ゼルダの伝説 ムジュラの仮面


対応機種ニンテンドウ64(メモリー拡張パック必須)
発売日2000/04/27
価格5800円
発売元任天堂

(c)2000 Nintendo
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前作「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のシステムエンジンを流用した外伝作品。
メモリー拡張(ハイレゾ)パックに対応し、微妙ながらも内容の幅が広がっている。

まず、些細な程度ではあるが、グラフィックの精度も上がりより綺麗になっている。
また、メニューへの切り替えなどの処理速度が向上、
その他、多彩に詰め込まれたギミック、戦闘と、
前作の時点でハードウェアの限界までやり尽くした感が漂う面での
さらに頭一つ抜け出た、意外にも新鮮さで溢れている。
特に画像処理関係では「N64でここまで出来たんだ」と思わせる節も度々見せられ、
ドンキーコング64と違い、パッと見、違いが分からない程度なのが苦しいが
遊んでみると、細かなところでのチューニングが光る内容になっている。

ゲームシステムは、基本的な部分は全て流用しているが、
新たな試みとして「3日間システム」を導入している。
本作では、3日後に崩壊してしまう世界が舞台。
時の歌で何度も時間を1日目に遡り、ゲームクリアの条件を満たしていく構成になっている。

1日目に戻った段階で、キーアイテムを除き、お金、所持品(取ったフラグは残る)全てが無くなってしまう。
その他、ダンジョンの仕掛けなど全てのフラグもリセットがかかる。
但し、イベントを完遂しきった際に入手出来るアイテムやオカリナメロディーが残るので
これを、繰り返して集めていき、クリア条件を整えていく。
問題点が全く無い訳ではないが、一つの事柄を乗り越えるために、ある程度の時間制限を設けることで
全体的にダラダラせず、いい緊張感を生み出していると思う。
ただやはり、面倒といえば面倒ではある。

前作では、シリーズ初の昼夜の概念が導入され、昼と夜で町の住民の台詞や発生イベントが変わるなどの影響があったが、
本作は、ただ昼と夜の違いだけではなく、1日目と3日目では状況が全く異なる意味合いまで持たせており、
これによって、よりリアリティのある世界を構築出来ている。
また、町の住民一人一人が設定されたタイムスケジュール通りに動くようになっていて、
序盤に手に入る「団員手帳」のイベント発生時間をヒントに、彼らに起こるイベントを
探して手助けしてやるという要素もかなりの比重を占めている。
とはいえ、これらの多くはゲームクリアに関係のないサブイベントであるため、
結構深く作り込まれているのではあるが、所詮は枝葉の要素であるし、
ただのサブイベントにしては出会うために意識的にやらねばならず、敷居が高いのも確か。

枝葉の部分の作り込みが分量的に増えた分、本筋のダンジョン攻略は8つから半分の4つに減っている。
となると、気持ちグレードダウンした印象を受けるかもしれないが、
その代わり、ダンジョン突入までにちょっとしたイベントが挿入されるようになったため
本筋を追うだけでも、さほどボリュームに違いは無い。
ただ、難易度としては「時のオカリナ経験者前提」の作りで、結構難しい。
今回も肝心なところでは丁寧なヒントが入るのではあるが、
前作に比べ、高いアクションスキルを要求される局面が増え、その面での苦労は必死。
「ムジュラの仮面」からゼルダを遊ぶのは無謀とも言えるだろう。

もうひとつの新要素として、仮面をかぶることで得られる特殊効果がある。
特に特定の仮面をかぶることで、他種族に変身出来る効果を持つ仮面は
ゲームクリアに必須の仮面であり、アクションの幅を広めている。

前作に登場した、デクナッツ、ゴロン、ゾーラに変身出来て、その種族特有の
操作形態が用意されているのだが、面白い反面、出来ることが多すぎて煩雑すぎる向きもある。
また、これらはアクション要素を高めている要因にもなっていて、
前作ではあまり要求されなかった反射神経やアクション操作のスキルを求められる傾向が強まっている。
別種族に変身している場合のレスポンスが今ひとつクセがあり、その面で難易度を高めているのも否定出来ない。
そもそもが、人間状態のみのシステム構築で作られていただけあって、無理矢理付け足したという印象がある。
とはいえ、ゲームに新しい風を吹き込んだのも事実である。

だが、装備アイテムが多くなりすぎて、Cボタン3つだけでは足りなくなってきているのは辛い。
まずたいていの場合、仮面が必要になる局面が頻繁に訪れるため、3つのうち一つがお面に取られてしまう。
装備切り替えでメニューの呼び出しも頻繁で、快適性が削がれてしまった。

世界観の雰囲気がかなり異質で、前作が王道ファンタジーの直球路線なのに対し、
今回は変化球路線で、他ではまず見られない独特の世界は必見である。
そして、どうも裏ゼルダの方向性の一つとして作られていたらしく、
登場人物はかなりかぶっているし、前作を連想させる地形やエリアも節々に見られる。
これらは開発の負担を軽減させる意図もあるだろうが、
かつてファミコン時代のカセット斜め差しなどによって見られた通常ではお目にかかれない
バグった世界を意識的に作り出している向きも感じられる。
狂気的な登場人物やテクスチャーの色遣いが生み出す破天荒な世界は
それだけで意外性も強く前作の王道路線に縛られないバリエーション豊富な
“ゲーム的”で良い意味ではっちゃけているのも面白い。

但し、飽くまで外伝作品という位置づけであるために、前作の厚味があり満腹感を得られるような
本編の壮大さは薄れ、個々のディテールやイベントの発見の連続に楽しさを見いだすような
小粒な作りなのは、やり終えた後やはり正直なところ物足りなさも残る。

前作でも、受動的なゲームが多かった中で、その能動的な作りが各メディアで高く評価された訳だが、
本作は、そこからさらに能動的なプレイを要求される作りであり、良くも悪くも人を選ぶ領域まで入り込んでしまった。
これは、ゲーム全体の構造として、横並び的な、枝葉の部分の作り込みが凄すぎた弊害であって、
自由度は高いのだが、高すぎてしまったがゆえに欠点になってしまったことが
このゲームの最大の落ち度かもしれない。

しかし、あれこれ欠点も多く書いてしまったが、困ったことにやっぱり面白い。
但し、続編でこれ以上アクション性を強めることでの難易度設定は辞めて欲しいとも思う。
やはりゼルダの神髄は頭脳プレイであって、アクションで遊ばせるのはマリオで十分だからだ。
そこら辺の棲み分けは同じ会社から出ている以上、しっかりすべきだ。

能動性が強く若干玄人向けではあるが、傑作の水準は保っている作品。





[2004/03/30-2005/03/19]
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