ソル・モナージュ


イメージファイトなど数々の名作シューティングを制作してきた
アイレムが送る初の大作ロールプレイングゲーム。
アイレムにとってRPGはそれまで全く足の踏み入れたことのないジャンルであり
全くノウハウのない状態で一から作り上げるのだからかなりの意欲作であるのは想像に難くない。

このゲームが発売された直後、アイレムは倒産してしまう。
そのことと、単発タイトルで見た目がたいした売れそうにない感じだったため
かなり貴重なタイトルらしく、手に入れるのは当時から相当困難だったようだ。

まず、キャラクターデザインからして外している。
決して下手ではないんだが、好き嫌いの分かれる絵柄ではある。
かなり素朴でクセのあるデザインで、売れ筋を狙ったとは到底思えない。

マップチップなどのグラフィックもとても良いとは言えず、
まるでRPGツクールdante98を拡大して作ったかのようなドットの荒さやべた塗りには
愕然としてしまった。

だが、このゲームは「見た目とは裏腹に中身は秀逸」なのである。
PCエンジンのCD-ROMゲームでは、人海戦術でごまかしがきくために
逆パターンならば沢山のケースが存在するが、このようなケースは希と言っていい。

本作も多くのCD-ROMのRPGと同じくストーリー重視型なのだが、
実に演出のツボを押さえている。
ボス戦に於ける敵の動きや、イベント仕立ての戦闘など、見せ方が本当に上手いのだ。
一見するとSFC初期のようなちゃちくさい雰囲気なのだが
俄然見せ場となると台詞を喋ったり、暗転無しにアニメーション画面が展開したりと
とにかくイベントの演出に意外性があり、それが成功しているのである。
通常時の通行人の台詞がこなれていなかったり、見せ方がイマイチな部分もあるのだが、
それを考慮しても、渋みのあるグラフィックと演出は一見の価値があるほど独特で魅力的である。
特にビジュアルシーンに関しては、陰影とドットの使い方が絶妙で、同業者の多くはそれだけでも驚いたのではないだろうか。

ロード時間も画面切り替え時にちょっと待たされるぐらいで、戦闘&メニュー画面への切り替えは
ローディング無しなので、ストレスが溜まらない。
そういった核となる処理は非常にスピーディで好感が持てる。
戦闘時の演出が非常に良く、対面式だがFFのようになるたけグラフィカルに表現していて
ちょっと効果音が五月蠅い印象はあるが、非常に爽快(痛快)である。
メニュー画面についても、このころからやけにSFCを意識した物がPC-Eに増えてきていて
このゲームもそういう系統なのだが、PC-E特有の地味っぽさが払拭されていて使い勝手や見栄えが良い。

また、ダンジョン周りのギミックもかなり練り込まれていて、
エンカウントが多い感じはしたが、マンネリを感じることなく最後まで遊ぶことが出来る。

やはり本来シューティング畑の人間が今まで経験したことのないRPGを作ると、
既存の決まり事をぶち破るようなことを平気でやってきて、
その点で本作は成功していて、非常に新鮮味のあるゲーム。
恐らくここまで完成させるのに相当苦心したはずである。



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