9th Existence


開発ツールRPGツクールVX
発売日2013/09/17
価格0円
発売元ローグ

戻る

クリアまでの想定プレイ時間が約40時間という特大ボリュームの超大作ロールプレイングゲーム。
ストーリー主導型のRPGではあるが、バトル周りも凝った作りで歯ごたえのあるバランスとなっており、膨大なサブイベントの作り込み等、全方位にわたって磨き上げられた隙のない作品だ。

全4章構成だが、4章に入るまでは怒涛の勢いでイベントが発生するため、自由度はほとんどない。
最もシナリオ重視のRPGは、本作にかぎらず、ゲーム展開が強制的であることが一般的だが、このゲームに関しては“遊ばされている”という印象が非常に強い。

おそらくフィールドに出る機会があまり無く、町にもそれほど立ち寄ることがなくて、ひたすらイベントとダンジョンの繰り返しだから窮屈な感触を持ってしまうのだと思う。
自由度を押し出すことと、ストーリーを押し出すことは表裏一体だから、難しい問題ではある。
イベントのバリエーションを変えたりして工夫は見られるものの、“やらされてる感”をもっと軽減できなかったものかと思う。

シナリオは、かなり出来が良い。
若干、テキストの読みにくさが目に付くが、内容そのものはしっかり面白いし、キャラクターも印象的で魅力に満ち溢れている。
それゆえに、テキストそのものの粗っぽさが余計目立って見えてしまうのが苦しい。もはや重箱の隅つつきでしかないのだが...。

いっぽうで、バトルシステムもしっかり作りこまれている。
戦闘は、セミリアルタイムのコマンドバトルで、画面上に一本のゲージが表示されていて、キャラクタのアイコンが左から右に流れていき、右に到達したキャラへ順番が回ってくる。
特技や魔法を使う場合、詠唱時間がそれぞれに設定されてることがあり、大技であればあるほど、この準備時間が長く設定される。
準備中のキャラに、行動キャンセルの効果を持った攻撃を当てると、詠唱を止めることが出来る。この辺り、ゲームアーツ「グランディア」で使っていたシステムだ。

バトル難易度は高めとのことだが、魔法と特技を駆使して戦う必要性をもたせたバトルは適度に緊張感があり、非常に面白い。
自分なりの戦術を編み出して、考えて戦えば決して難しい難易度ではない。むしろ、丁度良いといえる絶妙さだと個人的には感じた。

ただ、まだ不慣れな序盤からシステムを熟知したことを前提としたボスが出てくるのは、いかがなものか?
好きなタイミングでメニュー画面からバトル難易度を変更できるようになっているものの、少々解決方法が安直過ぎるような気がする。
初プレイでノーマルの難易度で遊ぶと、ちょっと頑張ると乗り越えられる非常にいい位置にバランスが置かれているので、簡単にイージーには下げさせないような配慮が(特に序盤に)欲しかった所だ。

特にわかりにくいと感じたのが、敵の弱点を突いた時の処理が、一応画面を揺らしたり違うSEを鳴らすことで教えているのだが、それが弱点攻撃を当てたという意味だということに気づきにくかった。
クリティカル時と同様に、weakのポップアップを出したり、ダメージの色を変えるなどするとわかりやすくなったのではないだろうか。

ゲームバランスはかなり良く、ゲームが進んでレベルアップとともに強い装備品が手に入るタイミングなど、キャラクターが自然となだらかに強くなっていく感じがしっかり表現されていて良い。
しかしウリとなっている、キャラクターカスタマイズのシステムに、面白みを感じることが出来なかった。

戦闘で使える術技は、覚えたものを全て使えるのではなく、CPの範囲内でセットすることで初めて使えるのだが、敵の弱点に合わせて属性を使い分ける必要のあるゲームで、このシステムは相性が悪い。
キャラのレベルアップでCPは増えていくので、徐々にセットできる術技の数に幅が出てくるが、終盤までCP不足に悩まされることになる。
はっきり言って同時にセットできる術技の数が厳しすぎる。場面場面に応じて付け替えて欲しい意図なのだろうが、正直言って面倒くさいし、一々セットし直すのもひたすら煩雑になっている。

もう一つ、レベルアップで手に入るRPというポイントを消費して、任意のステータスを上昇させる“ステータス振り分け”の要素もある。
勘違いされないように補足すると、レベルアップで各種ステータスが上昇するが、そこからさらに自由にステータス強化できるRPというボーナスポイントがもらえる。
レベルアップのパラメーターの伸びを全て自分で決めるというものではない。

この“ステータス振り分け”は、自分のプレイスタイルに合わせて、HPを上げたり攻撃力を上げたりということが出来る。
だが、これも思ったほど効果を実感できるものではなかった。

一応振り分けたポイントをやり直すこともできるが、特定の施設に行く必要があり、初回だけ無料だが2回目以降は莫大なお金を要求される。
なおかつ、ストーリーの都合上、移動が制限されてる場合、振り直しが出来ないという有様だ。

HP、攻撃力(魔法攻撃力)などに一点集中で振り分けるのが効果的で、回避率や狙われにくさ、素早さなんかは、ポイント消費の割にイマイチ使えなかったり、思ったほどカスタマイズの楽しさがない。

ただ、こういう要素を取り入れようという意欲はやはり評価したい。

強いて言えば、属性防御、状態異常防御が重要な割に装備品でしか対抗できなかったので、SCE「ワイルドアームズシリーズ」のパーソナルスキルのように、キャラごとの固有のスキル、
あるいは余りがちのお金を消費してスキルを購入させるなどして、状況に応じて好きなときにRPを振り分けるといったシステムに一本化したほうがカスタマイズの面白さが俄然広がったのではないだろうか。

CPのスキルセットのカスタマイズは、特技が変化するスキルを用意して、上位技に変化するといったふうにすることで、似たようなことがやれる。

装備品に属性耐性や状態異常防御の効果をつけているのに、スキルでも属性防御を強化できたらバランスが崩れるとの懸念もあるだろう。
しかし性能の良い装備品が手に入ったのに、状態異常対策のために、泣く泣くそれらの装備品を付けさせられるというのは、勿体無い。
装備品から属性/状態異常防御の効果を外して、そのぶんをスキルシステムのカスタマイズに持っていけば良いと思った。
こうすることで、装備品は純粋に数値の高い装備品を気兼ねなくつけることができるようになって、気持ち良く遊べるようにならないだろうか。

ゲーム終盤のボスは、強力な全体攻撃と状態異常をセットにした攻撃ばかりで、これがまた難しいというイメージに拍車をかけている。
状態異常の数もかなり多く、絶対防げないものや、行動不能にさせられるものが非常に多い。
特に4章に入ると、バランスが急勾配になるので、本筋のストーリーだけ進めようとしても、ボスが強くて進めなくなる。
結局、各地を巡ってサブイベントを消化したり、ダンジョン探索、ボス討伐などで強い装備品を集めなければならない作りになっている。

ただ、4章で飛空艇が手に入っていきなり自由度が跳ね上がるのは良いのだが、それまでがっちりストーリーで引っ張ってきたものが、いきなり放り出される。
おまけに、目に付いたところをちょっと入ってみても、ザコ敵からしてやたら強かったり、ボスにも勝てなかったりと、どこから手を付けたらいいかわからない。
かといって本編ストーリーをやろうとしても、レベル、装備不足でどん詰まりとなる。
ちょっとこの辺りの作りがとっちらかっていて、残念な印象がある。
4章はそれまでのシナリオ重視の作りから一転して、各地のボス討伐がメインになっていて、ただ強いボスがいるから倒して強い装備を手に入れるための素材を手に入れる、という淡白なものが多い。
ボスやダンジョンの数も多くて、それまでノンストップで展開してたストーリーがいきなり止められて、パーティ強化をやらされるのだが、この過程がとにかくくどい。
それぞれのボスは個性的で凝っていたりして感心させられるところではあるのだが、延々装備集めばかりを強いられるのは、これはこれで面白くはあるものの、なんか違和感も覚えた。

またダンジョンの出来にムラがあり、全部見て回ろうというマップと、やたらめったら広くて目印もなく迷いやすいうんざりするだけのダンジョンもあって単純にしんどかった。
全部ではないが、マップによって画面端の処理が荒いところがあり、行き止まりなのに、行き止まりの柵などが置かれて無くて、混乱するところが多数あった。
行き止まりなら行き止まりで、きちっと柵を置くなりして、その先は無いことを知らせて欲しい。
全般的にダンジョンの作り自体は、ギミックも構造も凝っていて面白いものが多いのだが、ただ無意味にだだっぴろく複雑なところもあって、その落差が激しい。
いっそのこと、ダンジョン内に、そのダンジョンの地図が宝箱に入っているなどしてくれるぐらいがちょうどよいぐらいだと思った。
ゲーム慣れした人ならこれぐらいのダンジョンでも丁度良いぐらいかもしれないが、全般的に広くて複雑で厳しいものを感じた。

なんだか厳しい物言いばかりになってしまった。
シナリオ、バトル、どちらも、かなり作りこまれていて、非常に完成度が高く出来上がっている作品なのは間違いない。
しかし、スキルセットやステータス振り分け、状態異常の多さと意地悪な箇所、ダンジョンマップの構造など、多岐にわたる不満点というのは、ちょっとプレイヤー視点に立ってみると、どれも直せるようなものばかりなのだ。
そういった部分の配慮がゲーマー向けで、実に惜しいと感じたからこそ、キツイ指摘ばかりになってしまったのだ。
その、今一歩の部分が改善されることで、かなりゲームとして引き締まったものになる可能性を秘めていただけに、実に勿体無いと感じたゲームであった。

それから最後に細かいことだが、冒険メモにゲームのあらすじやサブイベントの進行状況が記録されていくが、表示がログ形式で、記録された順にスクロールして参照していくようになっている。
これも、何とか頑張って、リスト式の表示に綺麗に整理してくれると非常に良かった(今のままでも十分快適っちゃ快適なのだが)。

長々と不満を垂れ流してきたが、なんにせよ、ゲームの腕に自信のある人にとっては、このゲームは中々に楽しめるシロモノとなっているのは紛れもない事実といえるだろう。そこで結論。

ストイックなゲーマーなら存分に楽しめる超大作RPG。





[2015/02/19]
戻る

inserted by FC2 system