英雄伝説 零の軌跡


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/09/30
価格5800円(UMD)/5200円(PlayStation Store)
発売元日本ファルコム

(c)2010 Nihon Falcom
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商業的に大成功を収めた「英雄伝説 空の軌跡」シリーズの完全新作が遂に登場!
世界観はつながりを見せるものの、舞台は「リベール王国」から「クロスベル自治州」となり、主人公を始めメインキャラクターも一新して送る堂々の新シリーズ!
また、これまでWindowsをメインプラットフォームとして開発を行っていたファルコムだが、今作ではとうとうPSPに舞台を移しての発売となり、古参ユーザーを驚かせた。

大筋のゲームシステムは細かい部分で改善や変更が加えられているものの、大きな違いはなく、前作までのプレイヤーは安心してプレイできることだろう。
メインストーリーの進行に合わせて、サブクエストが発生する流れで、サブシステムとして料理システムや釣りのミニゲームも継承されている。
また、キャラクターカスタマイズのシステムも変わらず、オーブメントにクオーツをはめる動力器システムを採用している。
個人的にはこれらのシステムをそのまま継承するほどの、「完全無欠」の作りとは思えないものの、そこらへんは好き好きの問題もあるし、なにより好評だった前作までのシステムを無碍にすげ替える必要はない。
間違いのない選択だろう。

世界観は「空の軌跡」と同じではあるものの、舞台となる場所が異なるためか文明レベルが大きく発達しており、中世世界の空気が根強かった「リベール王国」(空の軌跡の舞台)とは異なり
導力ネット(インターネット)や携帯電話が普及していたり、文明レベル的には現代に近いものとなり、違和感をおぼえることはあるものの、上手に新規性を発掘できているものと思う。
また、ストーリーのジャンルと言うか雰囲気も、刑事ドラマに近いものとなり、主人公は刑事に相当する捜査官という立場で、同じ課に所属する3人のキャラクターと事件を捜査するという内容になっており、こちらもまた新鮮さがあり面白い。

前作の不満点として、ゲームの進行に応じて不自然なほど移動制限がかけられてしまい、後戻りできないことや、メインキャラのエステルとヨシュア以外に旅を通じて新たな人との出会いがテーマということもあって
シナリオの進行に応じてパーティメンバーが入れ替わることが、ゲーム的には不便で不満点となっていた。

今作では、最初から最後まで「クロスベル市」という巨大な町を中心にゲームが展開することになったことで不自然に移動規制を受けることがなくなった。
また、メインパーティのキャラクタが4人で、序盤から揃うし、それ以外のキャラクタも仲間になることはあるものの、基本的にはメインパーティ4人にフォーカスを当てたストーリーになっているので、
キャラクタの入れ替わりが基本的にないため、カスタマイズや育成のストレスが軽減された形となっている。
それでいて、ストーリーの完成度が高くしっかり面白いのだから感心しきりである。
ただ強いて言わせてもらえば、今回のストーリーは少々優等生さが先に立ち、そういった面で鼻につく点が無くはなかった。
しかし、基本的には良く出来ている。
シナリオのパターンは、多少ひねりは見られるものの、前作のパターンを踏襲していて、この辺意外性が欲しかったのは贅沢な注文か。
また、一作でストーリーが完結せず、続編に続く終わり方をするのも「そこまで真似するこたねえだろう!!」と思ったのも確か。
(さすがに「空の軌跡」ほど未完結な終わり方ではないが。あれは不評だったのだろう)

相変わらずクリアまでのボリュームも凄まじく、50時間もクリアまでかかってしまった。これでシナリオが続くという終わり方をするのだから、お腹いっぱいと言わざるを得ない。
あと、どうも周回プレイを楽しませる方向に舵を切っているらしく、最低2周はやらないと、アチーブメントなどコンプリートできない作りになっているのも気になった。
ジャンルは異なるがセガ「龍が如く」のクリア後に追加される「プレミアムアドベンチャー」みたいなフリーモードを搭載するのは、仕様的に難しいか。
2周プレイさせるより、1周でコンプリートできる仕組みのほうが個人的には負担も少なくて良いと思うのだが。

ビジュアルはPSPということもあり貧弱さが心配されるが、カメラが固定視点となったことで裏データをごまかせることにしたことや、PSPの円熟期の開発ということもあり、ハードの性能を引き出せるようになったのもあってか
グラフィックは決して貧弱さを感じさせないクオリティの高さで、よく出来ている。
熟れた作りでこの辺も安心できる。
また、前作は徒歩以外の移動手段がなく、移動が面倒くさかったが、一度歩いた街道はバスに乗ってワープ移動できるようになったり、少々広いクロスベルの町中でもワープ移動ができるため、快適になっている。

ゲームバランスは遊びやすく改良を加えられていて、割と適当にクオーツをセットしても、そこそこの魔法が唱えられるようになっていたり、必殺技が強化されて使いやすくなったりなど、バランス面も気を使っている。
難易度は低めになったので、サブクエストの手配魔獣や強制戦闘といった「やらなくても良い戦闘」には手強い戦闘が混じっていたりするが、本編はさほど苦労することはないだろうと思う。

前作の主人公であるエステルとヨシュア、その他にも前作のキャラクタが登場して、前作まで描かれたストーリーが若干絡んできて、シリーズファンを喜ばせる配慮が多く見られる。
しかしこのことが、今作が初めてという人をないがしろにしている面もあり、難しい。
また、「空の軌跡」とはキャラクターデザインが変わったため、別人になったかのような違和感も残す。この辺、保険をかけたかったのだろうが難しいところだ。

「空の軌跡」での不満点を、あざといぐらいに、しかもプレイヤーにそれと感じさせないように解消していて、なかなか頭の良い作りとなっているのが目立っていて良い。
しかし、保険としてかけたっぽい「空の軌跡」での伏線の回収やシナリオの絡みは、新規の客を置いてけぼりにしており、この辺、シリーズファンをつなぎとめるためのジレンマを強く感じた。
ゲームとしてはよく出来ていると思うが、少々テンポの悪さや冗長さを感じる作りが気にならなくもなかった。

「空の軌跡」の順当な続編として、無難に進化を遂げた作品。新規プレイヤーにはやや辛い点も目立つが、クオリティは高い。





[2020/12/07]
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