適化してくれるのだ。
他にも、敵の配置を調整したり、といった操作系の部分はほぼすべて、直感的に動かせて、作れる。
シンプルでありながら自由度の高さを両立しているということが、本当に素晴らしくて、こんなに気軽に触って楽しめるエディターソフトというのは中々無いと断言できる。

褒めているものの、不満点は多くある。
致命的なのは、説明書が全然説明不足で、わからない機能が多いこと。

具体的には、機能的で直感的なUIと書いたが、ノコノコのパーツでは、緑ノコノコと赤ノコノコの2種類が入っているように
1つのパーツに複数のパーツが格納されている事が多いのだが、切り替えの操作が面倒くさい(切り替えたいパーツを選択して画面上をタッチしたまま振る)。

配置した敵にキノコを重ねると巨大化するといったふうな、ユニークな操作方法が多いのだが、エディットソフトとして考えると、ちょっと使いにくい。
複雑化したくなくて、ボタン減らしたくてやったんじゃ?って言うような部分が非常に多い。

こういうのは、説明書などできっちり説明されていれば問題のないことなのだが、肝心の説明書が「面白いステージを作る方法」「遊ばれるステージを作る方法」みたいなハウツーに比重を起きすぎてしまっていて(勿論それらは重要だ)、
せっかく演奏できる余地を用意してたりしても、自力でやっているだけでは気づけない機能が本当に多いのだ。

自分は最初、ノコノコをパタパタにするやり方も、それどころか、緑色のノコノコを赤色に変えたり、パックンフラワーを違う種類に切り替えるみたいなやり方すら暫くの間わからなかったほどだ。
(説明書で解説してないのは、やりながら気づいて欲しいという意図も含んでいるためだと思う)

制限時間の設定や、強制スクロールの有無と3段階から速度を決めたり、とにかく色々なことが出来るのだが、中でも一番驚いた機能を紹介する。

このゲームでは、「スーパーマリオブラザーズ」「スーパーマリオブラザーズ3」「スーパーマリオワールド」「NewスーパーマリオブラザーズU」の4つのゲームから選択して作ることが出来る。
そのつぎに「地上」「地下」「水中」「お化け屋敷」「飛空船」「城」からステージの種類を選ぶことが出来る。

普通は作るステージの、まずはゲームとステージの種類を選んでから、コースを作成していくものだが、このエディターソフトがすごいのは、いつでも好きなときに、ゲームとステージの種類を切り替えることが出来る点だ。
「NewスーパーマリオブラザーズU」の「地上」ステージのつもりで途中まで作っていたとする。
ところがコースの作成途中でも、初代「スーパーマリオブラザーズ」に切り替えたり、「水中」ステージに変えたりも出来る。

勿論、4つのゲームはそれぞれシステムが違っており、マリオ3なら葉っぱマリオに変身するし、マリオワールドならマントマリオに変身しヨッシーが登場する。Newスーパーマリオなら壁を使って三角飛びができるというように
システムがそれぞれ違っているのに、作成途中のコースでも、それらを好きなときに切り替えることが出来る。

それだけじゃなく、ステージの種類も「水中」から「城」に変えたり、その逆に「城」から「水中」に変えることが出来る。

これは、出来て当たり前と思う人も多いと思うが、地味ながらすごいことだ。

この切り替えを実現させるために、気付かれない程度に各ゲームのシステムをある程度共通化させている。
ゲームやステージの種類を切り替えても、作成したステージのパーツが破綻を全く起こさないように、しっかり作られている。

例えばこういう機能を取り入れたことで、「地上」ステージのつもりで作っていたのが地下に変わったり、水中に変えることが出来ることで、ボタン一つで水没したステージといった作り方が出来るのが面白い。

次に「遊ぶ」方の部分。

ネットワークに繋いでいない場合は、少ないサンプルコースが遊べるだけの寂しいものだが、ネットワークにつなげていると、他のプレイヤーが作成したステージを遊ぶことが出来る。
それから、自分で作ってアップロードしたステージがどういう状態になっているのか(誰が遊んだか、何人がプレイしたか等の統計データ)というのも、「遊ぶ」モードのほうで確認できるようになっている。

一言でまとめるなら、「マリオ」というゲームを使った、ソーシャルネットワークみたいなものになっている。
遊んだコースの足跡が残って、制作者本人に通知が行く、「いいね!」が出来る。Miiverseと連動したコメントを残せる(わざわざMiiverseを起動する必要はない)。

巷には、pixivのようにイラストを投稿したり、見たりするSNS、動画投稿のYoutubeなど、ソーシャルネットワークサービスがネット上には溢れている。

「スーパーマリオメーカー」は、いうなれば、「スーパーマリオ」のSNSのようなもので、遊ぶ専門で買った人も、そのうちなんとなく作りたくなってくるような仕組みになってる。
逆に、作るばっかりで疲れてきた時に、「遊ぶ」モードに入って、人の作ったコースを遊んだり、自分のコースを遊んでくれた人のコースを遊びに行って交流したりといった、極めてSNSな楽しみ方そのものになっている。

最初に書いたように、「スーパーマリオメーカー」というのは、Wii Uのゲームパッドがなければ実現できなかった手軽で直感的な操作性、また、ネットが発達した2015年だからこそ出来たSNS的コミュニティの形成(Miiverseの存在)。
いささか、発売が遅すぎる感は否めなかったのだが、ここまで引っ張ったからこそ、これだけ綺麗にまとまった高い完成度を持ったものに仕上がったのではないだろうか。

「遊ぶ」モードでの不満点を述べる。

エディターモードではタッチ操作がメインだからさほど気にならなかったのだが、ボタン操作でメニュー操作を行うのが不便過ぎる。カーソルを十字キーで動かそうとすると思った方向に行かず、直接タッチしたほうが早い。

ステージ検索がイマイチ。新着、人気、注目の3つから選べて、もう一つプレイヤー別の検索がある。
いずれにしても、人気コースが優遇され過ぎていて、埋もれているコースを中々探せない。プレイヤー別の検索もやはり「いいね!」の人気ランキングを元に表示されている。
そこはMiiverseを開いて、ステージIDを直接やり取りして欲しかったのだろうが、もう少しゲーム内だけで何とか解決を図れなかっただろうか。
Miiverseとの連動がうまく行きすぎているがゆえに、そこら辺をゲーム外へ投げっぱなしというのは非常に勿体無い。

また、「いいね!」を沢山もらうと、ステージを同時アップロード出来る数も増えていく。だが、アップロードできる数を増やせる手段が「いいね!」を集めるだけというのは、窮屈過ぎる。
開発としては、悪質なコース氾濫を避けるためにここまでガチガチにしたのだろうが、どっちみち、不人気のコースはサーバーから削除される。
それ以外に、地道にやっている人がアップロード数を増やせるような手段を用意してあげても良かったと思う。

クリアできない「鬼畜コース」の氾濫を防ぐためか、アップロード時に必ず制作者本人がクリアしなければアップロード出来ないようになっている。
そして、難しめのステージを絶対クリアしなければならないという状況には陥ることはない。
個人的にはこれらの対策で、不快な思いをすることはそうそうないと、思う。

後、セーブできるステージ数が120個というのは不満。簡単に使いきることは無いほどの量ではあるが、長くやっているといずれ限界に達してしまう。
SDカードなど、外部記憶装置を使えるようにして欲しい。色々と難しいのだろうが...。

最後に総括する。

ただ高機能なエディットソフトを作って売りだすのではなく、誰でも手軽に触って楽しめるような配慮と、作ったステージを遊んでもらうための仕組みづくり。
こういったことをしっかり練り上げていったのだからすごい。当然のようにエディター自体もとても高性能なのが、やはりマリオというか、凄いことをさも当たり前にやっているというのがもはや凄いのだが。

そしてこれは、爆発的な知名度を持った「スーパーマリオ」だからこそ出来た力業だと言えないだろうか。
他社が真似しようとしたって、なかなかここまでうまくはやれない。出来ない(だからこそ憎らしいといった感情も出てるかもしれないが)。

しかし本当にマリオは凄い。今回それを改めて実感した。そこで結論。

マリオ好きなら、作れ!遊べ!ゲーム制作は最高のゲームだ!





[2015/10/02]
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