テイルズオブデスティニー


対応機種プレイステーション2
発売日2006/11/30
価格6800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)1997 2006 NBGI / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ
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以前からリメイク要望の根強かった「テイルズオブデスティニー」が、プレイステーション2にてフルリメイクを実現。
個人的には、これはさすがにないだろうと思っていたことなので、意外だった。

直前に発売日が一週間延期されるという混乱を生み出し、ちょっとした話題になった。
どうやら、発表通りの予期せぬ不具合ではなく、プレイステーション3の動作チェックのためというのが真実のようだ。

しかしまあ、名作、傑作を今の時代に復刻、よみがえらせて欲しいという声は昔から良く聞くが、お世辞にも出来が良かったとは言えないプレイステーション版「テイルズオブデスティニー」のリメイク希望が多いのは、ちょっと理解に苦しむ領域だ。
きっと、キャラクタや世界観が受けたから、という理由からなのかもしれない(ストーリーのつながった続編が出たことも大きいだろう)が、まったくもって、前者の意識とは真反対な動機である。

リメイク内容としては、原作の設定ではずせない部分を残しつつ、大幅改訂された、元の作品を遊んでいる人間にも十分新作ゲームとして遊べる内容になっている。
最近の2D格闘色の強い戦闘シーンと、フルボイス化されたイベントシーン。てーか、今のテイルズそのままっちゅうわけだ。

制作はシリーズファンではおなじみのナムコテイルズスタジオだが、その中でも「テイルズオブデスティニー2」「テイルズオブリバース」を作ってきたチームによるもので、作り方やプレイ感覚も全く一緒。
この系譜の最新作と言う位置づけで考えると早い。以下、話がややこしくなるので「テイルズオブレジェンディア」「テイルズオブジアビス」「テイルズオブザテンペスト」など、別チーム制作による作品を抜いた記述をしていくので注意してもらいたい。

なんというか、善し悪しではあるが、あまりにも手堅い作りで、シリーズの型にはまったものなので、褒めるべきところも欠点としてあげる部分も代わり映えしない、悪く言えば退屈なゲームだ。

見た目での大きな変更といえば、フィールドマップだけでなく、町やダンジョンも3D化された。
ここで懸念されるのが「テイルズオブジアビス」の時の、マップに懲りすぎてロードが長いのではないかってなことだが、これに関しては、非常に快適である。
全般的に、ディスクアクセスは早く快適で、ストレスを呼ぶところはない。

マップはすべてポリゴンで描かれているものの、キャラクターは、相変わらずのスプライト表示で、無理にカメラも動かしたりせず、ドット絵時代のRPGの雰囲気をだいぶ残している。
3Dとはいえ、ちょっとした立体感を出すために使っただけと見え、どちらかというと造形よりも、テクスチャー一つ一つの絵作りにこだわったと作りというか、「テイルズオブリバース」での一枚絵グラフィックとほぼ感触が同じだ。
このロードの早さを考えると、裏データは相当ごまかしてるっぽい。

イベントシーンに入っても、カメラを動かしてダイナミックな演出を試みるということには消極的で、一部でそういうシーンはあるものの、基本的に定点でスプライトキャラのやりとりを見せるというこれまで通りの手法である。
戦闘シーンのキャラクター表示を見る限りだと、拡大縮小にも十分耐えうる水準だと思えたので、せっかくマップが3Dなのだから、もうちょっとカメラで動きを付けた演出があると見栄えもグッと良くなると思うのだが、どうだろうか。押しつけがましすぎるのもせわしなくて嫌だが、ほとんど動かないというのもあまりにもったいない。

ただ、ダンジョンでは前述のディスクアクセスの関係もあるのか、こざかしい使い回しが非常に多い。
たとえば、マップデータは同じで、カメラの位置を変えただけのものを使っていたり、全般ダンジョン関係は、似たような地形が本当に多い。
これで問題となるのは、広大なダンジョンを作りたい場合、似たマップばかりで、迷いやすく位置関係を把握しづらいという欠点がある。
実際、後半のダンジョンは、一定のパーツを組み合わせたような作りの広大なダンジョンで、極論だがマッピングでもしないと、ちょっとつらいぐらいである。
この程度の、昔気質のバランスを狙ってやったのなら(確かにそういう節もある)納得も出来るが、どーもやむなしという感じも伺えて、「うーん」と唸ってしまうところ。

ストーリー関係は、だいぶ手を加えられているようだ。元が元だけに、よくここまで引き上げたなっていう感想を正直に持てた。
一から練り直す手間が無い分、メインキャラクターの描写が非常に丁寧で、本筋シナリオでの言い回しややりとりも、かなり頑張っている。
「テイルズオブデスティニー2」での独特の設定の縛りにも負けず、うまくまとめ上げたものである。

ゲーム途中でのアニメーションムービーの挿入も多く、どうも、いつもは主題歌ムービーに割いていた労力を、こちらに向けたようである。
ちなみに、今回の主題歌ムービーは、オリジナル版そのままである。
9年という歳月のせいか、元の作品と絵のタッチが若干変わっている。はっきり言うと、昔のムービーを入れない方が良かったかもしれない(全編作り直すならば良かったかもしれないが)。
そういう葛藤からか、いつもならアドバタイズに流していた主題歌ムービーも、ストーリー導入部に変更したのかもしれない。

バトルシステムは、再び2Dに戻り、エアーリアルリニア モーションバトルシステムなる名称を名付けられている。
空中に舞い上がり、エアリアルコンボを爽快に決めるというのがコンセプトの一つとして大きく打ち出されている。
が、ここで問題が一つ。これは、見た目重視の宣伝戦略であって、実際は、「空中でも戦えますよ」というのが正直なところだ。
実際は、空中もバトルフィールドの一つになったというだけで、簡単に敵を打ち上げて、気持ちよくコンボをたたき込むという遊び方はよほど狙ってやらないと出来ない。
ただ、空中を浮遊するモンスターも追加されているので、そういう敵相手に対空技を打ち込むという爽快感は、これまで無かったことだと思う。

どちらかというと、重要なのはチェインキャパシステムだろう。数値の分だけ行動出来る(通常攻撃なら1消費、特技は2〜以上消費)もので、このチェインキャパの回復もわりかし早いので、「テイルズオブデスティニー2」のように、スピリットゲージを溜めるために防御防御というテンポを落とされることもなく、高回転でめまぐるしく戦闘が進んでいく。
最初は通常攻撃→特技で攻めていたのだが、どうやら今作では、とにかく特技を積極的に使って欲しいようだ。
使える特技をどんどん覚えていくので、通常攻撃は使わず、とにかく使える状況なら、バシバシ特技特技でガンガン攻める。これがまた気持ちいい。
ただ強い技を打ち合うだけでなく、敵によって弱点属性が付けられているので、それに合わせて技を使っていくという使い分けも求められる。

だが、戦闘シーンが2Dなのは、シンプルゆえに逆に不満点にもすり替わってしまう。
敵も味方もお互いがガンガンすり抜けて行ってしまうので、位置取りの概念が無く、モグラたたきのように、ひたすら倒しやすい敵や手近な敵をぼこ殴りにするという戦略性に欠けるものになった印象がある。
確かに、気持ちよく面白い戦闘として出来上がっているのだが、敷居を下げすぎたせいか、戦略性において希薄になった感は否めない。
完全に二次元なので、飛び道具の攻撃をよけるすべが相当限られるってのも惜しい。

派手さばかり重視されてしまったこともあり、そもそも通常攻撃の存在感が薄くなっているのも気になる。
終盤なんかもう全く使わないというほどになる。せいぜい余ったチェインキャパで追撃に使われる程度。

成長カスタマイズの要素では、ソーディアンデバイスとリライズがある。
ソーディアンデバイスは、ソーディアンという特殊な剣が持つ、装備者に様々な効果を与えるスキルを覚えさせていくというものだが、
この育成が、ちょっと戦うだけで、どんどん覚えていくので、そのたびに付け替えて行くという作業がわずらわしく感じられた。
また、恩恵を受けられると実感出来るのがこれまた後半以降で、もうちょっと序盤のうまみを用意出来ていると面白く使える機能だと思えるのだが。

リライズは、ようは、装備品の成長システムである。レンズというアイテムを消費して、装備品を強化(上位のものに変化)させていく。
こちらは今度は、レンズの与え方がイマイチなのと、特定レベルを超えないと強化出来ない縛りがきつく、自由度が低い。
負担が少ないのはいいことかと思うが、もうちょっとなにかアクションが起こせればという気もする。
「テイルズオブリバース」では、似たシステムで、装備品を合成させて行くというものがあったが、ああいうシステムの方がわかりやすくて面白い。

料理システムの強力さをアピールするために、今作ではフードストラップという、かなり簡易的なシステムに変更されている。
これまでの作品だと、料理を活用するのとしないのとでは落差が激しく、しかしその料理システムがわずらわしい印象を持たせてしまっていたことへの反省だろうと思う。
従来と比べると、淡泊な感じはするが、お手軽なのは良いことと思う。
料理するための材料を買っておく手順をはぶき、レシピを持ってストラップにつけるだけで、その条件に沿った状態のときに、自動で使ってくれる。これほど、手取り足取り準備されたシステムでは、誰もが使うだろう。

ゲームバランスは、中盤ぐらいまでは、お金の与え方も厳しく、難しい印象があるが、全般的に苦手意識を持ったプレイヤーでもクリア出来る辺りまで落とされている。
後半は、強力な回復魔法に特技もガシガシ覚えるし、金もレンズもアイテムも相当余る。レベルだってどんどん上がってゆく。
なにより、プレイヤーが不愉快になるマニアックな調整を極力排除されている点は評価したい。今作でも完全に無くされているわけではないのだが、
たとえば、こういったアクション性の強い戦闘なのに、操作キャラを強制的に違うキャラで戦わなければならないとか、厳しいダメージトラップが無いとか、極端に強いザコ敵、反則的なボスがいないなど。

とはいえ、後半のダンジョンでは、大体が、奥に入るためにキーアイテムを探して集めるという仕掛けが多く、膨大に広いダンジョンを行ったり来たりすることが多く、勿論その間に敵とも戦わされるわけで、
正直、くどい印象を持った。ホーリィボトル(エンカウント率減少)欲しいぐらいきついのはどうか。
まるで、「ゼルダ」遊んでるかのようだ。せめて、アクション要素のある仕掛けを解く部屋ぐらいは敵が出ないように設定して欲しかった。
謎解きやらせたいなら、敵を出さないとか、出ても倒しやすいモンスターにしておくとか、マップは狭めにしておくみたいな手加減が一つでもあれば、ちょうどいいぐらいだと思うのだが、
もー、このゲームに関しては、どの要素でも手加減一切なしで、しんどい謎解きと捜し物をさせられながら、戦闘をやらされる。これには参った。
作り手としては、「うまくてんこ盛りに詰め込んだぜっ!」という自己満足にひたれるものかと思うが、何も知らない遊ぶ側にとっちゃくどすぎるのである。

これはサブイベントにも問題があって、戦いたくない時に戦闘しながらサブイベント(ミニゲーム)をやらされるというのは、なんとかならんものか。
フィールド徘徊系のもので、石蹴り(なんて安易なミニゲームだ)やディスカバリー探しなど、もーちょっと遊ばせる努力も欲しい。

ポリゴン化の弊害か、調べられるものとそうじゃないものとの区別が付きづらいのもつらかった。
些細なところで詰まった時に、怪しいところを調べる際、意味のあるオブジェクトと無いオブジェクトがはっきりしているゲームとはっきりしていないゲームでは天地の差がある。

敵との遭遇率を表すアイコンが画面左上に表示されているが、これは一定歩数あるいたら必ずエンカウントしますよというのを強調しているようにしか思えない。見せない方が良かったんじゃ。

チャットシステムで、次の行き先を「もういいよ」というぐらい聞かされたり、取っつきのいいゲームを目指して作られたことは凄くいい。
華やかさを追求した派手な戦闘シーンに、ややダレ気味な感はありながらも、丁寧な描写で気持ちよく進んでいく王道的ストーリー。
くわえて、低めになったゲーム難度。もう完全無欠と言いたいところだが、まだまだ戦闘を中心に、複雑さの残るところは、今後の反省材料としてじっくり検討していってもらいたいと感じた。

ただ一つ言いたいのは、「テイルズオブデスティニー2」「テイルズオブリバース」と来て、3本目となる本作は、だいぶ進歩してきたという手応え感はばっちり感じられた。次でもっと良くなるのでは?という期待さえ感じられたゲームだった。
別の方向性で作られている藤島テイルズが、人気では圧倒的だが、こちらもその人気をしのぐ勢いで成長しているのを思い知らされた。

テイルズと馬鹿にする無かれ、着実に良くなってきている。





[2007/01/09]
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