テイルズオブバーサス


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2009/08/06
価格5200円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)1994-2009 NBGI / NAMCO TALES STUDIO / いのまたむつみ / 藤島康介
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一言で言えば、「大乱闘スマッシュブラザーズ」のテイルズ版である。

「大乱闘スマッシュブラザーズ」が売れたので、その手法に乗っかって、二匹目のドジョウを狙ったゲームである。
スクウェアエニックス「ディシディア ファイナルファンタジー」も、意識したような作りであった。

テイルズシリーズでは、同タイプのゲーム(シリーズキャラ総出演)が既に、「レディアントマイソロジー」という作品が発売されており、コンセプトがダブっている。
あまり、この手のゲームを乱発すると、ありがたみが薄れ、冷めてしまう。商品価値が下がってしまうのだ。
大元の任天堂はその辺りがわかっているから、あまり簡単に続編は発売しない。

Wii「大乱闘スマッシュブラザーズX」の作り方をかなり真似たゲームである。
「ユグドラシルバトル」というストーリーモード(いわゆる本編)があり、通常の対戦モードがあり、出されたお題を攻略するシチュエーションバトルも入っている。
サウンドテストでは、今作で収録された歴代シリーズのBGMが視聴出来、アレンジバージョンも存在する。

テイルズシリーズは、戦闘システムがアクション要素の強いものである。それをそのまま対戦風味に持ってきた感じである。
方向キー+×ボタンで、それぞれに技を4つまでセットし、ガード、通常攻撃(キャラクタに寄るが3連までコンボ攻撃がつながる)、といったシリーズおなじみの操作方法に加え、
新たに二段ジャンプが加わっている。
元々の操作形態やシステムが格闘ゲームに近いものだったので、違和感なくプレイ出来る。

バトルフィールドも足場が上下に存在しているが、スマブラのように、場外に追い出せば勝ちではないので、端は壁で区切られている。
相手のHPを0にすれば負けだが、このゲームの戦闘はあくまで「競技」の設定なので、ストックライフ制(1ライフ、3ライフ、5ライフ)だったり、ポイントゲット制だったりルールが設定されている。
また、アイテムも出現し、使うことが出来るし、岩が転がってくる、竜巻が起こるなどのギミックの付いたステージも存在する。

対戦は最大4人までだ。タッグ制もある。
このように、結構スマブラに酷似したゲーム内容だが、対戦ゲームとして見ると、荒削りな印象が強い。

キャラクターにはレベルが設定されており、勝ち抜いていくと経験値が蓄積され、規定ポイントまで溜めるとレベルアップする。
またそれとは別に、手に入れた経験値を各種パラメーターに振り分けて、さらに強化することが出来る。
装備品の要素もあり、キャラクタを使い込んでいくと、ショップに商品が追加されていく。

このため、相手とレベル差があると勝ち目のない戦いになるし、それに対する救済策は何一つ無い。
「ディシディア ファイナルファンタジー」でも、育成要素があり、レベル差による優劣は存在したが、やり方次第で勝てる可能性は用意されていた。

レベルアップしていくと、色々な特技を習得していき、それをセットする形になっているが、実際は一部の技が強力すぎるために、それ以外の存在意義が弱い。
もういっそのこと「スマッシュブラザーズ」のように、技の数を固定しても良かったように思う。育てていくと色々出来るようになるので、結局どのキャラも似たような性能になってしまう。
対戦ゲームというジャンルでくくっているのなら、キャラクタ同士の差別化は積極的に行うべきだ。

特殊ギミックやアイテムの存在で、実力勝負の差を埋めようとしているのだろうが、影響力が弱く、特にステージギミックに関してはうざったいだけのものになっている。
アイテムは、アイコンで表示されるが、シリーズの知識を持ったものでさえ、やりなれてこないと何を意味するアイテムかがわからない。
回復アイテムもあるのだが、あまりに優位過ぎて、納得いかない。回復アイテムだけならまだいい、回復魔法まであるのだから、もうめちゃくちゃだ。
これらのたぐいは、勝つための手段が相手のヒットポイントを0にするしか無い以上、戦闘のテンポを悪くするだけであり、面白味の無いものになっている。出現頻度も高すぎる。

こう見ると、スマブラのパーセント形式(ダメージ蓄積が%で表され、吹っ飛ばされる確率が上がっていくシステム)が、いかに良く出来たものか実感出来る。

結局、行き着く先は、ロールプレイングとしてのテイルズシリーズの戦闘と同様、相手を手数や威力のある技ではめ殺しにして、ごり押すゲームになってしまっている。
前線に出て剣や拳で戦う戦士タイプと、後ろで強力な術を詠唱して援護する後衛タイプがいるが、最終的にはスピード力のある前者が圧倒的に有利である。
ある程度使い込むと、はめられている間にガードボタンで周りの相手をはじき飛ばすアクションや、空中での操作が増えたりするアイテムが売り出される。
はっきりいって、こういうものは最初からある程度は入れておいた方がいい。特に、ガードボタンで相手をはじき返す操作は結構育てないと使えないので、それまでは一度攻撃を食らうとやられっぱなしになってしまう。

収録キャラクター数は35名。それぞれのシリーズから人気の高そうなキャラ(そうじゃないのもいるが…)を満遍なく出演させている点は良いと思う。
だが、ちょっと前に出した「テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー2」では、その人数を遙かに超える50人ものキャラ数が収録されていた。
対戦ゲームということで、1キャラの作り込みを考えると単純に比較出来ないが、やはりグレードダウンしていると言わざるを得ない。
一応、「テイルズオブウォールブレイカー」というミニゲームでフォローはしているが、残念な作りである。
余談だが、このミニゲームが意外と出来が良く、対戦ゲームとして見た場合、もっと作り込めばはっきりいってこっちの方が面白くなった気がする。

「ユグドラシルバトル」モードは、いわゆるストーリーモードだが、テイルズお得意のフェイスチャット形式でお話しを見ていくことになる。
このモード、かなりボリュームがあり、これを全て遊びきるだけでも30時間は超える長さである。
しかし、シナリオに関しては、おまけ(という分量では到底無いのだが)として考えた方が良いだろう。質的には決して良いとは言えず、人気キャラが出て来てただフルボイスで喋っているだけである。
はっきりいって、「テイルズのストーリーってこんなにつまらなかったっけ?」と思わせるほどの駄目さである。
そのうえ、ちんたら長いのだから救えたものではない。

また、隠しキャラクターを出し惜しみしすぎ。もっとすぐに使えるようにしても良い。
自分は、ユグドラシルバトルモードをクリアするだけで、力尽きてしまった。全キャラ出すまではやる気になれなかった。

不満点は非常に多く、戦闘のたびに毎回ショップで新商品が追加されてないかチェックしたり、溜まった経験値を振り分ける画面に一々移動させるのが面倒である。間違えてメニューを閉じてフィールド画面(前の画面)に戻ってしまうなど総じてインターフェイスが悪い。
画面の切り替わりや、バトル開始のディスクアクセスも長めである。メディアインストール機能を付けて欲しかった。
バトル画面の操作性も良く無く、なんというか、動かしていて気持ち良く無い。特に気になったのが、足場を降りる操作(方向キー下2回)がやりづらく、アクションの隙も大きい。

視点が非常に悪く、ターゲットした相手にあわせて視点がズーム&アウトするのだが、このおかげでバトルフィールドが見渡せず、アイテムが出現してもわからず、コンピュータ相手だと取られやすく、
相手がいない場合、自プレイヤーが大写しになるので、周りがまったく見えない状態になる。
ポリゴン処理能力のせいかとも思ったが、かなり離れてもカメラがズームアウトしてくれるので、見栄えが悪いとか、見づらいということから来る結果の仕様なのだろう。この辺の詰めの甘さが非常に目立つ。もうちょっと練り込むべきであった。
ステージギミックや造形も、あまり考えて作ったとはどうしても思えない適当さで、はっきりいってつまらない。

収録BGMは原曲が多いが、本当に原曲?と言う気がする。アレンジされた楽曲もいくつかあるが、数は少ないし、どれもこれもかなり地味である。

さっきも書いたが、あらゆる面で、いかに「大乱闘スマッシュブラザーズ」の完成度が高いかということを、思い知らされる作品だった。
キャラクターに成長要素を付けたり、コレクション要素など、意図的にやり込み要素を増量して、長く遊べるゲームを目指しているようだが、本編の出来が悪いのでやる気にならない。
まねをすることは悪いことではないが、上辺だけを見て本質を見抜かずに取り繕ってしまうと、このようなゲームになってしまう。
どちらかというと、「スマブラ」もそうだが、「ディシディア ファイナルファンタジー」など、最近はゲームのキャラクターも商売になる時代になったのだなあと言う、時代を感じさせるゲームでもあった。そこで結論。

上辺だけを見た浅はかな作りの駄作。





[2009/08/22]
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