タイムオブアソウル


開発ツールRPGツクールVX
発売日2014/08/01
価格0円
発売元りの

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王道路線のストーリー重視型ロールプレイングゲーム。
戦闘シーンはリアルタイム制で詳しくは後述するが連携システムなど独自性が強く、仲間とのスキットチャット及び好感度の要素(EDが分岐する)、LVアップの他にスキル習得システム等、見どころがてんこ盛りの作品だ。

商業ゲームとタメを張れるぐらい、すさまじい程の作り込みとクオリティの高さ、ボリューム、そして作者の計り知れない情熱を感じさせる力作である。

かなりのゲーム好きであることがうかがい知れる内容で、感銘を受けたRPGから貪欲にゲームシステムを引用してきて、しかもそれがただのコピーに終わらず、単体の作品として面白さが成立するようにうまく作り上げている。

ストーリーは、ゲームアーツ「グランディア」及び初期の「ルナシリーズ」を彷彿とさせる、パーティメンバーとの温かみのある会話と、世界を巡って旅をしている雰囲気がかなり似ている。
町ごとにBGMが違うなど、差別化を図ろうという努力も素晴らしいといえる。

シナリオ自体は、王道然とした勧善懲悪もので、伏線の出し方、物語の進み方に不自然さが殆ど無く、テキストも癖が無いため読みやすい。意外性をもたせた展開や、ツボを抑えた細かいところまで凝った演出など、総じてクオリティは高い。
台詞をしゃべっているキャラがバスト絵で表示され、細かく表情が変化する、主要キャラのキャラチップの種類が豊富でよく動く。エモーショナルバルーンの多用など。

全体的なメニューインターフェースと、魔法と特技を駆使して連携を狙って戦っていく戦闘は、リアルタイムのコマンドバトルではあるが「テイルズオブ」シリーズに近い感覚だ。
1ターン以内に手早く戦闘に勝利することで、経験値ボーナスが得られる仕組みも、ザコ戦を消化試合的にこなしていく作業にならないように、工夫をしている印象で好感触だ。

本筋だけでも膨大な作り込みだが、サブイベントも用意されていて、メニューの「冒険手帳」で、進行状況を確認できる。サブイベントの数はそれほど多くはないのだが、一個一個がしっかり凝っているため結果的にボリュームがあるといえるだろう。
せっかく「冒険手帳」という項目があるのだから、「テイルズオブ」シリーズのように、メインストーリーでもフォローが欲しかった。
次に何をすべきかはメニュー画面のトップに表示されるが、欲張りを言うなら、「あらすじ」機能を入れて欲しかったというのは贅沢な注文だろうか。

スキル習得システムは、面白くはあるのだが、全般的にやや煩雑さが気になった。特に装着しないと意味のないスキルセットが面倒なのと、カテゴリー分けが細かすぎて見づらい。
装備品の付け替えと違って、スキル装着画面でキャラ切り替えが直接できないのでいちいちメニューに戻らなければならないところが不満点として挙げられる。

スキルスロットと魔法書の2種類あり、覚えさせたいスキルが入っているものを装備させて戦闘をこなしてスキルポイントを溜めることでそのスキルを習得できる。

スキルスロットは「ファイター」「ウィッチ」等ジョブや職業をモチーフとしており、いわゆる戦士系、魔法系のスキルが覚えられる。
魔法書は魔法を覚えられる。このへんの仕組みは装備品からスキルを引き出すスクウェア「ファイナルファンタジー9」に近いといえるだろう。
魔法書は、キャラごとに覚えられる魔法が設定されており、全部の魔法を使うことはできないようになっている。
最終的に全キャラがすべての魔法を覚えてしまうと没個性的になってしまうためにこの作りはかなり上手いと感じた。

キャラの個性を引き立たせようという努力は他でも感じられていて、特にヒロインのレナが、魔法を一切使えない薬師という設定が良かった。
レナだけの特技として、薬草を消費してHPを回復させたり状態異常を直したりするようになっている。
RPGでは良くある、回復魔法を連打してHP回復させるありきたりなものになっていなくて好感が持てた。ちなみに薬草は宿屋や回復ポイントで回復させると最大値まで補充される。
こういった細かい配慮が積み重なって、魅力的なゲームになっている。

スキルや特技のバリエーションが、全体的に「ドラゴンクエスト10」に影響を受けている節が感じられる。
「属性魔法陣」とか「魔物呼び」「応援」、それからいわゆるパッシブスキル。覚えるだけで常に効果を発揮する「常時攻撃力+5」などのスキルも存在する。
「ドラクエ10」ではこのパッシブスキルを取っていることが前提のゲームバランスであったが、本作では、スキルを集めて自分なりのやり方でキャラクターを強くしていくという楽しさを表現できている。素晴らしい。

また、戦闘では「ドラクエ10」にもあった“怒り”の概念もあり、“怒り”状態になることで、敵の行動パターンが変化するようになっている。
「なだめる」スキルで、“怒り状態”を解除することが出来るが、これ自体はとても凝っていて面白いシステムだとは思うが、どの敵も“怒り”状態になりやすくて、うざったい気がした。

それ以外の細かい部分では、ハドソン「新桃太郎伝説」からキャラが一時的に強化される絶好調のシステム。
もう一つ、魔法を覚えるために必要な魔法書入手の手順は、「桃太郎伝説シリーズ」で桃太郎の術を覚えさせるために仙人の庵を探して課せられた修行をこなすイベントを彷彿とさせるものとなっている。

バトルまわりも、独自性が強く、戦略性が高くバランスもよくかなり面白い。
特に一番の特徴なのが、連携システムである。

どういう仕組みなのかというと、属性魔法を唱えた時や、特定の特技を使うと、攻撃した相手(もしくは味方)に炎、風といった属性が付与される。
この状態の時に、属性が付与されている相手に特技を使うと、条件が満たされていると、通常特技から強力な派生技に変化する。条件さえ満たしていれば、確実に発動する。
派生技の条件は初期状態では伏せられていて、自分で探し当てるようになっている。

敵にも属性耐性があり、弱点がそれぞれ違うため、決まった連携だけやっていればいいというわけではなく、その都度試行錯誤が求められる。
また、連携ばかり狙っているとTP(MP)がすぐになくなってしまうため、メンバーを入れ替えたり、TPが枯渇しないように工夫する必要もあり、中々面白いものとなっている。
ただ、メンバーチェンジは主人公(リーダー)しか出来ないし、非戦闘時でもメニューから入れ替える操作が面倒くさくて、個人的には全く使わなかった。

しかし、バトルシステムはかなり欲張りに色々詰め込んだためか、同時に惜しい点も多く見られた。

インターフェイスの出来がいまいち悪く、慣れるまでごちゃごちゃしてて見にくいし、慣れても正直結構キツイ。
ウェイトゲージ(ターンバー)の表示が小さくて、見づらいのが致命的。

画面下部にキャラのフェイスグラフィックとHP/TP等のステータス表示、画面上部に戦闘背景とモンスターが表示される対面式バトル。
マニアックなゲームで申し訳ないがPC-E/セガサターン「空想科学世界ガリバーボーイ」にかなり画面構成が似ているのだが、FFのATBに近いリアルタイム方式を採用しているせいもあって、ちょっとストレスの出る出来上がりである。

キャラの顔グラの上にオーバードライブゲージが目立つように表示されてるが、このゲージの溜まる条件が曖昧だし、滅多にたまらないので重要度としてはかなり低い。
顔グラの右下に小さくアイコン式に表示されてるウェイトゲージと、ぜひとも取替えるべきだと感じた。

「戦う」といったメインコマンドは左下に表示枠があり、リング状に表示される。
左右で選ぶのだが、コマンド表示がアイコンでわかりにくいし、思ったように操作しにくい。
また、ターンが回ってきても、一応SEは鳴るのだが、見逃してしまうことも多く、左下にリングコマンドが表示されるだけ。
ターゲット選択している時と、スキル/アイテム選択ウィンドウを開いている時以外は時間が流れているので、見逃さないようにもっと耳障りなSEを鳴らすか、顔グラのウィンドウの縁の色を変えたり、表情を変化させる等工夫が必要だと感じた。

スキル/アイテム選択ウィンドウを表示させると、画面上部がほぼ全部隠れてしまう。
モンスターが表示されている領域が見えなくなってしまう。ウィンドウが半透明なので、全く見えなくなるわけではないが、なんとかして欲しかった。
また、メニューのインターフェイスでも既に触れたが、スキルのカテゴリーが分かれすぎていて、煩雑で使いづらい。

特に素早い状況判断が求められるリアルタイム方式のバトルシーンで、この複雑さはマズイ。
カテゴリから選択するのではなく、今現在覚えていて使えるスキルを一括で表示したほうがはるかにスッキリしてていい。

FFシリーズのウェイト状態に準拠した時間の流れ方にしているが、FFシリーズでストレスにならなかったのはすっきりした操作形態だったからではないかと思う。

バトル処理は、かなり無茶やってるのか、コマンド選択中も良くカクついて重くなったり、キー操作を受け付けない時が頻繁にある。
メニューまわりの操作性の使いづらさ、見づらさだけでなく、こういった操作性の気持ちよくない挙動にも問題があるように思う。

まあそれでも、全画面表示、かつ、ゲームパッド操作なら、遊びづらさはかなり改善される感じ。というか、その環境でのゲームプレイをはなっから想定しているようにも思えた。

あとは、些細な事だが、レベルアップが鈍いため、キャラクターが中々強くなっていかない。
これは、ゲームバランスを破綻させないための措置とも言えるので、懸命な判断とも言える。
ただ、単純にプレイ時間の割に強くなっていかないので、もどかしさは感じられた。

それから、キャラクターデザインについて。
配色が原色系ばかりで、どこのコスプレ集団か、あるいは、戦隊ヒーローか!?とでも言いたくなるほど、色合いがカラフルすぎる。
実際プレイしてみると、これはこれで違和感もないし悪くないと思えるのだが、やはりもうちょっと色味を変えたほうがいいように感じた。

最後になるが、キャラごとに好感度の裏パラメータが入っている(クリア後のデータ引き継ぎで具体的数値を見れるようになる)。
これはエンディングの分岐に影響を及ぼす数値なのだが、好感度の一番高いキャラクタのエンディングしか見れない。
いくらなんでもこれはちょっと不便過ぎる。1人とはいわず、一定数値以上まで好感度を上げたキャラのエンディングを1度のクリアで複数見れるようにして欲しいように思った。
好感度自体も上がる条件が曖昧で、わかりにくいのもどうかと思う。

前衛的なバトルシステムを中心に、厳し目の指摘をたくさんしてしまったが、ゲーム自体の出来はかなりいい。市販ゲーム並みのクオリティの高さを見せつけているのは間違いない。そこで結論。

垢抜けない部分も多いが、なかなかの良作。ぜひ遊ぶべし。





[2014/08/23]
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